2019年10月30日水曜日

もう一つのディアベリ変奏曲…を書いた作曲家たち

ベートーヴェンの名曲「ディアベリ変奏曲」が生まれることになったきっかけは、作曲家&出版業者のアントン・ディアベリが、自作のワルツをテーマにして変奏曲を作ることを、1819年に50人の作曲家に依頼したことである。

ベートーヴェンはこの申し出を断り、4年後(1823年)に一人で33の変奏曲を完成させた。一方で、50人の作曲家の変奏曲をまとめた「変奏曲集?」も1824年に出版されている。

この50人には、ツェルニーやシューベルト、若き日の(11歳の)リストなども含まれている。興味本位で音源を探して聴いてみた ♪




YouTube で探してみると、Ian Fountain というピアニストが弾いた音源があって、プレイリストもできている(↓)。

 Diabelli's Waltz プレイリスト

これは下記のCD "The Diabelli Collection" が元になっているようだ。ただ、全曲あるわけではなく、CD自体が33曲の「セレクション」版になっている。





ざっと聴いた範囲では、一番気に入ったのが少年リストが書いた第24変奏。リストの作品としては S.147 の番号が与えられている。下記は楽譜付きの音源。

 Variation on a Waltz by Diabelli, S.147 (Liszt)

もう一つ、シューベルトの第38変奏もわりといい。短調になっているが、やはり「歌の人」だなぁ…という感じがする。シューベルトの作品番号は D718。

 Schubert, Variation on a Waltz by Diabelli, D.718


その他では、第2変奏(イグナッツ・アスマイヤー)の 軽やかなトリルがちょっと面白い。ツェルニーの第4変奏はどこかで聴いたような感じ…。ツェルニーはコーダも提供しているのだが、これもありがちな印象…(^^;) 。

あと、第17変奏(アンセルム・ヒュッテンブレンナー)、第21変奏(コンラディン・クロイツェル)もいい感じ ♪

モーツァルトの息子(フランツ・クサヴァー・ヴォルフガング・モーツァルト)の第28変装も、まぁ悪くない。その他はよく分からない…(^^;)。


その他の作曲家で聞いたことの名前を挙げてみると…。

ピアノ演奏の補助器具「手導器」を開発したことで有名?(✏️カルクブレンナーの「手導器」復元の試み)なフリードリヒ・ミヒャエル・カルクブレンナー、とイグナッツ・モシェレスくらいかな…。

なお、文末に50人の作曲家一覧を載せておく。また、楽譜は IMSLP で見ることができる。


一通り聴いたあと思ったのは、やはりベートーヴェンは偉大だなぁ…ということ。ベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」はまったく格が違う。

もちろん、50の変奏曲はバラバラに作られたものを並べただけなので、作品全体の構成も何もないわけなので、比較にはならないだろうが…。

あと、ところどころにベートーヴェンの変奏曲と似た感じのところがある。例えば、第18変奏(カルクブレンナー)の出だしはベートーヴェンの第9変奏にそっくり。

ベートーヴェンがアイデアを拝借した?のか、変奏曲の一般的な作り方・作法を適用すると同じような音型が出来てしまうものなのか、よく分からないが…(^^;)?


ところで、全曲を録音したピアニストはいないのか調べてみたら、なんと、ルドルフ・ブッフビンダーが "Diabelli's Waltz The Complete Variations" というCD(↓)を出していた。ベートーヴェンの「ディアベリ」も入っている。

今、Spotify で聴いているが、申し訳ないが YouTube で聴いた演奏とは違って、なかなかいい ♪ 上の感想文も変更する必要があるかも…(^^;)。





もう一つ、「カメラータ」レーベルから Doris Adam というピアニストのCDが出ている。これは、井上直幸さんのベートーヴェン「ディアベリ変奏曲」のCDと同時に2002年に出されたもの。

ディアベリ変奏曲(ツェルニー他)




ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲(井上直幸)




おまけ。「もう一つのディアベリ変奏曲」(50人の作曲家による)一覧。

Thema. Vivace (C major), by Anton Diabelli
  1. Ignaz Assmayer: Moderato
  2. Carl Maria von Bocklet: Vivace
  3. Leopold Czapek: Vivace molto legato
  4. Carl Czerny
  5. Joseph Czerny
  6. Moritz von Dietrichstein: Tempo vivo del Thema
  7. Joseph Drechsler: Quasi Ouverture. Adagio - Allegro
  8. Emanuel Aloys Förster: Capriccio. Allegro
  9. Franz Jakob Freystädtler
  10. Johann Baptist Gänsbacher
  11. Joseph Gelinek: Presto
  12. Anton Halm: Dolce
  13. Joachim Hoffmann: (Fugato.) Vivo
  14. Johann Horzalka: Adagio (A♭ major)
  15. Joseph Huglmann: Allegro (A♭ major)
  16. Johann Nepomuk Hummel
  17. Anselm Hüttenbrenner: Allgero
  18. Friedrich Wilhelm Kalkbrenner: Allegro non troppo
  19. Friedrich August Kanne
  20. Joseph Kerzkowsky: Moderato con espressione (F major)
  21. Conradin Kreutzer: Vivace
  22. Eduard von Lannoy
  23. Maximilian Joseph Leidesdorf: Vivace
  24. Franz Liszt: Allegro (C minor) (Variation on a Waltz by Diabelli, S.147)
  25. Joseph Mayseder: Allegro
  26. Ignaz Moscheles
  27. Ignaz Franz von Mosel
  28. W. A. Mozart fils (Franz Xaver Wolfgang Mozart)
    1. 28. Con fuoco
    2. 28a. (printed in later editions)
  29. Joseph Panny: Allegro con brio (A minor)
  30. Hieronymus Payer
  31. Johann Peter Pixis
  32. Wenzel Plachy: Con fuoco
  33. Gottfried Rieger
    1. 33. Allegro ma non troppo
    2. 33a. (printed in later editions)
  34. Philipp Jakob Riotte: Allegro (F minor, ends F major)
  35. Franz Roser (A♭ major)
  36. Johann Schenk: Caprice. Moderato
  37. Franz Schoberlechner
  38. Franz Schubert (C minor) (Variation on a Waltz by Diabelli, D.718)
  39. Simon Sechter: Imitatio quasi Canon, a 3 voci
  40. S. R. D. (Erzherzog Rudolph): Fuga. Allegro
  41. Maximilian Stadler
  42. Joseph von Szalay
  43. Václav Jan Tomášek: Polonaise. Tempo giusto
  44. Michael Umlauf: Presto
  45. Bedřich Diviš Weber: Con fuoco
  46. Franz Weber: Brillante
  47. Charles Angelus Winkhler: Allegro con fuoco
  48. Franz Weiss
  49. Jan Nepomuk Augustin Vitásek: Un poco moderato
  50. Jan Václav Voříšek
Coda: Vivace, by Carl Czerny



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