2020年7月5日日曜日

BTHVN op.31: ピアノソナタ No.16/17/18 コヴァセヴィッチ ♪

「ベートーヴェンの全作品を聴く」プロジェクト《All BTHVN 🎧》、今日は Op.31、ピアノソナタの第16番・17番《テンペスト》・18番(1802: 32歳)。

第16番をこれほどまとめて聴いたのは初めてかも知れない。お気に入りの演奏を見つけるのに少し苦労したので…(^^;)?


Op.31

🎼 List of works by Ludwig van Beethoven


この Op.31 が作られたのは 1802年、「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれた年である。3曲中、第16番だけが遺書の前に完成している。

この有名な「遺書」、これまで全文を読んだことがない(たぶん…)ことに気がついて、読んでみた。聴覚が回復する希望を失いながらも、生ある限り自分の使命である「芸術の天才を十分展開」することに身を捧げようとする強靭な意志を感じた。

「みずから自分の生命を絶つ」ことを選択せずに、このあと 56歳までの 24年間多くの素晴らしい作品を残してくれたことに、改めて感謝し、敬意を表したいと思う。

✏️ベートーヴェンの生涯 /ハイリゲンシュタットの遺書(青空文庫)


少しだけ抜き書き。

「…たびたびこんな目に遭ったために私はほとんどまったく希望を喪った。みずから自分の生命を絶つまでにはほんの少しのところであった。――私を引き留めたものはただ『芸術』である。自分が使命を自覚している仕事を仕遂げないでこの世を見捨ててはならないように想われたのだ」

「今や私が自分の案内者として選ぶべきは忍従であると人はいう。私はそのようにした。――願わくば、耐えようとする私の決意が永く持ちこたえてくれればいい」

「芸術の天才を十分展開するだけの機会をまだ私が持たぬうちに死が来るとすれば、たとえ私の運命があまり苛酷であるにもせよ、死は速く来過ぎるといわねばならない。今少しおそく来ることを私は望むだろう」


さて、最初に書いたように、第16番 ト長調ではお気に入り演奏を見つけるのに少し手間取ってしまった。

これまで(普通に?)聴いているときにはそれほど感じなかったのだが、今回改めて聴くと、冒頭の10秒間くらいでその演奏の好き嫌いが分かれてしまうようなのだ。

第1楽章の第1主題(↓)はアウフタクトが特徴的で、ピアニストによって弾き方(解釈)がかなり分かれる。とてもメリハリをつける弾き方もあれば、右手の "(ten.)" を意識したような滑らかな弾き方もある。




私としては、ほどよくメリハリが付いている演奏が好きなようだ。その「ほどよく」加減が一番気に入ったのが、スティーブン・コヴァセヴィチの演奏(↓)だった。

♪ Beethoven: Sonata No.16 in G Major, Op.31 No.1 (Kovacevich, Goode)

もちろん、冒頭だけではなく全曲を通してなかなか気に入った。大胆さと細やかさがいい感じでバランスしている。フレーズの中に豊かな情報が含まれているというか、強弱だけではなくタッチや音色の微妙な変化が、音楽的な響きとして色んなものを伝えてくる。


第17番 ニ短調は YouTube では見つからなかったが、第18番 変ホ長調の演奏(↓)も気に入った。"The Hunt" とあるように《狩》というタイトルで呼ばれることもあるようだ。

♪ Beethoven: Sonata No.18 in E-flat Major, "The Hunt" (Kovacevich, Biret)


ちなみに、第17番《テンペスト》ではピリスさんの演奏がよかった。ときどき手元が乱れているが、全体的な音色や解釈は私好みである。

♪ Maria João Pires - Beethoven - Piano Sonata No 17 in D minor, Op 32


コヴァセヴィチの第17番《テンペスト》の演奏が聴きたくて Spotify を探していたら、ベートーヴェンのピアノソナタ全集(バガテルも)があることを発見した(↓)。

Stephen Kovacevich - Beethoven : The Complete Piano Sonatas / Bagatelles




調べてみると、1991年から2003年あたりの 13年ほどかけて録音したもののようだ。下記インタビュー記事に少しだけ触れられている。

✏️スティーヴン・コヴァセヴィチ(FM fan 1997年:伊熊よし子インタビュー)


《テンペスト》の演奏は、第3楽章の「タラララン」の最後の「ラン」をやや短めに切っているのがちょっと気になる(歯切れのいい心地良さにはつながっていると思う)が、全体的にはドライヴ感もあって好きな演奏である。


スティーヴン・コヴァセヴィチは、名前は以前から知っていて、演奏にも何となく好感を持っていたが、「お気に入りピアニスト」みたいな意識はあまりなかった。

ちょっと意識し始めたのは、この《All BTHVN 🎧》プロジェクトで《悲愴》ソナタを聴いたとき(↓)から…。そして、今回「お気に入り」確定である…(^^)♪

《BTHVN op.13: ピアノソナタ「悲愴」コヴァセヴィチいいかも ♪》

これからもお世話になるかも…😊。



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