《鍵盤音楽史:現代》 27人目の作曲家は、アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt, エストニア, 1935-)。好きな作曲家の一人。
以前、有名な「鏡の中の鏡」などの曲を「作曲遊び」の教材(参考)にさせてもらって、試し弾き程度に弾いてみたことがある…(^^)♪
ペルトは幼い頃よりピアノを習うが、作曲の方により興味を示した。放送局の音響エンジニアをしながら、1963年にタリン音楽院(現エストニア音楽演劇アカデミー)を卒業。
当時のエストニアはソ連の統治下にあり、西欧の最新の音楽や宗教的な音楽は禁じられていた。その厳しい環境下で 12音技法などの現代音楽を学ぶが、しだいに限界を感じる。
そのため、1968年ごろから一時期作曲をやめ、新しい方向を模索するため、古学の研究に没頭する。「西洋音楽の根源への実質上の回帰」ともいうべき、グレゴリオ聖歌など中世の単旋聖歌、そしてルネサンス期の多声聖歌といった「祈り」の音楽を探求した。
その結果、見出したのが「ティンティナブリ」(鈴鳴らし)という技法。8年間の"沈黙"を破って 1976年に発表したピアノ曲『アリーナのために』で、簡素な音の組み合わせを一定のリズムで繰り返していくその表現方法を用い、独自のスタイルの確立を印象づけた。
1980年に妻子を連れてウィーンに移住、後にベルリンを拠点として活動する。2010年、エストニアで生誕75周年記念イベントが行われ、祖国に帰国。タリン近郊のバルト海を望む森の中に、自筆の楽譜や資料を保管する「アルヴォ・ペルト・センター」も設立された。
✏️TALLINN 〓 Estonian National Archive “Arvo Pärt Center” opened(Around the Music Festival)
このセンターの Webサイト(↓)は曲の解説なども充実している。
ピアノ関連の作品は下記の通り。出典は✏️Arvo Pärt Works(Arvo Pärt Center)。
- 1958: Partita
- 1958: Sonatina No. 1
- 1959: Four Easy Dances
- 1959: Sonatina No. 2
- 1964: Diagramme
- 1968: Mommy's Kiss
- 1976: Für Alina
- 1977: Variations for the Healing of Arinushka
- 1978: Spiegel im Spiegel (vn & pf, va & pf, vc & pf)
- 1980: Fratres (vn & pf)
- 1981: Tabula rasa (vn, va, string orch & prepared pf)
- 1984: Hymn to a Great City (2pf)
- 2002: Lamentate (pf & orch)
- 2003: Passacaglia (vn & pf)
- 2006: Für Anna Maria
- 2008: Pari intervallo (4-hand / 2pf)
- 2010: Ukuaru Waltz
- 2017: Mozart-Adagio (clarinet, vc & pf)
- 2019: Estonian Lullaby (vn & pf)
アルヴォ・ペルトの "tintinnabuli"(ティンティナブリ)は美しいのだが、自分で弾くのは難しいし(技術的には簡単そうでも…)、聴いていてもたまに眠くなってしまう…(^^;)。
で、初期のピアノ曲を聴いてみた。「現代音楽」の影響を受けた時期の作品であるが、個人的には、パルティータやソナチナは割と気に入った。特に「ソナチナ第1番」がいい ♪
YouTube にある音源ではこの演奏がいい ♪ 音源は下記の CD で、弾いているのは Ralph van Raat(ラルフ・ヴァン・ラート、1978〜)というオランダのピアニスト。
収録曲は下記。
- ソナチネ Op.1-1
- ソナチネ Op.1-2
- パルティータ Op.2 〔トッカーティナ/フゲッタ/ラルゲット/オスティナート〕
- アリヌシュカの回復による変奏曲
- アリーナのために
- アンア・マリアのために(世界初録音)
- ラメンターテ(ジョアン・ファレッタ指揮オランダ放送室内フィルハーモニー)
そして、ピアノ作品全集の音源があったので、これを聴くことにした。"Für Alina"、"Variations for the Healing of Arinushka"、"Spiegel im Spiegel"、"Für Anna Maria" あたりはいい ♪
元の CD は下記。
💿Arvo Pärt: Für Anna Maria(Complete Piano Music)
収録曲は下記。
- アリーナのために
- アリヌーシュカの癒しに基づく変奏曲
- ウクアル・ワルツ
- アンナ・マリアのために
- アリーナのために
- 断続する平行(2台ピアノ版)
- 偉大な都市への頌歌(2台ピアノ版)
- アンナ・マリアのために
- アリーナのために
- フラトレス(チェロとピアノ版)
- 鏡の中の鏡(チェロとピアノ版)
- 4つのやさしい舞曲
- ソナチネ第1番、第2番
- パルティータOp.2
- アリーナのために
ちなみに "Für Alina" のアリーナは、ペルト夫妻の親しい友人の娘さんの名前で、「鉄のカーテン」によりソ連在住の母親から引き離されて英国に居住していた。
"Variations for the Healing of Arinushka" は、娘さん Ariina の虫垂炎の手術からの回復を祈って作られた作品。
"Für Anna Maria" は、ペルト夫妻の友人の娘さんの 10歳の誕生日のために作られた。
それから、アルヴォ・ペルトの代表作である "Tabula Rasa" も聴いてみたが、これが素晴らしかった ♪ 今回聴いた中で一番かも知れない。二回続けて聴いてしまった ♪
ヴァイオリンとヴィオラの二重協奏曲(弦楽オーケストラ)であるが、プリペアド・ピアノも入っている。演奏者はギドン・クレーメルの名前しか書いてない。
最後に面白いものを見つけた。"Mozart-Adagio" という 2017年の作品である。クラリネット、チェロ、ピアノの三重奏で、そのピアノ・パートがモーツァルトのピアノソナタ ヘ長調 K.280 の第2楽章そのものになっている。
それに、クラリネットとチェロがいい感じでアンサンブルしている。まるで違和感がない…(^^)♪
あと、合唱曲にも定評があるのだが、それは次の機会にしたい…。
主な参考記事は下記。
✏️アルヴォ・ペルト(Wikipedia)
✏️List of compositions by Arvo Pärt(Wikipedia /英語)
✏️Arvo Pärt Centre(公式サイト)
✏️アルヴォ・ペルト(高松宮殿下記念世界文化賞 2014年受賞)
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