✏️確実な変化:Bachtrackによる2023年のクラシック音楽の統計
忙しかった(最も公演回数が多かった)ピアニストのトップ 10 は最近こんな感じ(↓)。キリル・ゲルシュタインが 1位になったのは初めてかも知れない。アレクサンドル・カントロフももしかすると初登場?
ユジャ・ワン、トリフォノフ、オラフソンあたりはいつも上位にいるが、そこに、チョ・ソンジンが食い込んできた感じかな? 今年どうなるかは分からないが…。
アンドラーシュ・シフとイゴール・レヴィットは割と安定?している。ピエール=ロラン・エマールさんがトップ10に入って来たのは嬉しい ♪
ここに藤田真央くんとか日本人の名前が登場するのはまだかな?
元になったデータは 31,309 の公演情報(コンサート 16,336、オペラ 9,271、ダンス 5,702)。2022年は 27,124 公演だったので、4,000公演ほど増えている。
このデータは欧米を中心とした大きめのコンサート(有名オーケストラや主要ホール)が多いようなので、少し偏りはあると思われる。
オーケストラや管弦楽曲のデータが多いことからも、ピアノリサイタルなどはあまり含まれていない可能性もある。
演奏回数の多かったピアノ協奏曲トップ10は下記。カッコ内は昨年の順位。
- Rachmaninov, no. 3 in Dm (8)
- Rachmaninov, no. 2 in Cm (2)
- Schumann, in Am (3)
- Beethoven, no. 4 in G (4)
- Ravel, in G (1)
- Grieg, in Am (-)
- Beethoven, no. 5 in E♭ (5)
- Beethoven, no. 3 in Cm (6)
- Tchaikovsky, no. 1 in B♭m (9)
- Chopin, no. 2 (-)
今回の "annual survey" の特徴は 10年間の傾向・比較を行っていること。いくつかトピックスを拾ってみる。
一つは「現代音楽」(存命の作曲家の音楽)がプログラムに載ることが確実に増えていること。その割合は、2013年と比較すると 6%から 14%に増えた。顕著なのは米国で 7.5%から 20%に上昇している。日本は残念ながら 5%強(それでも増えてはいる)。
日本は、古楽・バロックや古典派の楽曲の演奏機会も少ない(↓)。
そして、演奏機会の多い "contemporary composer"(存命中の作曲家)トップ10 は下記のようになっている。比較のために 2022年も併記した。
「👩🦰」マークを付けたのが女性作曲家なのだが、明らかに増えている。
この女性作曲家の活躍が二つ目のトピック。
最も演奏された作曲家の上位 200人のうち、女性は 2013年は 2人だけだったが、2023年には 22人に増えている。
トップ10 にも上の図にあるように、ソフィア・グバイドゥリーナ、キャロライン・ショウ、ウンスク・チン、アンナ・クラインが名を連ねている。
上位 100人にはクララ・シューマン、ファニー・メンデルスゾーン、リリー・ブーランジェも含まれている。
なお、女性指揮者も最近は多くなってきたような気がしていたのだが、統計的にはそうでもないようだ。
最も忙しい指揮者上位100人のうち女性は 14人だけだったそうだ。それでも、2013年の 4人からは増えているが…。
"Bachtrack" がシーズン・リスティングを行なっている世界 102のオーケストラの首席指揮者 95人のうち女性は 7人だけ。2021年にナタリー・クラフトが「ラ・マエストラ」コンクールとアカデミーのために行った大規模な調査でも、778のオーケストラのうち女性が首席指揮者を務めるのは 7.9%だったそうだ。
女性比率が低すぎると悪評の高い「日本の国会議員(衆議院議員)に占める女性の割合」でさえ 9.7%(2022年)ということを考えると、クラシック音楽(オーケストラ?)業界というのはまだまだ男性社会なのだなぁ…と、最後は妙なところで感心してしまった…(^^;)。
なお、他の情報に興味のある方は冒頭にご紹介した記事と次のインフォグラフィックの PDF を参照されたい。
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