舘野泉さんの『ピアニストの時間』という本を読んだ。
この本は、1971年から2007年までの、舘野泉さんの「レコードのライナーノート、演奏会のプログラム、楽譜の編集に寄せて書いたもの」がベースである。実際の曲を知り尽くしているピアニストによる、北欧を中心とする作曲家・ピアノ曲への入門書とも言えるかもしれない。
『ピアニストの時間』(みすず書房 2010/10/20)
※目次から
- シベリウスのピアノ小品集
- メラルティンの組曲「悲しみの園」
- グラナドスの「ゴイェスカス」について
- メリカントのピアノ・アルバム
- シューベルトの即興曲をめぐって
- パルムグレンに寄せて
- ひまわりの海――セヴラック
これまで、あまり知らなかった北欧の作曲家やピアノ曲のことを知ることができて、新しい展開へのきっかけになるかもしれないと思った。セヴラックに関する話も興味深い。
北欧の音楽家というと、私の知っているのは、シベリウス(フィンランド)とグリーグ(ノルウェー)ぐらいである。
ところが、この本の目次を見るだけでも、ノルドグレン、メラルティン、カスキ、ハイネカイネン、メリカント、パルムグレン、…と実にたくさんの名前が出てくる。かろうじて知っているのが、カスキとメリカントくらい。
調べてみると、ほとんどがフィンランドである。
それはさておき、とくに気になった作曲家を3人ご紹介する。
ノルドグレンの「耳なし芳一」
まずは、ノルドグレンという作曲家による「耳なし芳一」というピアノ作品があるということ。舘野さんが、親友であるノルドグレンに委嘱した曲(1972年)のようだ。他にも「怪談(Kwaidan)」にちなんだ曲がいくつかあるらしい。
フィンランドの作曲家と「怪談」という組み合わせの意外性に「?」と思いながら、YouTubeで探してみた。ピアノ・デュオに編曲したものが見つかった(↓)。
動画のヴィジュアルはちょっと好みではないが、曲としては面白い。
もう1曲、「雪女」という曲、こちらは舘野さんの演奏、があったので聴いてみた(↓)。
どちらかというと、こちらの曲の方が好みかもしれない。内部奏法なんかもあってちょっといい感じ。
北欧のショパン:パルムグレン
「北欧のショパン」と称されることもあるパルムグレン、初めて聞く名前であるが、YouTubeを見ているとけっこう(発表会などで)弾かれているようでもある。
下の「粉雪」と「星はきらめく」はきれいな曲だ。舘野さんの演奏。
♪ Selim Palmgren ~ The Stars Are Twinkling Op. 72/1
※追記@2023/01/25:この動画は再生できなくなっている。
ピアノ協奏曲も5曲作っていて、「なかでも第2番の『河(流れ)』はグリーグに次ぐ北欧ピアノ協奏曲の傑作である」らしい。一度じっくり聴いてみようと思っている(↓)。
北の吟遊詩人:マデトヤ
この作曲家が気になった理由は2つ。その一つは「カンテレを自分の楽器としたという点で、…音楽史上唯一の作曲家」と書いてあったこと。カンテレ?、初めて聞く名前(楽器)である。
Wikipedia(上記写真も)によると、「カンテレ (kantele) はフィンランドの民族楽器の一つで、ツィター属に属する撥弦楽器の一種である。フィンランドの国民的叙事詩であるカレワラの中で、老賢者ワイナミョイネンがカンテレを開発したことになっているため、フィンランドでは民族意識の象徴として扱われることも多い。」というもの。
もう一つは、「ポスト・シベリウスの最も重要な作曲家として、フィンランドでは多大な尊敬を払われている」という記述。
ピアノ曲は下記などを聴いてみたが、私の好みとは少しずれているかもしれない。もっと他の曲や管弦楽曲などを聴いてみないとなんとも言えないが…。
それにしても、知らない作曲家やピアノ曲の多いこと。上の3人以外の作曲家も含めて、少しずつ(気ままに)聴いてみようと思っている。
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