練習の効果は、いかに意識して集中するかによって大きく変わる。繰り返す動作が常に同じであることが非常に重要である。ある技術パターンを身につけたなら、それを直ちに実際の作品の中で用いる方が生産的である。膨大な数の偉大なピアノ曲には、恐ろしく多くの学ぶべきことが含まれているのだから。
暗譜は、その曲が身についてから専念すること。
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『シャンドール ピアノ教本―身体・音・表現』 読書メモ
ジョルジ シャンドール 著、岡田 暁生 監訳(春秋社、2005/2/1)
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第3部 技術は音楽になる
※数字はページ番号、赤字は私のマーク
第13章 歌う音
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硬い響きは硬い身体(固定された関節)から、柔らかくて歌う響きは柔らかい体(弾力的な関節)から生まれる…。
243
歌う音の本質とはよく通る響きであって、これは柔らかな音でも大きな音でも同様である。…すべての関節(指の関節も含む)が弾力的であれば、歌う音が生まれるだろう。
243
硬くてこわばった関節には、一つだけ使い道がある。これはマルテラートないし「ハンマーのような」効果のためだけのものなのだ。(原則としては、すべての関節は弾力的であるべき)
246
ブライトハウプトの根本的な謝りの一つは、ピアノ技術における重量の役割を誤解し、強調しすぎた点にある。…二つ異議…。第一に、前腕にある指の筋肉は、過剰な重みを支えるためのものではなく、エネルギーを即座に指とハンマーへ伝えるためのものだということ。第二に、腕全体の重量の大半を支えるのは、常に肩の筋肉であるという点である。
第14章 練習について
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機械的なアプローチと意識的なそれの違いは非常に大きい。習慣を身につけるために必要な繰り返しの数は、集中すればいくらでも減らすことができる。…ある動作を身につける速度は、繰り返される動作が常に同じであること、身につける速さ、その集中力にかかっているのだ。
251
「自分の欲する動作を完全にコントロールできる限りにおいて」最も速いテンポで練習せよ…。我々の目的は自覚とコントロールを獲得することなのだから…。…大事なのは、自分がコントロールできる以上のテンポで弾かないことである。
256
「練習曲」をする必要なし、基本練習だけで十分。
音楽ではなく技術を中心に据えた勉強(※=機械的な練習)はできるだけ省いたほうがいい(ハノン、ピシュナ、ツェルニーなど)。…そんなことをするよりも、ある技術パターンをその最も純粋な形で身につけ、それが正しくできたら、それを直ちに実際の作品の中で用いる方が、はるかに生産的である。
ピアノのレパートリーは恐ろしく膨大であり、恐ろしく多くの学ぶべきものがあるのであって、偉大な音楽を材料にして同じ技術上の進歩が達成できるのであれば、質の悪い音楽で時間を浪費するのはまったく馬鹿げていよう。
257
(5つの基本動作については)同時にではなくて、一つ一つ身につけていくことを奨めたい。まずは自由落下の動作だけを学び、それが応用できそうなレパートリーを探すという具合にする方がよかろう。…次に 五指練習、音階、分散和音の動作でも…。(それぞれに数ヶ月はかかるだろう)
第15章 暗譜
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曲が身についてから-つまり技術および音楽上の問題のほとんどが解決されてから-暗譜に専念するのが望ましい。
曲が身についてから-つまり技術および音楽上の問題のほとんどが解決されてから-暗譜に専念するのが望ましい。