2020年8月26日水曜日

BTHVN op.54: ピアノソナタ No.22 ロルティの演奏が見事 ♪

「ベートーヴェンの全作品を聴く」プロジェクト《All BTHVN 🎧》、今日は Op.54、ピアノソナタ第22番 ヘ長調(1804: 34歳)。

それほど親しんでいる曲ではないが、今回何人かの演奏を聴いてちょっといい曲かも…と見直した…(^^)♪ といっても、やはり演奏(ピアニスト)によるようだ。



Op.54

🎼 List of works by Ludwig van Beethoven


この作品の解説を見ると、「第21番《ワルトシュタイン》と第23番《熱情》の間にあって存在感が薄く…」といったものが多い。

ソナタとして出版されたが、ソナタ形式は使われておらず、2楽章構成のどちらの楽章もヘ長調という変則的、あるいはベートーヴェンにとっては実験的な作品になっている。

でも、じっくり聴いてみると、10分ほどの短かい中に中身がぎっしり詰まっていて、最後まで飽きさせない、なかなか面白い曲だと思う ♪

作曲された 1804年はオペラ『フィデリオ』の作曲が進められており、交響曲第3番《英雄》が完成した充実した年でもある。


Wikipedia の中に音楽学者ドナルド・フランシス・トーヴィーという人の解説が載っていて、ちょっと面白いので一部引用しておく。

「作品全体は深遠なユーモアを備えている。そのユーモアとは音楽により描写された無邪気な性格というより、むしろ作曲者に由来するものである。…その素材は子どものような、あるいは犬のようなともいうべき無邪気さであり、子どもや犬の最良の理解者であればこの音楽を適切に解釈し、楽しめる見込みが最も高い」


あまり難しいことは考えずに、素直な心で楽しんだ方がいい作品なのかも…(^^)?


もう一つ、ポゴレリッチがインタビューの中で面白いことを語っている。

✏️ポゴレリッチ、ベートーヴェンを語る ~ピアノ・ソナタをめぐる対談(KAJIMOTO)


ソナタ第22番は第24番と同様「奇想天外な実験的作品」とした上で…。

「彼は…『映画』に非常に似たアプローチを行っているのではないでしょうか。いかなる『間』もおかずに、おのおのの音楽素材が、まるで連続する映像が変化を形成していくように提示されているという意味で」

「驚くべきは、…このソナタではすでに、ユーモア――私たち人間が種として持つ長所――が表現されています」

「さらに驚くべきは、素材の濃縮です。つまり、あまりにも多くの音の情報が、2つのごく短い楽章の中に圧縮されているのです。それこそが、力強く、そして長く続く“精神の爆発”を形成しているのです」


間髪入れずに音楽素材を連続して、凝縮した形で提示している…というのはよく分かる。また「ユーモアが表現されている」というのも頷ける。


…で、一番気に入った演奏であるが、残念ながら?ポゴレリッチではない…(^^;)。

YouTube の検索で一番目に出てきたのがコレ(↓)。3人のピアニストの演奏が入っているのだが、幸運なことに最初の Lortie(ロルティ)が一番良かった。この演奏のおかげで、この曲がこんなにいい曲だったと認識できた ♪

♪ Beethoven: Sonata No.22 in F Major, Op.54 (Lortie, Korstick, Buchbinder)


ルイ・ロルティ(Louis Lortie, 1959- )は Op.34 の「創作主題による6つの変奏曲 ヘ長調」を聴いたときにもちょっと気に入ったピアニストだ。フランス系カナダ人。

《BTHVN op.34: 6つの変奏曲、グレン・グールドの中身の詰まった演奏がいい ♪》


Wikipedia によると、今月初めに 92歳で亡くなったレオン・フライシャーにも師事していた。1984年のブゾーニ国際ピアノコンクールで第1位、同年のリーズ国際ピアノコンクールでも第4位になっている。

シャンドス・レーベルから30以上の録音を出しており、その中にはショパンの練習曲全集やベートーヴェンのピアノソナタ全集(↓ 1991〜2010)、ラヴェルのピアノ独奏曲全曲などが含まれている。もう少し聴いてもいいピアニストかも知れない ♪

Beethoven: Complete Piano Sonatas by Louis Lortie (2010-10-26)





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