●出典:『ショパンのピアニスム―その演奏美学をさぐる』
第1章 ピアノ技法の原理
●概要&感想 (つづき)
(8) 装飾法
装飾の少ない簡素なカンタービレ(カンティレーナ)から、
ベル・カントを模した装飾音から、
ショパン独特のピアノらしいパッセージ・ワークへ
音を分割することによって装飾的な変奏を行う
「ディヴィジョン」の技法をさまざまに使っている
(9) 鍵盤からのインスピレーション、パッセージ・ワーク、音の舞
ショパンのパッセージ・ワークの多くはうねうねとした入り組んだ
形を持ち、空気中に音を飛散させながら自由に駆け回って、
さながら彼のインスピレーションの発露を示すようである。
非和声音の働きが音楽に流動感と色彩を生み出している
(10) テンポ・ルバート
3種類のテンポ・ルバートがある
①伴奏のテンポを一定に保ったまま、旋律を自由なテンポで弾く
(ベル・カント唱法)
②全体の演奏時間を一定に保ちながら、その中で均衡をもって
テンポを変える
(19世紀初頭の器楽の新しい演奏習慣)
③マズルカの持つ民族的なテンポ・ルバート
(強拍の移動など独特な3拍子)
(11) フレージング
基本は朗読のように?
ショパンのフレージングの特徴
・構造的な境界でも呼吸を切らず、
それを長く引き伸ばしてどこまでもつなげていく
・スラーによる不規則な区分:長短さまざまなスラーが
フレーズの長さとは一致しない方法で用いられる
音楽の継続性、単調になることを避け盛り上がりを効果的に表現
(12) ショパンと楽器
ピアノをオーケストラのように用いることはせず、
あくまでもピアノの純粋な響きを大切にしていた
気分のすぐれないときは、エラールのピアノを弾きます。
これだとすぐに完成した音がでますからね。
でも元気がよくて、自分だけの音を出してみたいなと思うときは、
プレイエルが必要なのです。(プレイエルを一番好んでいた)
プレイエルは、透明感のある柔らかい音と軽いタッチをもち、
繊細なニュアンスを表現することに適した楽器であった。
(13) ペダリング
基本:低音部の和声を十分保持した上で高音部に
非和声音を含めるもの(豊かに響かせるため)
しかし、多くの非和声音を意図的に混合させた激しい表現や
最新の注意を払って非和声音を避けるペダリングもある
自筆譜にはその推敲のあとがみられる
(14) デュナミークと表現様式
ショパン自身の演奏はしばしば「音が弱い」と非難されたが、
彼自身は「強く弾きすぎるといわれるよりはまし」と言っている
ショパンはピアノを叩くような弾き方が大嫌いだった。
彼のフォルテはあくまでも相対的なもので、いつも同じ強さとは
限らない。つねにクレッシェンドとディミヌエンドの線上を揺れ動く、
あの微妙なピアノやピアニッシモとの兼ね合いがあるからです。
(ヒプキンス)
演奏するときは十分に音を鳴らし、豊かで丸みのある音を
繰り広げていかねばなりません。ピアニッシモからフォルティッシモまで、
限りなく微妙なニュアンスを追い求め、ピアニッシモのときは
模糊たるつぶやきにならぬよう、フォルティッシモは叩きつけるような
弾き方で敏感な耳を傷つけたりしないよう、気をつけなくてはなりません。
(ミクリ)
以上
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