「バッハの作品一覧/Wikipedia」をざっと見て、BWV988「ゴルトベルク変奏曲」の次にあった BWV989「イタリア風アリアと変奏 イ短調」(Aria Variata alla Maniera Italiana in A Minor)というのが目についた。
聴いたことがないと思って聴いたが、なんとなく聴き覚えがある…♪?
BWV989 🎼バッハ(1685-1750)の作品一覧/Wikipedia
「ゴルトベルク」BWV988(1742年)の次の番号になっているが、"Aria Variata" BWV989 が作られたのは 1709年(24歳)頃、バッハがヴァイマールでヴィルヘルム・エルンスト公の宮廷オルガニスト兼宮廷楽師となったばかりの頃である。
バッハが、イタリア音楽を勉強していて、ヴィヴァルディやマルチェッロなどの協奏曲をクラヴィーア曲に編曲していた時代と重なる。
この作品は "Andreas Bach Buch" という曲集に収められている。これは、18世紀ドイツの鍵盤楽器作品 57曲が集められたもの。
主な copyist(写譜者?)は J.S.バッハの兄、Johann Christoph Bach(オルガニスト、パッヘルベルの弟子)。J.S.バッハの曲が 15曲ほど、ブクステフーデ、パッヘルベル、クーナウなどの作品が含まれている。バッハの初期作品の貴重な資料となっている。
なお、タイトルの Andreas Bach というのは J.S.バッハの甥で、この曲集の所有者の一人。彼が署名したものが残っている。
✏️バッハの初期のオルガン及び鍵盤楽器のための作品について(その1)(私的CD評)
収録曲の一覧表は下記。
✏️Andreas Bach Buch(Wikipedia/フランス語)
聴いたのはオランダバッハ協会の音源で、ハープシコードを弾いているのは、デンマークの Lars Ulrik Mortensen(ラース・ウルリク・モーテンセン)。
曲は、優雅なアリアで始まる。それをテーマとして以下短い変奏曲が 10曲続く。テーマと第10変奏曲(終曲)だけが 2分を超える。それ以外は 1分前後。
奏者モーテンセンによる短い解説動画や解説文(↓)もある。
その解説などによると…。
この曲は、当時のイタリアの作曲家&鍵盤奏者、Bernardo Pasquini(ベルナルド・パスクィーニ、1637-1710)やその少し前の Girolamo Frescobaldi(ジローラモ・フレスコバルディ、1583-1643)を彷彿とさせる。とくに、第9変奏はパスクィーニのトッカータに似ている。
当時、バッハはイタリアの鍵盤楽器作品を集めていたので、パスクィーニの楽譜は持っていたと思われる。なお、パスクィーニは "demons in the fingers"(指に悪魔が宿っている)と言われたほどのヴィルトゥオーゾであった。
そして、曲の構成は…。
第1変奏は Largo で始まるが、第5変奏まではだんだん速くなる。そして、イタリア風の第6変奏で少し落ち着き(Andante)、第7 ジーグ、第8 スケルツォ "à la coucou"(カッコウのように)を経て、パスクィーニのトッカータを思わせる第9変奏へ。終曲の第10変奏は、最初のアリアに近い雰囲気の変奏となっている。
ゴルトベルクの 20年以上前の作品だが、共通性を感じさせる部分もあるそうだ。
終曲で最初のアリア(厳密に同じではないが)に戻るところ、変奏曲の構成が "binary form"(2部構成、両方が繰り返される)であること、変奏がテーマのメロディラインではなく和声構造(harmonic outline)によっていること…など。
出典✏️Aria Variata 'alla Maniera Italiana', BWV989(Hyperion)
ところで、この曲、色んなピアニストがとり上げている。有名なのかも…(^^;)?
ギレリスの演奏(↓)。
グレン・グールド(↓)も弾いている。演奏時間が短いのは繰り返しをしてないため。
そして「聴き覚え」の元はこの(↓)ヴィキングル・オラフソンの CD だった。
3年ほど前にヴィキングル・オラフソンのことを知り、聴いたなかにこの曲が入っていたようなのだ…(^^;)。
YouTube にはライヴ演奏の動画があった(↓)♪
ハープシコードもいいけど、ピアノの音色が好きな私としてはピアノ演奏も捨てがたい。
ギレリスはややしっとり、グールドはややあっさり、オラフソンは多彩な音色で表情が豊か。この中ではオラフソンが一番好みかな…(^^)♪
何気なく選んだ曲だったが、色んなことを知ることができて面白かった。そして、いつの間にか、ピアニストの聴き比べになってしまった…(^^;)。
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