(ジョルジ・シャンドール 著、岡田 暁生 監訳、春秋社、2005/2/1)
だがシャンドールは、「指の筋肉」とやらを強くしようとして、ますます身体をこわばらせ、そしてますます音が鳴らなくなるという悪循環に対して、くどいくらいに警告を発する。(「訳者あとがき」から)
0. 本「シャンドール ピアノ教本」
1. トータルな音楽書
2. 筋肉を鍛えるな、コーディネートせよ
3. 基本動作①自由落下
4. 基本動作②五指運動と音階と分散和音
5. 基本動作③回転
6. 基本動作④スタッカート
7. 基本動作⑤突き+基本動作のまとめ
8. 基本動作の応用、指の独立、ペダル
9. 歌う音、練習、暗譜
10. 音楽の句読法
11. 記事リスト+訳者あとがき
訳者あとがき (補足)
※「訳者あとがき」の主要なメモは下記。本稿はその補足。
→《シャンドール ピアノ教本1:トータルな音楽書》
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小さい頃から「ピアノを弾くには苦しい練習に耐えて、指を強くしなくてはいけない」という強迫観念にかられながら日々楽器に向かってきた学習者は、ややもすると「ラクをする」ことに対して罪悪感を抱きがちである。
だがシャンドールは、「指の筋肉」とやらを強くしようとして、ますます身体をこわばらせ、そしてますます音が鳴らなくなるという悪循環に対して、くどいくらいに警告を発する。
「弱いところがあっても、それを強くしようとする必要はない、強い部位の助けを借りて、もっとラクに弾いて構わない」という彼の主張は、多くの「鍵盤の迷える子羊」にとって - 彼が誰にも文句を言わせない圧倒的な技術を持つヴィルトゥオーソ・ピアニストであればなおのこと - 自分を日々の辛苦から解放してくれる福音であると、ひとまずは言えるだろう。
だが…、本書は決して「ラクして出来るマニュアル本」などではない…。
全身の神経を張り詰め、絶えず極度の集中力をもって自分の音を聴き、本当にそれでよいかどうかを自分で吟味し、自分の体を自分で調整する - シャンドールが読者に要求しているのは、こうした果てしない試行錯誤の道のりであって、先生から「もっと指を強くして!」などと怒鳴られながら行う苦しい練習などよりも、実ははるかに厳しい自己鍛錬を求めているのだ。
【完】
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