現代作曲家のブレット・ディーンを調べている中で、ルドルフ・ブッフビンダーが「ディアベッリ・プロジェクト」というのをベートーヴェン生誕250周年の 2020年に企画したことを知った。
そのプロジェクトで、ブッフビンダーは 11人の作曲家にディアベリのワルツを元にした「変奏曲」を委嘱している。ディアベリがオーストリアの 50人の作曲家に依頼した流れが、ほぼ 200年の時を経て現代につながったわけだ…面白い…(^^)♪
委嘱された 11人の作曲家とその曲のタイトルは次の通り。《鍵盤音楽史:現代》で取り上げた作曲家も 3人ほど入っている。…というか 3人しか入ってない…(^^;)?
また、このプロジェクトで制作された CD には、200年ほど前のディアベリの依頼に応えた50人の作曲家の曲からも、チェルニーの「コーダ」を含めて 8曲ほど収録されている。
- ヨハン・ネポムク・フンメル
- フリードリヒ・カルクブレンナー
- コンラディン・クロイツァー
- フランツ・リスト
- イグナーツ・モシェレス
- フランツ・クサーヴァー・ヴォルフガング・モーツァルト
- フランツ・シューベルト
- カール・チェルニー:コーダ
その CD が下記。
実は、ベートーヴェンは私の大好きな作曲家の一人で、「ディアベリ変奏曲」はその作品の中でも好きな作品の一つである。これまでにも何度か記事を書いていたりもする…(^^)♪
ちなみに、ブッフビンダーもこの曲がかなりお気に入りのようで、公の場で「ディアベリ変奏曲」を演奏するのは 100回を超えているらしい…。
…で、今回新たに加わった 11曲を含む全曲を聴いてみて思ったこと。
一つは当たり前なのだが、この 11曲はやはり「現代音楽」なのだなぁ…ということ。200年の時の隔たり…というのか、音楽の形・響き・ありよう(有り様)の違いを感じる。
その違いの一つとして、ベートーヴェンの時代の音楽は、音楽の流れや勢いが聴く者を「運んで行く」感じがする。その感覚が快感だったりする ♪
それに対して、現代の音楽は「立ち止まる」ことが多く、聴く者に「問いかける」というか、聴く者にも、音楽を音楽として成立させるために何らかの「共同作業」を強いるようなところがあるのではないか?…と思った。
「共同作業」というのは、問いかけに対する「答え」であったり、作曲家(演奏家)から与えられた音楽の断片に対する聴き手なりの「補完」や「解釈」など…なのかな…(^^;)?
いずれにしても、音楽に浸りきれない(運ばれる感覚を楽しむだけでは済まない)、ある意味での「しんどさ」のようなものを感じてしまった。
もちろん、すべての現代音楽がそうだという訳ではないが…。
もう一つは、やはりベートーヴェンは偉大!…と思った。…というか、一通り聴いて一番惹かれたのはベートーヴェンの変奏曲だった ♪ ブッフビンダーのテンポは少し早すぎるのでは?…と思う曲もいくつかあったが…(^^;)。
好みの問題はあるとしても、音楽としての完成度みたいなものが、他とはまったく一線を画しているように、私には聴こえた。
現代作曲家による 11曲は何度か聴いてみないとその良さは分からないのだろうが、上に書いた「聴く者を運んでいく」ような音楽はあまり期待できないような気がしている。
とはいえ、この「ディアベッリ・プロジェクト」はとても面白い試みだと思う。
200年の時を隔てた音楽の聴き比べもできたし、そのことで「現代音楽」への理解がちょっとだけ深まったような気もする。
現代作曲家の誰かが、33(もっと少なくてもいいが…)の変奏曲を一人で書いてくれないかな…(^^;)?「現代版ディアベリ変奏曲」?
主な出典記事は下記。
✏️ルドルフ・ブッフビンダー「ディアベッリ・プロジェクト」(Universal Music)
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