2020年8月31日月曜日

BTHVN op.56: トリプルコンチェルト、巨匠たちの競演 ♪

「ベートーヴェンの全作品を聴く」プロジェクト《All BTHVN 🎧》、今日は Op.56 の「ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲」ハ長調(1804-05: 34-35歳)、通称「トリプル・コンチェルト(三重協奏曲)」である。

「今日ではあまり評価が高くない」とか「駄作」とか言われるわりにはビッグネームによる「名録音」が沢山残されている ♪ 個人的にはわりと好きな曲だ…(^^)。


Op.56

🎼 List of works by Ludwig van Beethoven


このトリプル・コンチェルトはピアノ三重奏とオーケストラという珍しい組み合わせの作品である。意欲的な試みとも言えるが、一般的な評価は芳しくない。

例えば Wikipedia ではこんな感じ(↓)。

「ヴァイオリンソナタ第9番『クロイツェル』、ピアノソナタ第21番『ワルトシュタイン』、ピアノソナタ第23番『熱情』、交響曲第3番『英雄』などが書かれた時期の作品であるが、今日ではあまり評価が高くない」

「ピアノ三重奏を独奏楽器として管弦楽と対置するという発想は意欲的なものであったが、ベートーヴェンはそれを十分に処理しきれずに終わった」


もちろん評価する記事もある。例えばコレ(↓)。

✏️ベートーヴェン 三重協奏曲ハ長調,op.56(OEKfan)

「ベートーヴェンらしい力強さもあるし,独奏楽器の掛け合いの美しさもあります」

ただ、この記事でも「物足りないと感じさせる理由」が並べてある。

「ピアノ三重奏とオーケストラを組み合わせた点…は,面白いけれども作曲技法上難しい点があるのだと思います」

「チェロのパートが非常に難しく,ピアノのパートが非常に易しく書かれています。…このアンバランスが作曲上の制限になったのかもしれません」

その上で、「この曲はヴァイオリンとピアノのオブリガート付きチェロ協奏曲と考えるのが良い」かも知れないという、音楽評論家の渡辺和彦氏の言葉を引用している。


ベートーヴェンの作品の中で最高の部類には入らないのかも知れないが、適度に肩の力の抜けた、音楽を楽しむ雰囲気のあるこの曲は個人的には好きだ ♪ 独奏楽器群の掛け合いも面白いし、それなりのスケール感もあって楽しめる曲である。

演奏を探して見ると、実に豪華なメンバーがたくさんの名演奏を残してくれている。それを聴き比べる楽しみもある…(^^)♪


その中から、気に入ったものをいくつかあげてみる。新しい順で…。以下、録音年月、ソリスト(チェロ、ヴァイオリン、ピアノの順)、指揮者、オーケストラ。


2019年10月:ヨーヨー・マ、アンネ=ゾフィー・ムター、バレンボイム:バレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団。

ベートーヴェン:三重協奏曲、交響曲第7番




ベートーヴェン生誕250年を記念してリリースされたもの。ダニエル・バレンボイムが指揮とピアノを務める。オーケストラもよく鳴っていて、ソロ楽器とのアンサンブルもいい感じだ。バレンボイムのピアノがやや控えめ?なのもちょうどいい…?

YouTube には楽章ごとの音源がある。

♪ Beethoven: Triple Concerto in C Major, Op. 56 - 1. Allegro (Live at Philharmonie, Berlin / 2019)


2013年6月:ソル・ガベッタ、ジュリアーノ・カルミニョーラ、デヤン・ラツィク:ジョヴァンニ・アントニーニ指揮バーゼル室内管弦楽団。

TRIPLE CONCERTO




私のお気に入りチェリスト、ソル・ガベッタを含む「注目の豪華ソリスト」による演奏。ヴァイオリンはバロック・ヴァイオリンでは並ぶもののないというジュリアーノ・カルミニョーラ、ピアノは「クロアチアの鬼才」デヤン・ラツィック(↓)。

《デヤン・ラジッチ(ラツィック):期待したい》


2003年4月:ミッシャ・マイスキー、ルノー・カピュソン、アルゲリッチ:アレクサンドル・ラビノヴィッチ・バラコフスキー指揮スイス・イタリア語放送管弦楽団。

Beethoven: Triple Concerto Etc. by Martha Argerich




アルゲリッチの良き友人たちによる素晴らしい演奏。聴いた中では一番好きな演奏 ♪ マイスキーのチェロが気持ちよく歌い、カピュソンのヴァイオリンが寄り添い、アルゲリッチのピアノが存在感を示しながらもいいバランスでアンサンブルする…♪

アルゲリッチが主催するルガーノ音楽祭での演奏。アルゲリッチにとってこの曲の演奏はこれが初めてのようだ。

アルゲリッチ・フレンズはソリストたちだけだと思ったら、指揮をしているアレクサンドル・ラビノヴィッチ・バラコフスキーというのは、アルゲリッチとのピアノ・デュオで数々の名盤を世に出した「あのラビノヴィチ」だそうだ。

「スイス・イタリア語放送管弦楽団」というオーケストラは初めて聞く名前だが、なかなかの好演。力強くいい感じで鳴っている ♪

YouTube でも聴ける。

♪ ベートーヴェン:《トリプル・コンチェルト》Op.56 アルゲリッチ, カピュソン, マイスキー 2003


1969年9月:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、ダヴィッド・オイストラフ、スヴャトスラフ・リヒテル:ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。

ベートーヴェン:トリプル・コンチェルト & ブラームス:ダブル・コンチェルト




ベートーヴェンのトリプルコンチェルトと言えば、必ず名盤として登場するのがコレ。ソリストから指揮者からオーケストラまで、これ以上ないという巨匠たちを揃えた演奏。

最初のオーケストラの入りから心を掴まれるような、なかなか聴き応えのある演奏なのだが、個人的な好みとしてはやや重すぎるかな?という印象。

でも、いや〜、ロストロポーヴィチもオイストラフもリヒテルも上手い! 見事というしかないだろう。これだけ個性の強い巨匠たちがうまくアンサンブルするものだ…(^^;)♪

YouTube にもある。

♪ ベートーヴェン:三重協奏曲:オイストラフ(vn):ロストロポーヴィチ(vc):リヒテル(p)/カラヤン/ベルリン・フィル



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