日本人のピアニストを探すために読んだ本である(→前記事)が、ピアノ演奏に関して参考になるところがたくさん入っていたので、いつものように独断と偏見によるメモを書いておく。ご参考まで…。
『我が偏愛のピアニスト』(青柳いづみこ)
以下、気になった箇所の抜書き。
●理想としている音というのはありません。強いて言えば、その音楽にかなった音。(岡田博美さん)
●(クルチオ女史のトレーニング)まず丹田に力をこめて息を吸い、ついで身体を前屈させて息を深く吐きながら脱力する。こうすると肩までリラックスできる。(岡田博美さん)
●ドビュッシーを弾くためには脱力が不可欠だが、ふにゃふにゃの指で力だけ抜いても楽器はきちんと鳴らない。…小川さんのドビュッシーは音の粒が見事にそろっている。そこでペダルを踏むと美しい響きが立ち上り、響きの中にテクスチュアがはっきりと浮かび上がるのだ。(小川典子さん)
●(レガートについて…)マルタ・アルゲリッチは先生のスカラムッツァから、指先は蛸の吸盤のように鍵盤に吸い付かなければならないと…。小山さんは指先の定着が悪くて苦労した…。指のしなりを使って弾いてもよいのだということに気づき、そうしたらやっとレガートがきくようになった。(小山実稚恵さん)
●ピアノを弾くというのは、たとえば禅僧のお坊さんが瞑想するときと同じような感じではないか、と思うことがある。…霊感がおりた状態…。(坂上博子さん)
●(シアンピの指導)椅子の座り方から始め、鍵盤に手を乗せ、全部の指で支えるテヌート、そして指一本ずつの運動に進む。秒単位のゆっくりした動きで、なによりも運動神経の分離独立が大切である。同時に、手の握り方、開き方の体操などをまじえ、フォームを作る。腕のいろいろな運動など、独立したトレーニングが20種類ほどもあった。(柳川守さん)
●掌がしっかりするまでは手首を固めておくように言われた…。普通は手首を柔軟にしろと指導するが、全部抜くとよりどころがなくなる…。(柳川守さん)
●(シュタルケルは)音楽を下から見る…。音楽というのは、…ハーモニーの低音の進行という大きな柱があって、その上でメロディが踊っている…。一番難しいのはショパンで、メロディがきれいだから一生懸命きれいに聴かせようとするのですが、実は低音がしっかりしてないときれいに聞こえない。(練木繁夫さん)
●教育システムがしっかりしていなかった時代の方が、それぞれ特徴のある演奏をしていて面白かった…。今、グローバルになりすぎて、みんがけっこううまくなっちゃって、それもつまらなくうまくなってしまった。(練木繁夫さん・青柳いづみこさん対談)
最後の「つまらなくうまくなってしまった」がとても残念である。日本のピアニストがんばれ!
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