2014年3月7日金曜日

「芸術を創る脳」:Ⅰ.なぜ音楽は楽しいのか

読書メモ 「芸術を創る脳」 美・言語・人間性をめぐる対話

Ⅰ.なぜ音楽は楽しいのか(曽我大介)

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※作曲家・指揮者の曽我大介氏との対談。対談者プロフィールは下記参照。
 →お薦めの本「芸術を創る脳」:音楽・将棋・マジック・絵画

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●抜き書き(番号はページ)

10
曽我:アイルトン・セナ(F1レーサー)の言葉:「まず、最初は頭の中で、各コーナーで車がどんな反応をしたのか、どこでよかったか、よくなかったか、技術的なことだけをイメージする。しかし実際に車に乗り込むと、イメージしたことを可能にするにはさらに心理的な強さが必要となる。すべて精神的なことなので、まず第一にできると信じることだ。そして、それをしたいという強い願望を持つことである。…説明できないほどの速さで何十億ものことが頭と体の中を駆けめぐる。…」

→音楽も同様: 各小節で楽器がどんな反応をしたのか…

12
酒井:最初は大脳を使って、フォームを目で見て確かめたりしながら、ゆっくりと意識的に反復練習をする。そうすると、大脳のシミュレーション・モデルが小脳に作られ、今度は意識せずに小脳だけを使って運動ができる

24
曽我:私の座右の銘は、「締め切りが芸術を創る」です(笑)。
酒井:…様々な制約が芸術を創るということはあるでしょうね。…その枠の中で最大限どこまでやれるか、というチャレンジ精神が創作力を引き出すのかもしれません。

32(指揮者チェリビダッケのリハーサルについて)
曽我:スコアの構造を理解して、精緻なところまで徹底的にバランスを取ったことで、彼らが理想としていた音が出ていたのです。例えば、(f のところでもパート・楽器によって強弱をつけたり、ある楽器の1つの音を強調したり、)…小節ごとに調整する、その結果をオーケストラ全員が「体験」する、感覚として理解する…。
酒井:楽器のパートや奏者ごとに音量と音質を微妙に変えていき、それらを追い込んだときに初めて出るような、「アンサンブル(合奏)の音」というものがあるのですね。

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●感想など

F1レーサーと「小脳だけで運動(演奏)」ができるという話は、下記ブログにも書いたが、ピアノの演奏にも通じるところがあると思った。
→ ピアノ演奏とF1レースの共通点?

小脳の話は演奏の「自動化」の話だと思われる。暗譜しても自動化ができてないと、よどみない演奏はなかなかできない。ということを日ごろ実感している。(要は練習不足…)

チェリビダッケのリハーサルに関する話は、とても興味深く、共感するところである。一流ピアニストになると、一つの和音の中の一つ一つの音に対する強さやタッチを変えることで、いろんな音色や響きを出している、という話を聞いたことがある。それが「いい演奏」の秘密の一つだと思っている。

ましてや、もともと音色の異なる複数の楽器が奏でる「アンサンブル」は、その精密なチューニングによって、本当に多彩な響きを出すのだろう。芸術は実に奥が深い、と改めて感じた。


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