「ぶらあぼ」の記事(↓)で、キットくんはなかなか興味深いことを言っている。
いくつかを引用すると…。
「クラシック音楽への私のアプローチは、博物館や美術館で啓発されるのに近いものがあります。ミュージアムとは偉大なる人間性の表現の集合体で、それぞれの時代が前時代よりも遠くを見据えている」
「クラシック音楽とはつまり、人類は世代を超えて継続的に歴史を理解し得る、という考えに寄せる芸術家たちのオマージュなのです」
「(今回のプログラムで)…なにより重要なのは、共感をもって、ポジティブな方法で、つまり私自身の音楽への愛をもってコミュニケートすること」
他にも、パンデミックのことなどいろいろ語っているが、それは「ぶらあぼ」の記事を見て戴くとして…。私が気になったのは、実際にキットくんが選んだ曲目(作曲家)である。
昨年、《鍵盤音楽史:バッハ以前》、《鍵盤音楽史:現代》と「四期」の前後の時代の作曲家・鍵盤作品を調べたばかりなので、余計に気になってしまう…(^^;)。
詳しくは後ほど見るとして、100年ごと 5回のプログラムをコピペしておく。赤字の作曲家は初めて聞く名前。昨年調べた作曲家は、名前に記事へのリンクをつけておいた。
1️⃣ 1520-1620:The Golden Age
- T.プレストン:ラ・ミ・レの上で
- J.ブル:イン・ノミネ IX *、幻想曲 ニ短調 *、幻想的なパヴァーヌとガイヤルド
- G.ファーナビー:マスク ト短調 *
- W.バード:ヒュー・アシュトンのグラウンド *、荒涼とした森を歩きますか *、オックスフォード伯爵の行進曲*、鐘 *、パヴァーヌとガイヤルド「ウィリアム・ピーター卿」
- T.タリス:御身はまことに幸いなる者 I *
- J.P.スウェーリンク:半音階的幻想曲
*…「フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック」より
2️⃣ 1620–1720:Contrast
- J.S.バッハ:「かくも喜びに満てるこの日」 BWV605、「古き年は過ぎ去り」 BWV614、「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」 BWV639、「おお主なる神よ、われを憐みたまえ」 BWV721、「主イエス・キリストよ、われら汝に感謝す」 BWV623、「人みな死すべきもの」 BWV643
- ヘンデル:『ハープシコード組曲』 第1集第5番 ホ長調 HWV430、パッサカリア
- J.ブル:地の偉大なる創造主
- エリザベト=クロード・ジャケ・ド・ラ・ゲール:『クラヴサン曲集』第1巻第1組曲 より 前奏曲とシャコンヌ 「移り気な女」
- F.クープラン:『クラヴサン曲集 』第2巻第6組曲より第5曲「神秘的なバリケード」、第2巻第11組曲より第3曲「生まれながらのあでやかさ」、第1巻第4組曲より第4曲「目覚まし時計」、第2巻第8組曲より第8曲「パッサカリア」
- J.C.シャンボニエール:『ボーアン写本』第1巻よりシャコンヌ ヘ長調
- J.S.バッハ:協奏曲ト長調 BWV980(ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 RV381にもとづく)、半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903
3️⃣ 1720–1820: Enlightenment of heart and mind
- J.S.バッハ:『平均律クラヴィーア曲集』第1巻第1番 ハ長調 BWV846、第2巻第22番 変ロ短調 BWV891
- ハイドン:変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII:6
- モーツァルト:ピアノソナタ 第10番 ハ長調 K.330
- C.P.E.バッハ:自由な幻想曲 嬰ヘ短調 Wq.67, H.300
- モーツァルト:自動オルガンのための幻想曲 ヘ短調 K.608
- ベートーヴェン:ピアノソナタ 第14番 嬰ハ短調 op.27-2《月光》
4️⃣ 1820–1920:Visions
- ショパン:夜想曲 第5番 嬰ヘ長調 op.15-2、第6番 ト短調 op.15-3、第8番 変ニ長調 op.27-2
- ドビュッシー:『映像』第1集
- リスト:『超絶技巧練習曲』S.139 より第8番 荒野の狩、第11番 夕べの調べ、第10番 熱情
- フォーレ:夜想曲 第6番 変ニ長調 op.63
- リスト:モショーニの葬送 S.194、死のチャールダーシュ S.224、暗い雲 S.199
- シェーンベルク:6つのピアノ小品 op.19
- L.オーンスタイン:飛行機に乗って自殺
5️⃣ 1920-2023:Among all Cultures
- ラフマニノフ:コレッリの主題による変奏曲 op.42
- ゴドフスキー:『ジャワ組曲(フォノラマ〜ピアノのための音紀行)』第4巻第10曲 クラトン(王宮)にて
- ガーシュウィン:『ジョージ・ガーシュウィン・ソングブック』より 私の好きな彼、ドゥー・ドゥー・ドゥー、スワニー、フー・ケアーズ?、アイ・ガット・リズム
- K.S.ソラブジ:『100の超絶技巧練習曲』第26番 最高に甘く、『3つのパスティーシュ』KSS31 より 第3番 リムスキー=コルサコフの歌劇《サトコ》より「インド商人の歌」によるパスティーシュ
- G.リゲティ:『ムジカ・リチェルカータ』第8曲 ヴィヴァーチェ・エネルジコ、第7曲 カンタービレ・モルト・レガート、『ピアノのためのエチュード』第1巻第5曲 虹、第2巻第10曲 魔法使いの弟子
- ペルト:アリーナのために
- K.アームストロング:素描のエチュード
- 武満 徹:雨の樹 素描 II ーオリヴィエ・メシアンの追憶にー
このプログラムを見ていると、例えば、現代に近いところは「リゲティ、ペルト、武満」なのか?…などという疑問というか、色んな意見は出るかも知れない。
キット・アームストロングは、プログラム構成の考え方を次のように述べている。
「それぞれの世紀でストーリーをひとつずつに絞り込みました。今回のプログラムの要点は、客観的な歴史書を編むことではなく、異なる聴きかたを啓発できればという考えですから」
つまり、キットくんの視点・考え方で、1920年からの 100年間を "Among all Cultures" という「ストーリー」に絞り込んだ結果のプログラムなので、とやかく言うことではなさそうだ。このリサイタルはある意味、心を空っぽにして聴いた方がいいのかも知れない。
おまけ。以前、ピアノ曲の 700年の歴史を 2枚の CD に凝縮したアルバムのことを記事にしたことがある(↓)。キットくんのこの企画を見ていて、ふと思い出した。
Jeremy Denk というアメリカのピアニストが、1300年から2000年までのピアノ曲 25曲を演奏した "c.1300-c.2000" というアルバムだ。
今回のキットくんの選曲と比較してみると面白いかも知れない。
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