元になった記事は、英国の "the Observer" 紙に、リーズのトップである Fiona Sinclair 氏が語った内容。ピアノ(プロのピアニスト)界の男女格差に一石を投じる内容…。
"the Observer" 紙の記事は下記。
英文記事なので、私の理解したところだけを簡単に書いてみると…。
まず、音楽院で学んでいるピアニストの男女比はほぼ 50:50 なのに、プロのピアニストのうち女性は 23%以下である…というところから始まって、統計的な数字が挙げられている。
最近の主な国際ピアノコンクール 40 のうち女性が優勝したのは 18%。英国のリサイタルやコンサートでの女性ピアニスト率は 20%。ソロやコンチェルトの録音では 19%。昨年の BBC Proms での 20人のソリスト中女性ピアニストは 2人(Isata Kanneh-Mason, Yuja Wang)だけ。
そして、リーズは 1963年以来 Radu Lupu や Murray Perahia などのピアニストを輩出してきたが、優勝した女性ピアニストはこれまでに 2人だけ(Sofya Gulyak, Anna Tsybuleva)。
このコンクールを創設したのは 3人の女性ピアニスト(Fanny Waterman, Rosalyn Lyons, Marion Thorpe)だったのに…。
…といったことを踏まえて、今回 2024年のリーズ国際ピアノコンクールではいくつかの取り組み(変革)を行うことになっている。
まず、pre-selection ラウンドではコンテスタントの性別等が分からないようにする "blind" 方式が採用された。
結果は 366人の応募者から 65人のコンテスタントが選ばれ、うち 20人が女性だった。応募者の男女比が分からないので、"blind" 方式の効果のほどは不明。
そして、全審査員に対して "Anti Bias Training" というのを受けることが義務付けられる。内容はよく分からないが、"name, nationality, age or conservatoire" などの「演奏そのもの」以外の要素による "bias" を減らすための訓練…なのだろう。
それから、女性作曲家による作品の優秀な演奏に与えられる賞(Alexandra Dariescu Award)も新設される。
ちなみに「一石を投じる」というのは「波紋(反響)を呼ぶような問題提起をする」という意味らしいのだが、このリーズの「変革」に今後どれだけの反響があるのか?…ちょっと興味のあるところだ。
ついでに pre-selection ラウンドで選ばれた 65名の写真と名前をざっと見てみた。
日本人らしいのは下記の 5名。牛田智大くんの名前がある ♪ 他にも Vitaly Starikov とか Philipp Lynov とか知っている名前と、見覚えのある顔が数人いる。
Kazusa Sagawa
Risa Ando
Nagino Maruyama
Arisa Onoda
Tomoharu Ushida
世界各地の 6カ所で 4月に行われる 1st ラウンドで、9月の本選に臨む 24名が決まる。
追記@2024/09/06(↓)
おまけ。最初にご紹介した Slipped Disc の記事には、最後にこんなコメント(↓)があり、そのあとに、ユジャ・ワンとかアルゲリッチとか内田光子さんなど 10人の女性ピアニストの名前を挙げてある。
"Odd – is it not? – that the world’s most sought-after classical pianists appear to be: "
確かに、最も人気のあるピアニストの中に女性もいるのはその通りだが、元の記事が問題にしているのは「機会均等」とか「業界体質」とかじゃないのかなぁ…(^^;)?
全体の割合で見ると女性ピアニストの活躍の場は少ないというのは否定できない…と思う。実際、2023年に「最も公演回数が多かったピアニスト」のトップ 10 に入っている女性ピアニストはユジャ・ワンただ一人…というデータもある(↓)。
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