基本動作においては、コーディネートやシンクロナイズなど「相互作用」を重視してきた。が、指の独立は非常に重要なものである。問題はそれをどうやって達成するかである。指の独立・強化のための練習の中には、有害なものもあるので注意が必要である。
ペダルは響きが悪くない時には常に使ってよい。
--------------------------------------------------
『シャンドール ピアノ教本―身体・音・表現』 読書メモ
ジョルジ シャンドール 著、岡田 暁生 監訳(春秋社、2005/2/1)
--------------------------------------------------
第3部 技術は音楽になる
※数字はページ番号、赤字は私のマーク
第10章 五つの基本動作の確認と応用
196
いったん技術を確立して習得してしまえば、もう練習する必要はない! …これはアルファベットの習得に似ている。
204
楽譜の視覚上のパターンを動作のそれへ「翻訳」しただけ…の(演奏の)最初の段階においてすら、自分自身の解釈と個性ははっきりと現れてくる。なぜならデュナーミクやテンポ変化やアクセントやフレージングやタッチの質(これらはほんの数例にすぎない)は、否応なくその人の個性を反映するからである。
第11章 独立と相互作用
209
ピアノの技術を論ずるに当たって私は、筋力の増強や個々の部位の独立ではなく、コーディネートやシンクロナイズや相互作用を優先してきた。…もちろん指の独立は非常に重要である。だが問題は、それをいかにして達成するかなのだ。
210
主要な調整の動作としては、(1)前腕の伸筋および屈筋に対して指がその都度まっすぐな位置に来るようにするための水平の調整動作、(2)最も低い親指ポジションから最も高い小指ポジションに向けて手首を持ち上げる垂直動作、(3)上腕の助けによって指を白鍵および黒鍵に適合させる奥行き動作、がある。
214
「筋肉を鍛える」ための指練習(の弊害)。譜例は、相互作用を犠牲にして独立性を発達させようとする、典型的な練習方法だ。
五指運動の練習(固定したポジションで行うと有害) |
217
ピアノ演奏が無理のないものであれば、ウォーミングアップの必要はないのだ。動きが悪いように感じた時にはいつでも、指を互いにこすり合わせたり、腕をストレッチすればよい。
第12章 ペダル
230
ある優秀なピアニストは、いつ右のペダルを使うか尋ねられて、「響きが悪くない時はいつでも」と答えていたが、私はこの意見に完全に同意する。実際、すべてのフレーズの終わりの音で軽くペダルを用いるのは、とてもよいことなのだ。
233
中央ペダルは…すべての弦を共鳴させることなく、浮き彫りにしたい任意の音だけを引き延ばすことができるのである。その役割は非常に重要である。…私自身はほとんど右ペダルと同じくらい頻繁に中央のペダルを使っている。