シューベルト
生粋のウィーンっ子であったシューベルトには、沢山の舞曲がある。技術的にもそれほど難しくないので、最初に弾く教材としてはちょうどいい、とある。が、その中から気に入った曲を探すのは大変そうだ。例としてあげられているのは、《ウィーンの淑女たちのレントラー》と「ワルツ 作品9」。
「ピアノ・ソナタ イ長調 作品120」では、「歌」を引き出すこと。そのために重要なのは左手の伴奏で、左手だけでも音楽が作れるように弾く練習が必要である。(伴奏によって「歌」が生きてくる)
歌曲の《美しい水車小屋の娘》から〈さすらい〉の伴奏についても解説がある。シューベルトの繰り返しの多さは、なかなか理解できないところがある。が、この話を読んで、少しは分かったような気もした。
つまり、歌曲なので同じ音型で5番まである。同じ出だしの部分でも、歌詞が"Wandern"(さすらい)、"Wasser"(水)、"Rädem"(水車)、"Steine"(石臼)とかわっていく。歌詞の言葉や内容によって、アーティキュレーションはとうぜん異なってくる。シューベルトはピアノ曲を書くときも、単なる繰り返しではなく、毎回違う情景を違う言葉でイメージしていたのかもしれない。
ちなみに、『伴奏の芸術―ドイツ・リートの魅力』という本(ムジカノーヴァ叢書)には、この伴奏を弾き分けるアーティキュレーションとデュナーミクが具体的に書かれているそうだ。
即興曲の解説は3曲(即興曲 変ト長調 作品90-3、変イ長調 作品90-4、変ロ長調 作品142-3)。ここでも、「この曲(作品90-4)ではテーマが何回も何回も繰り返されます。…絶対に同じに弾いてはならない!…なぜならこの曲の存在自体がファンタジーだから」と繰り返しのことが書いてある。
「楽興の時 ヘ短調 作品94-3」に関しては、前打音の重要さ。シューベルト特有の美しい前打音を軽やかに弾くためには、指を俊敏にはっきり上げることが重要、だそうだ。
メンデルスゾーン
無言歌3つがあげられている(作品19-4〈信頼〉、作品53-1〈岸辺にて〉、作品62-6〈春の歌〉)。
シューマン
シューマンの名作群は 1836〜39年の間に一気に書き上げられた。それが《幻想小曲集》《子供の情景》《クライスレリアーナ》《幻想曲》《アラベスク》《フモレスク》である。すべてがクララとの結婚前、というのが興味深い…。
しかし、シューマンの世界に近づくためには、いきなり結婚前の強烈な個性を放っている作品群から入るよりも、むしろ後期の、たとえば《子供のためのアルバム》《森の情景》などから近づいていくほうがよい、とある。
ショパン
ショパンについては、なぜか「ワルツ イ短調 作品34-2」が取り上げられている。個人的には好きな曲だが、そんなにメジャーとは思えない…。(でも難易度としてはいいかも知れない)
弾き方としては、楽譜に書いてあることをよく見ること、「頂点の音」まで動き・流れを緩めないこと。少し引用すると…。
「ショパンは、フレージングを細かく書き入れてくれています。…そして旋律の中での頂点に向かって、動きをゆるめず、頂点まではノンストップです。…ラフマニノフがショパンを弾いた録音が残っていますが、この『頂点の音』までゆるめないという弾き方が徹底しています。」
そのほかに《子犬のワルツ》、ノクターン、エチュード、「マズルカ 作品59」などが触れられている。
シューベルト、シューマンあたりは一度まともな曲に取り組んでみたいとは思っているのだが…。
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