なぜかこの作品は聴き覚えがあり、かつ好みの曲調だ ♪
この作品に関しては、誰の手によるものか分からない筆写譜(作曲家名なし)一つしか残っていない。なので裏付けはないが、状況証拠(↓)および曲の様式から考えてバッハの作品と考えるのは妥当とされている。
バッハはラインケンの器楽合奏曲集『音楽の園 Hortus musicus』(1687)を入手し研究していた。BWV954 以外にもこの曲集に基づく作品が二つある(BWV965、BWV966)。
またバッハは1720年(35歳)にハンブルクを訪問した際、「バビロンの流れのほとりで」に基づくコラール幻想曲をオルガンの大家ラインケンの前で即興演奏し絶賛されている。
「バビロンの流れのほとりで」はラインケンによるコラールで、そのオルガン文字譜をバッハ 15歳のときに筆写したものが 2006年ヴァイマールで発見されている。「1700年リューネブルクのゲオルク・ベームのもとにて筆写(â Dom. Georg: Böhme descriptum ao. 1700 Lunaburgi:)」と末尾に記されている。
『音楽の園』(ホルトゥス・ムジクス)には 6つのパルティータ(ソナタ)が含まれており、BWV954 の主題は第2番の Allegro 楽章(↓)から取られている。
♪ Johann Adam Reincken – Hortus Musicus(タイムスタンプ 13:16〜)
ピアノ演奏は、YouTube では二つ見つかった。
イーヴォ・ヤンセン(Ivo Janssen、オランダ、1963 - )のもの(↓)と、
チェンバロの演奏(↓)。弾いているのは Justin Taylor(ジュスタン・テイラー、仏、1992 - ) という人。
なお、『バッハの鍵盤音楽』の第5章「初期のフーガ」に含まれる作品は下記。
- BWV896 前奏曲とフーガ イ長調
- BWV949 フーガ イ長調
- BWV993 カプリッチョ ホ長調
- BWV947 フーガ イ短調
- BWV955 フーガ 変ロ長調
- BWV954 フーガ(ラインケンの主題による)変ロ長調
- BWV946 アルビノーニの主題によるフーガ ハ長調
- BWV950 アルビノーニの主題によるフーガ イ長調
- BWV951 アルビノーニの主題によるフーガ ロ短調
- BWV957 フーガ ト長調《神よ、慈しみをもって扱いたまえ》
- BWV533a 前奏曲とフーガ ホ短調
- BWV588 カンツォーナ ニ短調
📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)
✏️ヨハン・アダム・ラインケン(Wikipedia)
✏️バッハの初期のオルガン及び鍵盤楽器のための作品について(その1)(私的CD評)
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