2015年12月22日火曜日

2015年:ピアノに関する本、今年のベスト10♪

"My Piano Life" の振り返り番外編その2である。今年はあまり本を読んでないと思っていたのだが、ブログを見返してみるとそれなりには読んでいた。自分自身の復習?も兼ねてベスト10を選んでみたい。




作曲家、ピアニスト(東京芸術大学教授)でもある野平一郎氏ならではのピアノ音楽論。ピアノ音楽に関する本は意外と少ない(と思う)。そんな中で、この本はとても充実した読み応えのある本になっている。

バッハ作品の考察から、作曲家が楽譜に残したアーティキュレーションの話から、現代ピアノ奏法まで、ピアノに関連する幅広いテーマについて(私の)知りたいと思うことが書いてある。

とくに、3世紀にわたるピアノの歴史を概観した後の次の言葉は、ちょっとしたカルチャーショックであった。ピアノ作品を作曲し演奏している野平氏の「ピアノに未来はあるか?」という問いかけは重い。

「21世紀になっても新たな若い演奏家は引きも切らずに現われ、…。しかし…、ここしばらくピアノのための重要な作品が生まれることが少なくなっているように思えることだ。少々行き詰まっているのかとさえ感じることがある。」








好きな作曲家の一人である吉松隆さんの自叙伝(半生記)である。自叙伝としても非常に面白いのだが、自身の作品が年代順に紹介されるとともに、それと並行して、各時代の音楽状況やそれに対する作曲家の考えなどが綴られていて、現代音楽史のミニ解説としても面白い。

その中で、「現代音楽」への違和感などから紆余曲折を経て、「現代音楽からの決別」が語られるのだが、これは私自身にとっても、「現代音楽」に対する考え方に一つの折り合い・区切りをつけるきっかけとなった。






この本は、ピアノの奏法・練習方法について、目からウロコの本であった。ピアノ奏法を5つの基本動作に分類して、ピアノの弾き方の基本的な考え方を体系的に述べてある。こういう本はあまりないように思う。

その中で私自身(の弾き方)について重要だと思ったのは、

・重さではなく、打鍵スピードをコントロール
・筋肉を鍛えるな、コーディネートせよ
・5つの基本動作を身につけ、レパートリーに適用

の3点であるが、細かい話は下記のブログ記事や【読書メモ】を参照されたい。



【読書メモ】















現役ピアニストの屈託のない?お話がつまっていて、とても面白く読めた。ピアニストの練習や演奏に関する、様々な話はなかなか役に立ちそうだ。私の好きな筋肉の使い方の話も、「小さな筋肉」とか「筋肉の精度」とか、プロならではの視点に感心しながら読んだ。

最近の若いピアニストに対する話の中で投げかけられた問い、「表現に値するほどの私はどこにいるの?」という言葉はまったく同感である。

それと、ブログ記事(↓)にも書いたが、ドビュッシーやシューマンの音楽に関する話は、その作品を弾いたり理解する上でとても参考になると思う。







ショパン、リストの時代から現代に至るまでの、そうそうたるピアニストたちの師弟関係をまとめた本である。なかなかの労作・大作で、歴代&世界のピアニストの師弟関係を、これほど体系的にまとめたものは他にないだろうと思う。著者は真嶋雄大さん。

今年、50人の海外ピアニストを一通り聴いてみるという大胆な計画をしたのは、実はこの本がきっかけだった。



本の内容はとても一言では説明できないので、【読書メモ】などを参照して戴きたい。


【読書メモ】












シューベルトのピアノ作品の良さを、少しだけ教えてくれた本である。

シューベルトの作品、とくにピアノソナタについては「繰り返しが多くて退屈」という印象しかなかった。がこの本を読んで、そして改めていくつかのソナタを聴いてみて、その良さが少し分かったかもしれないと思っている。

村上春樹さんは、

「(シューベルトのソナタには)そこにある世界の内側に向かって自然に、個人的に、足を踏み入れていくことができる。音を手ですくい上げて、そこから自分なりの音楽的情景を、気の向くままに描いていける。そのような、いわば融通無碍(ゆうずうむげ)な世界が、そこにはあるのだ。」

と言う。

まだ、そこまでの理解はたぶん出来ていないが、とりあえず自分でも2曲ほどシューベルトを(ソナタではないが…)弾いてみて、ちょっと好きになりかけているところである。






「音楽というのはどこまでデフォルメしたらその音楽に聞こえなくなるのか。ピアニストはどこまで楽譜から自由になれるのか。」といったテーマを、ピアニストの立場からとりあげた本。

ドビュッシーの音楽は、どこまで手を入れる(編曲する、補筆完成する)とドビュッシーではなくなるのか、演奏家はどこまで楽譜から離れることができるのか?

楽譜通りに弾くことが当たり前のように語られることが多いが、実は昔は演奏者に任されている部分も多かった。

例えば、バッハの演奏では、装飾音符は演奏者の腕の見せ所であったし、繰り返し部分は1回目と同じに弾いてはいけないという暗黙のルールもあったのだ。また、即興演奏は演奏家の重要な能力の一つでもあった。

個人的には、どのピアニストも「楽譜通り」の統一規格になってしまっては面白くない、と思っている。「自由な」「個性的な」ピアニストの方が好きだ。もちろん豊かな音楽性は必要だが…。






現代の日本人作曲家のことを知りたいと思って読んだ本である。

登場する作曲家は、池辺晋一郎、三輪眞弘、佐藤聰明、中川俊郎、近藤譲、三枝成章 、新実徳英、吉松隆、北爪道夫、川島素晴、野平一郎、細川俊夫の12人。それと、西村朗さんをいれると13人(音楽評論家の石田一志氏と西村朗さんの対談もある)。最後に、ピアニスト高橋アキさんとの対談も入っている。

なかなか読み応えがあって面白かった。ただ、内容が濃くて、読書メモや感想文はいまだに書けないでいる。浜松国際ピアノコンクールに作品を提供した三輪眞弘氏の話はちょうどいい時期に読めてラッキーだった。





今年正月に読んだ本である。吉田秀和さんの書いたものは昔読んだことがある。久しぶりに吉田秀和さん一流の切り口・語り口に接して、楽しく読めた。

クラシック音楽に対する深い造詣と経験、そしてとても豊かな感受性を感じた。軽妙な語り口と、ときに言いたいことをズバッと言う小気味よさは、読み物としても面白かった。


【読書メモ】









1971年から2007年までの、舘野泉さんの「レコードのライナーノート、演奏会のプログラム、楽譜の編集に寄せて書いたもの」がベースとなった本である。

北欧を中心とする作曲家・ピアノ曲のことが知りたくて読んだのだが、あまり知らなかった北欧の作曲家やピアノ曲のことを知ることができて、新しい展開へのきっかけになるかもしれないと思った。




今年は、この他に読んだピアノ/音楽関連の本は次の3冊しかない。つまり、13冊しか読んでない。ちょっと少ないかもしれないが、まぁそんなものかなという気もする。来年はもう少しだけ頑張ってみるか…。


*グレン・グールド 孤高のコンサート・ピアニスト



*音楽のために―ドビュッシー評論集





*作曲家別演奏法 シューベルト/メンデルスゾーン/シューマン/ショパン



※追記(2016.1.15)

ブログを読み返していたら、あと3冊読んでいたことを発見。追加しておく。それでも、年間16冊は少ないかな?


*西村朗と吉松隆の クラシック大作曲家診断




*光の雅歌―西村朗の音楽



*大人だってピアニストに!!






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