イギリスのオンライン音楽雑誌 "Bachtrack" に、演奏会の統計から 2022年のクラシック音楽界を概観する記事が載っていた。
自分のブログを検索すると、以前にも何度か見ている。記事を書いていた 2018年、2019年と昨年の「忙しかったピアニスト」ランキングをまとめるとこうなった(↓)。
ユジャ・ワン、トリフォノフは常に上位にいる。アンドラーシュ・シフもその次くらいで安定しているようだ。私の好みのピアニスト、例えば、イゴール・レヴィットとかヤン・リシエツキ、キリル・ゲルシュタインなどは トップテンの下半分くらい…(^^;)?
まぁ、この統計は欧米中心で大きめのコンサート(有名オーケストラや主要ホール)が中心なので、「古典芸能」的なクラシック界の様子だと思った方がいいだろう。
データとしては、2022年は 27,124 公演(コンサート 14,000、オペラ 9,000)で、2019年の 34,648 公演よりは少ないが、コロナ禍前に戻りつつあるようだ。
ちなみに、演奏回数の多かったピアノ協奏曲トップ10は下記。
- Ravel, Piano Concerto in G
- Rachmaninov, Piano Concerto no. 2 in Cm
- Schumann, Piano Concerto in Am
- Beethoven, Piano Concerto no. 4 in G
- Beethoven, Piano Concerto no. 5 in E♭
- Beethoven, Piano Concerto no. 3 in Cm
- Rachmaninov, Rhapsody on a theme of Paganini
- Rachmaninov, Piano Concerto no. 3 in Dm
- Tchaikovsky, Piano Concerto no. 1 in B♭m
- Brahms, Piano Concerto no. 1 in Dm
2022年の特徴として挙げられているのが、20世紀の作品の演奏回数が増えていること。
とくに、ラヴェル、リヒャルト・シュトラウス、マーラーが大きく順位を上げているようだ。ラヴェルの "La Valse" は 2022年に最も演奏された作品となった(2019年は 92位)。
ラヴェルの「ボレロ」も相変わらず人気だが 40位にとどまった。それに対しピアノ協奏曲ト長調は 12位と健闘した。
そして(嬉しいことに)、"contemporary composer"(存命中の作曲家)の作品も演奏回数が増えている。作品が 8回以上演奏された作曲家は 106人にのぼる。
2022年の(近年の?)特徴は、女性作曲家の作品の演奏機会が増えたこと。今回トップ20 の中に女性は 9人いるが、2019年には 1人だった。ちなみに、女性指揮者も増えている。
また、米国・英国の作曲家が多く、ドイツやフランスの作曲家は少数である。
昨年、《鍵盤音楽史:現代》プロジェクトで 57人の現代作曲家を聴いた私としては、トップ10 に知らない作曲家がいるのはほっておけない…という気持ちになってしまう…(^^;)。
名前を知っている人も含めて、ピアノ作品だけでもそのうち聴いてみようと思う。《鍵盤音楽史:現代》の 57人に入ってなかったのは次の 5名。
- John Williams(ジョン・ウィリアムズ)
- Jörg Widmann(ヨルグ・ヴィドマン)
- Anna Clyne(アンナ・クライン)
- Wolfgang Rihm(ヴォルフガング・リーム)
- Sir James MacMillan(ジェームス・マクミラン)
こういう記事を読むと、日本国内はどうなんだろう?…と考えてしまうのだが、残念ながら日本のこういうデータはほとんど目にしたことがない。
この記事の中にも 1カ所だけ日本のことが書いてあるのだが、
「日本でも 20世紀の作品の演奏機会が増えているが、Bachtrack がチェックしている公演はほんの少ししかないので、図やグラフからは省略してある」
…とそっけない…(^^;)。
日本のクラシック界が、世界的にももう少し存在感のあるものになるといいのだが…。
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