BWV106 は教会カンタータに分類されているが、教会暦とは関連しておらず、葬式などの哀悼行事のための曲である。通称は「哀悼行事」(Actus Tragicus)。
BWV106 🎼バッハの作品一覧/Wikipedia
ちなみに、「バッハ 教会暦」等で検索すると、バッハの教会カンタータを教会暦順に並べた一覧表がいくつか見つかる。例えばコレ(↓)。オラトリオや受難曲も入っているので役に立ちそうだ ♪
✏️教会暦とバッハの声楽作品(2021年度)(音楽の部屋)
BWV106 は、バッハのカンタータとしては初期の作品で、バッハがミュールハウゼンの聖ブラジウス教会のオルガニストであった 1707年(22歳)頃に作曲されたとされている。叔父のトビアス・レンメルヒルトの葬儀のために作曲されたという説もあるようだ。
Wikipedia には、曲の構成(↓)にしたがって、死に対する向き合い方の変化や葛藤のようなものが説明してあって、これを読みながら曲を聴くと、ドイツ語が理解できなくても分かったような気になれる…(^^;)。
- ソナティーナ
- 『神の時こそいと良き時』
- 合唱:Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit
- アリオーソ:Ach Herr, lehre uns bedenken
- アリオーソ:Bestelle dein Haus
- 合唱:Es ist der alte Bund
- アリオーソ:Ja, komm, Herr Jesu, komm
- 『御手にわが霊を委ねん』
- アリア:In deine Hände befehl ich meinen Geist
- アリオーソ:Heute wirst du mit mir
- コラール:Mit Fried und Freud ich fahr dahin
- コラール:Glorie, Lob, Ehr und Herrlichkeit
伴奏は、ブロックフレーテ(リコーダー)2本、ヴィオラ・ダ・ガンバ 2挺、通奏低音というシンプルなもの。楽器だけで演奏される静かな「ソナティーナ」(序奏)が実にいい ♪
序奏に続いて合唱が「神の時=臨終の時」の至福を活発・素朴に歌う。死への恐怖から人は神に残りの寿命を問うが、「人は死ぬもの」という宣言しか返ってこない。
そのあとは、タイトル(冒頭の歌詞)を追うだけでも、何となく展開が分かる。
- これは古き契約 (Es ist der alte Bund) =原罪に対する贖い
- 来たれ、主イエスよ (Ja, komm, Herr Jesu, komm)
- 御手にわが霊を委ねん (In deine Hände befehl ich meinen Geist)
- 汝は今われと楽園にあり (Heute wirst du mit mir)
- 平安と歓喜もてわれは逝く (Mit Fried und Freud ich fahr dahin)
そして最後は、神を讃える晴れやかなコラール『誉れ、讃美、尊崇、栄光を』(Glorie, Lob, Ehr und Herrlichkeit) で曲が締め括られる。
「哀悼行事」のための作品だが、全体にジメジメしていないのがいい。
遠くない将来に「自分の番」が来たときに、「平安と歓喜もてわれは逝く」なんて境地になれるだろうか?…というとまったく自信はないが…(^^;)。
以上、主な出典(参考記事)は下記。
✏️楽曲解説「カンタータ106番」(Ensemble Bach)
聴いたのはオランダバッハ協会の演奏(↓)。
指揮は Jos van Veldhoven(ヨス・ファン=フェルトホーフェン)。この人は、1983年から2018年までオランダバッハ協会の芸術監督を務めた指揮者/合唱指揮者で、この協会を本格的なバロックアンサンブルに育て上げた大物。
その後を継いだのが、2013年以来コンサートマスターを務めていた佐藤俊介だ。
この作品の序奏にあたる「ソナティーナ」は、静かな美しさを湛えていて実にいい。ヴィオラ・ダ・ガンバ とブロックフレーテの素朴な響きがなんとも言えない ♪
この「ソナティーナ」にはピアノ編曲版がいくつかあって、それも美しい。
一つはクルターグ・ジェルジュ編曲による連弾版(↓)。マールタ夫人との演奏。参考:《クルターグ・ジェルジュ:ピアノ音楽の玉手箱♪》
こちら(↓)は、シーモアさん(Seymour Bernstein)の編曲・演奏によるピアノソロ版。参考:《シーモアさん90歳のインタビュー「今が一番うまく弾ける♪」》
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