2016年10月14日金曜日

本「ようこそ! すばらしきオーケストラの世界へ」感想文 ♪

最近、ピアノ曲以外のクラシック音楽ももっと聴こうと思って、少しオーケストラ曲を聴き始めた。

といっても、とりあえずは NHK の「クラシック音楽館」などのオーケストラ曲をできるだけ聴くようにしているのと、気になった曲を YouTube で聴いているくらいであるが。

で、オーケストラのことをあまり知らないことに思い当たって、入門書(↓)を読んでみた。





ピアノとは直接関係ないので、記事を書くつもりはなかったのだが、ちょっと面白いことがあったのでメモ的な感想文を書いてみる。


一つ目は、指揮者のやっていることの説明にあった下記の部分。

「オーケストラというのは、一人ひとりが違う色を持った百色の絵の具のようなもの。指揮者は基本的な知識と技術のほかに、…4つの気質 - 思考、感情、感覚、直観 - を高いレベルで身につけ、それらに基づく数多くの表現の引き出しを使いながら、『演奏』という作品を仕上げていく。」

ここでなるほどと思ったのは4つの気質「思考、感情、感覚、直観」に「思考」が入っていること。そして、例えば「感情」にしても「高いレベルで身につけ」となっている点。


高橋アキさんの本『パルランド 私のピアノ人生』に、「知的なピアニスト」とか「知性」の話が出ていた(↓)が、音楽家にも「高いレベルの思考」とか「知性的な部分」は、やはり大事だと思う。


というか、ピアニストに対する私の好みがそうなのかもしれないが…。ピアノの演奏を聴きながら、どこかでその人の人格とか人間性を感じているような気がするのだ。


二つ目は、N響のコンサートマスターの篠崎史紀さん(マロさん)が、インタビューに答えて、コンサートマスターの条件の一つに「プロファイリングができること」をあげていること。

「(指揮者が)どこの出身で、母国語は何で、何カ国語くらい話せるのか、誰に就いて勉強し、どこでどんな仕事をしてきたか。それらを調べると、その指揮者が持ってくる音楽の90パーセントは分かります。」

「プロファイリング」というとスパイ映画とか犯罪捜査で聞く言葉のような気がしていたが、基本的には、ある人物の「プロフィール」を明らかにすること。なので、例えば、作曲家やピアニストのことを知りたいときに、いろいろ調べていることはプロファイリングと言える?


さらにそこから、そういうピアニストであればこういう演奏をするはずだ…と想像することまで含まれるのかも…。

で、例えばピアニストのプロファイリング?をするときに、重要な要素(ファクター、パラメーター)は何か、ということを意識すると、より的確にそのピアニストを理解できるかもしれないと思った。

例えば、「出身、母国語、師匠、仕事の経歴」などは、ピアニストでも同じだろう。それ以外に「レパートリー」(リサイタルの演目、CD録音した曲など)とか「専門分野?」(シフのバッハみたいな…)がありそうだ。

ピアニストのプロフィールでよく見かける「コンクール受賞歴」とか「共演したオーケストラ」とかはあまり参考にならないような気がするが、どうなんだろう…?


三つ目は、聴衆について。「いい演奏のためには聴衆が重要」というのはよく言われることだが、その内容は曖昧な気もしていた。次の言い方はなかなかいい感じだと思った。

「理解を超えたような演奏は、聴衆と一体になって生まれるんです。指揮者とオーケストラがうまくいっている空間を、聴衆が温めているんです。そういう聴衆が、奇跡的な演奏を生み出すときに絶対必要。」


以上は、この本の「主題」からはちょっと外れたところかもしれないが、オーケストラの解説や曲の紹介も、なかなか面白く書かれている。

楽器とかその編成とか舞台での並び方とか、そういうありきたりなものだけでなく、例えば、オーケストラに関わる人たちの仕事や生活や苦労なども具体的に書かれていて面白い。

コンサートマスター、首席奏者、副主席奏者、次席奏者とか、裏方さん(オーケストラ・マネージャー、パーソナル・マネージャー、インスペクター、ライブラリアン、ステージ・マネージャー)とか、理事長からチケット係まで…(その給与、採用方法、裏話的なことなどなど)。


曲の紹介で面白いと思ったのは、大音響が聴きたいなら、から始まって、この楽器のソロを楽しみたいなら、とか弦楽アンサンブルの響きを楽しみたいなら、とか楽しむポイントごとに紹介されていること。

とくに面白いと思ったのはソロ楽器のところ。

例えば、イングリッシュ・ホルンの美しいソロを楽しみたいなら…。1位は、もちろんドヴォルザークの「新世界交響曲」の第2楽章なのだが、ラヴェルのト長調ピアノ協奏曲の第2楽章が推薦されているのだ。ピアノではなくイングリッシュ・ホルンのソロ…。


同じように、ピアノ協奏曲なのに他の楽器が目立っている曲としては、ブラームスのピアノ協奏曲第2番の第3楽章のチェロがあるそうだ。

このチェロのソロはピアニストが手持ち無沙汰になるほど長く「おいおい、いい加減にしてよ」と思うらしい…。確認してみよう ♪


あと、ラヴェルの「ボレロ」はすべての楽器のソロが楽しめるという、ソロ楽器演奏を楽しむにはお得な曲とのこと。たしかに、同じフレーズを順番に演奏して行って、最後は全楽器という構成だったと思う。

ちなみに「ボレロ」で一番活躍するのは(大変なのは)最初から最後までリズムを刻んでいる小太鼓らしい。今度ナマで聴くことがあったら小太鼓にも耳を傾けて、終わったら小太鼓さんに拍手しようと思う…(^^)♪。



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