この作品では転回対位法が学究的と言えるほど堅固に使われている。
「2つの主題」となっているが明確ではない。2つ目は「対位主題」かもしれない。冒頭と終わりの短い装飾楽句によって、小曲ながらトッカータや古い前奏曲の体裁をなしている。
曲の短さやラテン語のタイトルからして、対位法の習作あるいは教程とみなされていたようだが、選び抜かれ、極限まで削ぎ落とされた音だけを用いた佳作である。
グールドがいい感じの演奏を残している ♪
バッハの大家、ロザリン・テューレック(Rosalyn Tureck、米、1914 - 2003)もいい。
チェンバロでは、オランダ・バッハ協会の音源がある。Bertrand Cuiller という人の演奏で、使用楽器は "Bruce Kennedy, 1989 after Michael Mietke"。
この曲はオルガンでの演奏の方が聴き応えがあるかも。マリー=クレール・アラン(Marie-Claire Alain、仏、1926 - 2013)の演奏。
なお、『バッハの鍵盤音楽』の第6章「種々の初期作品」に含まれる作品は下記。
- BWV921 前奏曲 ハ短調
- BWV922 幻想曲 [前奏曲] イ短調
- BWV917 2つの主題による幻想曲 ト短調
- BWV963 ソナタ ニ長調
- BWV967 ソナタ イ短調
- BWV992 カプリッチョ《最愛の兄の旅立ちに寄せて》
- BWV965 ラインケンによるソナタ イ短調
- BWV966 ソナタ ハ長調
- BWV989 アリアと変奏 イ短調
📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)
✏️バッハ :2つの主題による幻想曲 ト短調 BWV 917(PTNAピアノ曲事典)
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