鍵盤音楽史の勉強 5人目の作曲家は、ルネサンス時代のイングランドの作曲家・オルガン建造家・鍵盤楽器演奏家、ジョン・ブル(John Bull, 1562-1628)。多くの鍵盤作品を残した。『カノンの技法』というカノン集もある。
ジョン・ブルは、1586年にオックスフォード大学を卒業、1952年には博士号を取得している(Dr. John Bull という表記も時々見かける)。1591年には王室礼拝堂オルガニストに就任、1596年にはエリザベス1世のお墨付きでグレシャム・カレッジの音楽科教授に着任。
のち、オランダに渡りジェイムズ1世に仕官、1617年にはアントウェルペン大聖堂の首席オルガニストに任命されている。オランダでは、当時最も影響力のあった作曲家スウェーリンク(ブルと同じ年齢)にも会っているようだ。
最初で唯一の出版されたブルの作品は、ヴァージナル曲集『パーセニア』に収められた 7曲(Preludium、Pavana 、Galiardo など)である。
『パーセニア』は、プファルツ選帝侯フリードリヒ5世とジェイムズ1世の娘である15歳のエリザベス王女(ブルの生徒であった)の結婚を祝して出版された曲集。
✏️Parthenia (music)(Wikipedia/英語)
また、「フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック」には 37曲が収録されている。(文末に曲目リストを添付)
ジョン・ブルの代表曲としては「ファンタジア」というのが挙げられていた。…のだが、個人的には変奏曲がとても気に入っている ♪
いずれも、キット・アームストロングの『ウィリアム・バード/ジョン・ブル:作品集』に収められている現代ピアノでの演奏。
また、ジャン・ロンドーが 1575年頃に作られたヴァージナル "Florentine arpicordo"(Francesco Poggi 作?)を使って演奏している "Melancholy Pavan" という曲もいい感じだ ♪
元の CD は下記で、フレスコバルディ、ルイージ・ロッシ、ルッツァスコ、スウィーリンク、ダウランド、ブル、ギボンズ、バレンテ、シャイデマンなどの曲が収められている。
この CD で興味深いのは、「…2つの楽器(ヴァージナルとチェンバロ)を使用していますが、平均律を採用せず、時代、地域、曲調に応じた不等分音律」を使っていること。
CD の解説と収録曲の一覧表は下記。
✏️Melancholy Grace / メランコリー・グレース【輸入盤】(ワーナーミュージック)
オルガンで演奏した音源もあるが、どちらかというとチェンバロの方が好きだ ♪
例えば、このピエール・アンタイ(Pierre Hantaï、仏、1964-)の CD(↓)はちょっと軽めの曲も入っていて気軽に楽しめるかも…♪
YouTube にプレイリストがあった(↓)。収録曲は下記。
- In Nomine (Musica Britannica N°12)
- Pavan In The Second Tone
- Galliard (Musica Britannica N°78)
- The King's Hunt
- Germain's Alman
- English Toy
- Why Aske You
- Fantasia (Musica Britannia N°12)
- Melancoly Galliard
- In Nomine (Musica Britannia N°9)
- Dutch Dance
- Pavan Fantastic
- Gaillard To The Pavan
- In Nomine (Musica Britannia N°4)
- In Nomine (Musica Britannia N°5)
- Fantasia (Musica Britannia N°15)
- Doctor Bull's Goodnight
- Lord Lumley's Gaillard
- Salvator Mundi (Musica Britannia N°2)
- Irish Toy
- Chromatic Pavan
- Chromatic Gaillard
- The Duke Of Brunswick's Alman
ところで、ブルには『カノンの技法』と称される(『フーガの技法』ならぬ…)120曲のカノン集があるのだが、出版もされていないらしい。
Wikipedia によると、「当時の最も非凡なる曲集の一つであり、ヨハネス・オケゲムやバッハにも匹敵する、驚くべき対位法の粋が示されている」そうだ。
うち 116曲は、グレゴリオ聖歌の《ミゼレーレ》を定旋律としており、音価の拡大・縮小、逆行形、拍子記号の混用などの技法が駆使されているとのこと。
キット・アームストロングの『ウィリアム・バード/ジョン・ブル:作品集』にも、いくつかの曲がセレクトされて入っている。
探してみたら、オーストラリアのクイーンズランド大学のサイト(↓)に『カノンの技法』に関する Denis Collins 氏の論文が置いてあって、詳しく解説してあるようだ。英文なのでザッと目を通すのもしんどい…(^^;)。
譜例も多く載っている。例えばこれ(↓)は "four-part canon on the Miserere plainsong at the octave in contrary motion and at the unison in similar motion"。
付:「フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック」の収録曲
- Walsingham
- Galliarda to my Lorde Lumlyes Pavan
- Pavana
- Galiarda
- The Quadran Pavan
- Variation of the Quadran Pavan
- Galiard to the Quadran Pavan
- Pavan
- Galiard to the Pavan
- Sainte Thomas Wake
- Praeludium
- Fantasia
- Praeludium
- Gloria tibi trinitas
- Salvator Mundi
- Galliarda
- Variatio
- Galliarda to the Pavan
- In Nomine
- Christe Redemptor
- The Kynges Hunt
- Pavana
- Galiarda
- Dr Bulls Juell
- The Spanyshe Paven
- The Duke of Brunswykes Alman
- Pypers Galiarde
- Variatio ejusdem
- Praeludium
- Galiarda
- Galiarda
- A Gigge, Doctor Bulls My selfe
- A Gigge
- Praeludium
- Ut, re, mi, fa, sol, la
- The Duchesse of Brunswykes Toye
- Miserere in three partes
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