正確に言うと、クリストフォリがピアノフォルテを発明する18世紀以前は、歌などを現代ピアノ用にアレンジしたものなので、ピアノ曲ではなく音楽の歴史をピアノで辿ったもの、あるいはそういう新しい表現形式を創り出したと言えるかも知れない。
CDの紹介記事はコチラ→✏️Jeremy Denk c.1300-c.2000
2枚のCDに収められた曲は次の通り。
《CD1》
- マショー:『優しい恋人よ』
- バンショワ:『哀しきよろこび』
- オケゲム:『ミサ・プロラツィオーヌム(種々の比率のミサ曲)』より「キリエ」
- デュファイ:『気高く淑やかな心よ』
- ジョスカン・デ・プレ:『ミサ・パンジェ・リングァ』より「キリエ」
- クレマン・ジャヌカン:『すてきな遊び』
- バード:『マイ・レディ・ネヴェルス・ブック』より「ヴォランタリー」
- ジェズアルド:『ぼくの甘い宝よ』
- モンテヴェルディ:『西の風がもどり好天をもたらす』
- パーセル:『グラウンド ハ短調』
- D.スカルラッティ:『ソナタ 変ロ長調 KK.551』
- J.Sバッハ:『半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV 903』
《CD2》
- モーツァルト:『ピアノ・ソナタ第16番ハ長調 K.545』より第2楽章
- ベートーヴェン:『ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 Op.111-1』より第1楽章
- シューマン:『幻想小曲集 Op.12』より第5番「夜に」
- ショパン:『24の前奏曲 Op.28』より第1&2番
- ワーグナー(リスト編):『イゾルデの愛の死』
- ブラームス:『間奏曲 ロ短調 Op.119-1』
- シェーンベルク:『3つのピアノ小品Op.11』より第1曲「Massige viertel」
- ドビュッシー:『水の反映』
- ストラヴィンスキー:『ピアノ・ラグ・ミュージック』
- シュトックハウゼン:『ピアノ曲I』
- フィリップ・グラス:『エチュード第2番』
- リゲティ:『ピアノのための練習曲集第1巻』より第6曲「ワルシャワの秋」
- バンショワ:『哀しきよろこび』
昔の曲、とくに最初の 3曲くらいはとても穏やかで心が静かになるような曲だ。スカルラッティとバッハまではほとんど初めて聴く曲だが、とてもいい感じである。
CD2 は聴き慣れた曲が続くが、ストラヴィンスキー、シュトックハウゼンあたりから怪しくなってくる。耳慣れないだけでなく、耳に痛いというか心地よい響きではなくなる。
フィリップ・グラス、リゲティで少し「心地よさ」が戻ってきて、最後に昔の曲(CD1 の2曲目)に戻ったときにホッとする。このあたり、ゴルトベルクを意識している…?
アルバム全体としては、音楽の歴史(移り変わり)を音で感じとる楽しみもあるのだが、一方で、このアルバムを通して聴くと、ジェレミー・デンクがやりたかったことは音楽(ピアノ曲)の歴史を俯瞰することではなく、700年の音楽の流れの中から一つの組曲のようなものを紡ぎ出すことではなかったか?…とも思う。
ところで、ジェレミー・デンク(Jeremy Denk, 1970〜)というのは初めて知ったアメリカのジュリアード出身のピアニストだが、このアルバムはなかなか繊細でいい感じ…。私のお気に入りピアニストに入るかも…(^^)? まぁ、もう少し聴いてみないと…。
この「C.1300 - C.2000」は2019年の 2月に出たアルバムだが、それ以前にもいくつか話題になったCDを出しているようだ。
ベートーヴェンとリゲティを組み合わせたもの(2012年)。
Ligeti/Beethoven
バッハのゴルトベルク(2013年)。YouTube のアリア(↓)を聴く限りではいい感じ。
♪ Aria
J.S. Bach: Goldberg Variations
ところで、1300年から2000年までの音楽(ピアノ曲)を25曲ほど選んでアルバムを作れと言われたら(そんな場面はまずないだろうが…)、何を選びますか?
私なら、シューベルトとラヴェルは入れたい。でも1曲だけと言われると悩む…(^^;)。
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