まだ読み始めたばかりなのだが、いきなり興味深い話があったので、少しそれについて書いてみる。ピアノ演奏の自動化とか暗譜に関する話である。
対談者は、酒井邦嘉氏(言語脳科学者)と曽我大介氏(指揮者・作曲家)。曽我氏が「指揮者はF1レーサーと似たところがある」という話を切り出す。
アイルトン・セナ(F1レーサー)の言葉:「まず、最初は頭の中で、各コーナーで車がどんな反応をしたのか、どこでよかったか、よくなかったか、技術的なことだけをイメージする。
しかし実際に車に乗り込むと、イメージしたことを可能にするにはさらに心理的な強さが必要となる。すべて精神的なことなので、まず第一にできると信じることだ。そして、それをしたいという強い願望を持つことである。…説明できないほどの速さで何十億ものことが頭と体の中を駆けめぐる。…」
曽我氏は、これがそっくりそのまま指揮に当てはまると言うのだ。
なるほど、と思う。と同時に、これはピアノ演奏についてもまったく同じことが言えるような気がする。まず「頭で技術的なこと」を考え、実際の演奏では、イメージを可能にするための「心理的な強さ」が必要となる。
そして、その少しあとに「大脳と小脳による演奏」という話が続く。
酒井氏:「最初は大脳を使って、フォームを目で見て確かめたりしながら、ゆっくりと意識的に反復練習をする。そうすると、大脳のシミュレーション・モデルが小脳に作られ、今度は意識せずに小脳だけを使って運動ができる。」
これを読んでとても納得したことがある。
自分自身の暗譜のレベルのことだ。いちおう暗譜はしたつもりで、楽譜なしで弾けるのだが、どうも大脳を使って「考えながら・思い出しながら」弾いているのだ。簡単に言うと「自動化」のレベル(上の話では小脳だけ使うレベル)に到っていないのである。
「シミュレーション・モデルが小脳に作られ」るまで、練習を繰り返すしかないってことか…。
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