ラヴェル作曲「クープランの墓」の〈メヌエット〉を練習している。曲についてもっと知ろうと思って、少し調べてみた。
「クープランの墓」作品概要
まず、この曲は「クープランその人というよりむしろ 18 世紀のフランスの音楽全体に捧げるオマージュ」(「自伝的素描」より)として構想されたが、第一次世界大戦により一旦中断される。
そして戦後、1914年から1917年の間に、戦死した友人たちへの追悼曲として作曲される。
「トンボー(Tombeau)」というのは「追悼曲」「故人を偲んで」といった意味合いなので、"Le Tombeau de Couperin" というタイトルは「クープラン時代の様式による追悼組曲」というのが正確なようだ。
「プレリュード」、「フーガ」、「フォルラーヌ」、「リゴドン」、「メヌエット」、「トッカータ」の6曲それぞれが、第一次世界大戦で戦死した友人たちへの思い出に捧げられている。ピアノ独奏曲としては、ラヴェル最後の作品である。
初版楽譜は1918年にデュラン社から出版されたが、その表紙(冒頭の図)はラヴェル自身によるものである。
初演はマルグリット・ロンによって1919年に行われた。彼女は、「トッカータ」を捧げられた音楽学者ジョゼフ・ドゥ・マルリアーヴの妻であった。
1919年に4曲を抜粋した管弦楽版が作曲者自身により作られた。
「メヌエット」について
いくつかの曲目解説を見ると、この「メヌエット」はラヴェルの中でも名曲の一つである、と書いてある。「優雅で気品溢れる優しい曲」「大変美しいラヴェルのメヌエットの傑作」などという表現がみられる。
3部形式の中間部、トリオにミュゼット(Musette)が挿入されているのが一つの特徴になっている。クープランはクラブサンのためのミュゼットを数多く作っており、通常のトリオの代わりにこれを挿入することで、バロック時代への憧憬を表したと考えられる。
ちなみに「ミュゼット」とは、フランスの地方の民族楽器で、ふいご式の風袋のついた一種のバグパイプである。18世紀フランスで「農民」の楽器として親しまれた。
また、ミュゼット(楽器)の響きを模した牧歌的な楽曲も「ミュゼット」と呼ばれ、クープランはクラヴサンのための「ミュゼット」を数多く残している。
弾いてみて感じるのは、伴奏部分などに現れる3拍子の2拍目の強調である。それと、旋律部分の動き(調性など)とは無関係に同じ音が繰り返される低音部も面白いと思う。
弾き方の参考
一番参考になるのは、なんといってもペルルミュテールの書き込みが入っている楽譜『ラヴェル・ピアノ曲集 VII: クープランの墓』である。
ペルルミュテールは、ラヴェル本人から様々な作曲者の意図や曲についての解釈に関する教えを受けたピアニストである。
その書き込みの最初(↓)には「右手:鍵盤の中でよく押さえて」「左手:しなやかに」「多彩な響きで」「引きずったように弾かない」などと書かれている。
また、いくつかの箇所で「オーボエ」とか「フルート」とか楽器の名前が、たぶん音のイメージとして書かれている。1/2ペダルとか弱音ペダルとか、ペダルも細かく指定してある。
そして、ペルルミュテールが弾いた音源(↓)が残されているのも嬉しい。上の楽譜を見ながら聴くととても参考になる。
また、管弦楽版の演奏(↓)も参考になる。弦とか管楽器なので、ピアノに比べて音がなだらかになるが、楽譜に書いてある「オーボエ」などの響き(イメージ)が分かって面白い。
おまけ:個人的感想
まだ練習を始めたばかりなので、とりあえず感じたことを少しだけ書いてみる。
「優雅で気品溢れる」曲にするためには、装飾音符をきれいに弾く必要があり、これが苦手な私としては練習のポイントの一つになる。
それと、ペルルミュテールの書き込みにある「多彩な響きで」「引きずったように弾かない」もなかなか難易度が高い。「追悼曲」なので、あまり軽やかになりすぎてもいけないのだろうし…。
Musette(ミュゼット)の部分は、分厚い和音になっているので、譜読み段階ではどうしても大きめのややアタックのきいた音になりがちである。
…が、演奏を聴くととても穏やかな音になっている。とくに、管弦楽版では木管が中心(金管や弦も加わるが)なので、じつに静かで雰囲気のある箇所なのだ。そのあとの ff まで盛り上がるところも難しそうだ。
この前半はさすがに弱音ペダルを使うしかないだろう、という気になりつつある。(実はこれまで、一度も使ったことがない…)
まぁ、その前に音符(楽譜)通りに弾けるようになることが先決なのだが…(^^;)♪
参考記事:
✏️クープランの墓(Wikipedia)
✏️ラヴェル :クープランの墓(PTNA)
✏️クープラン時代の様式による追悼組曲(音楽図鑑CLASSIC)
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