2014年6月14日土曜日

ドビュッシー「アラベスク第1番」をもっと知るために

これまで、練習する曲のことをあまり調べたことはなかった。ということを反省して、今回はドビュッシー「アラベスク第1番」について少し調べてみることにした。とりあえずは、これまでに読んだ本とネットの情報からいくつか紹介する。


お薦めの本




これは少し前に読んだ本だが、ドビュッシーを練習する人にはとてもいい本だと思う。よく弾かれる曲にそった、具体的な弾き方の説明とともに、音色を重視した指の基礎練習も写真入りでたくさん紹介されている。


アラベスクに関しては、バッハが好きだったドビュッシーは次のように書いているそうだ。

教会音楽の先駆者たちは、あの聖なる『アラベスク』を活用した。彼らはグレゴリオ聖歌のうちにこの原理を見つけ、頑丈な対位法を用いながら、触れなば崩れんばかりに脆弱なアラベスクの唐草文様をくり広げてみせた。バッハは、このアラベスクをもう一度、心を新たにして取り上げるや、もっとしなやかな、もっと流動的なものに、これを改めた。


ちなみに、いづみこさんは「たっぷりルバートして生々しく歌う」より「ちょっと距離をおいて装飾的に弾く」アラベスク1番が好みのようだ。

「アラベスク第1番・第2番」以外に取り上げられている曲は、「水の反映」「運動」「デルフの舞い姫たち」「亜麻色の髪の乙女」「沈める寺」「雪は踊っている」「ゴリウォーグのケーク・ウォーク」など。


『ドビュッシーとの散歩』(青柳いづみこ)



これも、いづみこさんの本。こちらは、ドビュッシーの40曲の作品についての軽いコラム記事を集めたもの。気軽に読めるわりには、それぞれの曲のイメージをもらえる中身の濃い本かもしれない。

アラベスクのところには、「タイトルも音楽の内容も、ドビュッシーの美学のエッセンスが詰まっているような作品」であり、「左手と右手のなめらかな動きから、唐草模様のような美しいアルペジオがつぎつぎに紡ぎだされる」というような説明がある。(そういうふうに弾けるとどんなにいいか…)


「2つのアラベスク」(Wikipedia)から

1888年(26歳)に作曲され、1891年に改訂されたとされる。

2曲で構成される本作品は、いずれもロマン派音楽に典型的な三部形式による小品となっており、和声法にグリーグやフォーレ、マスネの影響が顕著であるものの、抒情性と軽やかに運動するリズムの共存はシューマンの着想に似ていなくもない。ことに〈第1番〉においては、分散和音の多用と、右手と左手のポリリズムの組み合わせが「アラベスク」たるゆえんであろう。

アラベスクとは「アラビア風の唐草模様」「アラビア風の、装飾が多くて華やかな楽曲」(新明解国語辞典・三省堂)の意味である。

ドビュッシーは、敬愛しているバッハの協奏曲について、芸術のあらゆる様態の根底である〈装飾〉の原理(音楽のアラベスク)を見出せると形容しており、この自身の小品においても、3連譜が躍動する旋律がアラビア模様のように織り成す印象を聴く者に与える。またポリリズム部分は、川が流れる様子を表している。



これはピティナのサイトに掲載されている、金子一郎さんの非常に細かく丁寧な「アナリーゼ」である。曲の流れに沿って、小節単位で細かい演奏上の解説がされている。本格的にピアノをやる人向けだと思われる。(私にはちょっとレベルが高すぎてついていけない…)

少しだけ引用すると、こんな感じ。

「前半と後半は分散和音が文字通り唐草模様のように組み合わさり、ロマンティックでみずみずしい世界が展開されます。分散和音はあたかも水面下を動くかのように滑らかに表現され、それがメロディーの一部になっています」

「後年の作品とは異なり、メロディーはとても息の長いものです。中間部分はやはり分散和音がありますが、美しい和声進行が少しずつ形を変えて表現され、これが前後と絶妙なコントラストを作っています。聴いた印象はとても心地よいものですが、ドビュッシーが書いた楽譜の指示の意味を汲み取って表現することは結構難しい作品です」

「3~6小節は通常の和声進行ですが、ソプラノのV9の第9音aは本来のgisに解決せずにeに向かうところが新鮮です。また、1~5小節のバスラインは、cis h a gis fis e dis cis h と順次下降進行して6小節のI和音の根音eに解決します。この大きな流れはさりげなく表現するべきでしょう」


YouTube音源

ある程度、曲のイメージができてきたので、お手本の演奏を選ぼうかと思っている。とりあえずはいくつかの演奏を聴き比べている段階である。その候補についてはちょっと前に書いた次の記事に上げてある。




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