『ピアニストの系譜』
(真嶋 雄大 著、音楽之友社 2011/10/5)
読書メモ7:その他ヨーロッパ
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イタリア
古くは、1752年生まれのムツィオ・クレメンティ、1866年生まれのフェルッチョ・ブゾーニがいるが、系譜といえるほどの流れは存在しない。
特筆すべきは、ブゾーニと日本音楽界の架け橋となったレオ・シロタ(1885-1965)であろう。1929年から約15年間日本において演奏・教育活動を行った。
その弟子には、永井進、豊増昇、藤田晴子、園田高弘など、日本のピアノ界の先達たちがいる。豊増昇は舘野泉を小学生の頃から指導した。
イタリアのピアニストで忘れてならないのは、アルトゥーロ・ベネディティ・ミケランジェリ(1920-95)、アルド・チッコリーニ(1925-)、マウリツィオ・ポリーニ(1942-)といった巨匠たちである。
若手の中で注目すべきピアニストとしては、ウンベルト・ミケーリ国際ピアノコンクールで優勝したジャンルカ・カシオーリ(1979-)がいる。
スペイン
古くは、作曲家として有名なイサーク・アルベニスやエンリケ・グラナドスがいたが、その後のピアニストで有名なのはアリシア・デ・ラローチャ(1923-2009)ぐらいであろうか。
ポルトガル
ポルトガルでは、マリア・ジョアン・ピリス(1944-)ただ一人が傑出している。
しかし、最近やっと次の有望株が現れた。アルトゥール・ピサロ(1968-)である。1990年のリーズ国際コンクールで優勝を飾った逸材だ。このときの入賞者は、2位にラルス・フォークト、3位にエリック・ル・サージュ、さらに決勝を辞退したピオトル・アンデルシェフスキといった豪華メンバーが並んでいる。
イギリス
イギリスのピアニストで忘れてならないのがマライア・ヘス(1890-1965)である。彼女は、バッハのコラールをピアノ独奏に編曲した《主よ、人の望みの喜びよ》の編曲者としても知られている。
ヘスのピアニズムは格調高く尊厳にあふれ、気品と華やかさを兼ね備えたものであった。その弟子にはスティーヴン・コヴァセヴィチ(1940-)などがいる。
北欧
北欧で忘れてならないのが、スウェーデンのペーテル・ヤブロンスキー(1971-)とノルウェーのレイフ・オヴェ・アンスネス(1970-)、フィンランドのオリ・ムストネン(1967-)であろう。
アンスネスは、レパートリーの一つになっているグリーグについてこう語っている。
「グリーグの音楽はノルウェーのシンボルのように認識されています。ノルウェーの自然を表現したというよりは、彼の音楽の中に海や風やフィヨルドなどの自然の持つ力を封じ込めたのです。」
「よく弾くのはピアノ協奏曲です。もう一つは66曲からなる抒情小曲集。さらにグリーグのメジャー作品としては、ピアノ・ソナタ、ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード、そして組曲《ホルベアの時代から》などをよく弾きます。」
北欧の若手で期待できるのは、フィンランドのアンティ・シーララ(1979-、ベートーヴェン国際コンクール、リーズ国際コンクール等で優勝)とヘンリ・シーグフリードソン(1974-)であろう。