2015年7月18日土曜日

大人のピアノ再考3:中高年のピアノの可能性 ♪

さて、『大人だってピアニストに!!』(藤田 誠治 著)を読んでの「大人のピアノ」についての徒然随想第3弾(最終回)である。



今日は、「大人のピアノ」(中高年のピアノ学習者)の可能性は、一般に考えられているよりずっと大きい!という話。




①大人になってからでもピアノは弾けるようになる

前回の「中高年の能力」の話から分かるように、身体や脳の働きで決定的な制約になるものはない。もちろん、若者よりは長い学習時間が必要なことは覚悟しておくべきだろうが…。

ピアノは大人になってからでは無理とか、ピアノの能力は生まれつきの才能によるといった「定説」の真偽はどうも定かではないようだ。

そもそも「発達」に関する研究は、ほとんどが幼児〜青年を対象としたものであり、中高年の「発達」や「成長」が研究の対象になったのはつい最近のことらしい。(要はよく分かってない、ということ)

「天才」とか「幼児教育」の話はウケがいいらしく、メディアにはよく登場する(私も嫌いではない…)が、中高年が頑張ってショパンのエチュードを弾いたという話はほとんど聞かない。

いずれにしても、本当のところはよく分かってない。とすれば、中高年がどんどん増えている今こそ、多くのチャレンジャーが出てきてもいいのではないかと思う。


②でも、ピアノの練習は大変

とはいえ、(年齢に関係なく)ピアノの演奏はそれ自体、習得するのは大変である。中高年は学習スピードが落ちるわけだから、さらに大変、というかより忍耐力が必要になると思われる。

しかし、必要以上に難しく大変にしている原因があるような気もする。ピアノ学習者側で言えば、「どうせ大したレベルには行けないし…」のような意識が、努力にブレーキをかけているのではないだろうか?


そして、それ以上に問題なのは、中高年の「ピアノ教授法(メトードのようなもの)」がないことのように思える。

そもそもピアノの先生というのは、小さい子供から音大生くらいを対象にした先生がほとんど。趣味の中高年は、もともと守備範囲外だ。そのため、教本もほとんどなく教授法も確立していない、ということなのだろう。(これからの市場規模で言えば小さくないと思うのだが…)

「大人のピアノ」をうたった教本のようなものもかなり出版されるようになり、「大人のピアノ入門」を掲げたピアノ教室も増えている。のだが、何となく「どうせ大したレベルには行けない」ことを前提としたものが多いような気がする。


③もっと上を目指そう

「ピアノ学習の目的」に登場した47歳女性の、「最終目的は『乙女の祈り』」という発言は理解できないではないが、もっと上を目指そうよ、と言いたくなる。

モーツァルトが好きなのなら、モーツァルトのやさしいソナタくらいには挑戦して欲しいと思うのだ。

ちなみに「乙女の祈り」は、この筆者の分類では「グレード4」で、そのグレードまでいけば、当時(1995〜1996年)手に入る楽譜(ポピュラーやジャズや連弾も含む)の81%が弾ける範囲のものだそうだ。→文末〔注〕参照

ピアノの楽しみ方にも「多様性」があっていいと思う。

バイエルを練習して「乙女の祈り」を弾けるようになって嬉しい、というのもあっていいのだが、それ以外の世界ももっとあるはずだ。クラシックだけでなく、現代音楽やジャズやポピュラー。ソロだけでなく、連弾や室内楽。等々。


この本(『大人だってピアニストに!!』)を読んだ感想。

何となく思ってたことを、データを示しながらはっきり言ってくれた、というのが最初の感想であった。中高年の可能性を信じて、この数年ピアノの練習をしてきた。楽しむことを第一義としながらも、上を目指したいという気持ちは今も変わらない。

ちょっと驚いたのは、ジョギングする老人の方が若者より「動作の反応スピード」が速いというデータ。今年の目標のひとつが「スピード(速い曲を弾く)」なので、ジョギングかそれに近いことを始めなくては、と思った次第である。


最後に、ピアノ学習に関して指導的な立場の方々と作曲家の方への期待を書いておく。

  1. 大人のピアノ上達の可能性とその限界を検証してほしい。
  2. 大人のピアノ学習者に対する教授方法を確立してほしい。(できれば効率的な独習の方法も)
  3. 大人が弾いて楽しめる現代ピアノ曲を作ってほしい。


〔注〕グレードと対応するピアノ楽譜(曲集)の数

(グレード)      :楽譜の冊数/累計冊数
1:バイエル前半    : 549冊/ 549冊
2:バイエル後半    : 571 /1120
3:ツェルニー100番 : 751 /1871
4:ツェルニー30番前半: 524 /2395
5:ツェルニー30番後半: 130 /2525
6:ツェルニー40番前半: 185 /2710
7:ツェルニー40番後半: 101 /2811
8:ツェルニー50番前半:  99 /2910
9:ツェルニー50番後半:  27 /2937
10:ショパンのエチュード:  30 /2967



【関連記事】

0 件のコメント: