2016年10月17日月曜日

武満徹ピアノ作品に関するメモ・音源…

リタニ ― マイケル・ヴァイナーの追憶に ― [1950/1989]
Litany, in memory of Michael Vyner
Takemitsu - Litany - Rain Tree Sketch II (楽譜)
Litany Roger Woodward
10'00"
Adagio
Lento misterioso

PTNA
「1989年に書かれた《リタニ》は、1950年に作曲された武満の公の場へのデビュー作《二つのレント》(原譜は紛失された)を、記憶を頼りに書き起こされたものである。
 《二つのレント》の発表は、山根銀二により「音楽以前である」との酷評を得たことは有名である。拍節的な構造からは逸脱する独特な息づかいをもつ武満の音楽は、すでにこの頃から色濃く現われていた。だが明確な五音音階からなる旋律断片が所々に散りばめられているあたりは、最初期の作品に特有の響きである。これは戦前の作曲家からの影響と見ることができるだろう。また一方で、第二曲目の旋法的な要素や和音の扱いには、武満が早くから触れていたメシアンの音楽からの影響がしばしば指摘されている。
 第一曲、第二曲ともに重く、厳かな「死」のイメージに縁取られた音楽であるが、随所に柔らかく暖かな和音が響く。演奏には、旋律線のつながりを大切にすること、そして和音の響き、その鳴らしては消えゆく繊細な時の経過に耳を澄ますことが要求される。」


遮られない休息 [1952/1959]
Uninterrupted Rest
Toru Takemitsu - Pause Ininterrompue for Piano (1952-59) [Score-Video] (楽譜)
Uninterrupted rests, 3 poems on a text by Takiguchi Shuzo Roger Woodward
6'47"
Slowly, sadly and as if to converse with
Quietly and with a cruel reverberation
A song of love

PTNA
「滝口修造の同名の詩「遮られない休息」に基づいて作曲された。但し、作曲者自身が述べているように、この詩の描写というよりもむしろ、詩がもつ印象や感じに対する音を用いたアプローチに主眼がおかれている。

 第1曲目は1952年に作曲された。同年に園田高弘により初演されている。この曲の冒頭には、「ゆっくりと、悲しくそして対話を交わすかのように」という指示が付されている。そして、2部分構成の形をとっている。《遮られない休息》の中では、唯一といってよいほど、メロディーに近いラインが認められる。また、後半において冒頭の音楽が回帰する。

 第2曲目は1959年に作曲された。同年に笠間春子により初演されている。この曲の冒頭には、「静かに、残酷な響きで」という指示が付されている。「ppp」で開始し、静けさを基調として音楽が運ばれるが、そのような流れが時折、ピアノの打楽器的な打鍵の響きを強調するかのような強打音によって遮られる。そして、異なる音域においてこの2つの響きが並置されることの対比により、曲を閉じる。

 第3曲目は1959年に作曲された。同年に笠間春子により初演されている。そして、アルバン・ベルク(1885-1935)に捧げられたオマージュとなっている。前述の通り、2曲目とこの3曲目は同じ年に作曲されたが、前の曲と対照的な「愛の歌」という言葉が冒頭に書き添えられている。《遮られない休息》の中では、唯一小節線が引かれており、2分の3拍子で書かれている。わずか13小節から成るこの曲は、ベルクの絶筆となった《ヴァイオリン協奏曲》を想起させる分散和音により、静かに曲を閉じる。」


こどものためのピアノ小品[1978]
Piano Pieces for Children
Toru Takemitsu - Piano Pieces for Children
2'30"
微風  /  Breeze
雲  /  Clouds


ロマンス [1948-1949]
Romance
Toru Takemitsu - Romance for Piano (1948-49) [Score-Video] (楽譜)
4'00"


ピアノディスタンス [1961]
Piano Distance
Toru Takemitsu - Piano Distance for Piano (1961) [Score-Video] (楽譜)
Piano Distance Roger Woodward
5'00"

PTNA
友人・高橋悠治氏(作曲家・ピアニスト)の初リサイタルのために作曲された。「ピアノ・ディスタント」というタイトルに、特別の意味は込められていない。3秒ごとに五線が区切られ、各音に細やかな強弱記号、また表情記号が書き込まれている。その作風には、第2次ウィーン楽派、また「能」の時空間構成の影響を、色濃く見て取ることができる。

※楽譜にいろんな指示が書いてあって面白い。


フォー・アウェイ [1973]
For Away
Tōru Takemitsu: For Away (1973) Peter Serkin
For away Roger Woodward
8'00"


閉じた眼 ― 瀧口修造の追憶に ― [1979]
Lex yeux clos, In Memory of Shuzo Takiguchi
T. Takemitsu - Les Yeux clos (1979) Benoît Gagnon
Les yeux clos Roger Woodward
Takemitsu Les yeux clos Rika Zayasu(座安里佳)
7'00"


雨の樹素描 [1982]
Rain Tree Sketch
Peter Serkin plays Takemitsu's "Rain Tree Sketch"
Rain tree sketch Roger Woodward
3'00"

PTNA
1970年代の後半から、武満は「雨」や「海」といった水にまつわる言葉をタイトルにした作品を多く残している。形をもたない水にとって、「雨」や「海」は水にかりそめの形が与えられたものだと武満は捉えている。そして音楽もまた、形をもたない音に対し、作曲家がかりそめの形を与えたものなのであると彼は語る。一連の「雨」にまつわるタイトルには、このような武満の作曲に対する真摯な態度が、ユニークな形で示されていると言えよう。
 さほどテンポの速くない16分音符の両手の動きが、雨の雫を滴らせる木の葉を描写するかのようなフレーズで曲は始まる。3種類に書き分けられたアクセント、ペダリングの細かな指示が、うごめきを表現しつつも、極めて繊細で静謐な響きを作り出す。大きく分ければA―B―Aの形式をもつこの作品は、左右の手が微妙に不規則的にずれて奏でられる細かなパッセージと、深みのある和音の動きによって作られている。また、曲の中間部、そして終結部には、音が衰微する限界ぎりぎりまで伸ばし切るフェルマータが"dying away"(死に絶えるように)と注意書き付きで現われ、作品にたっぷりとした充実感を与えている。演奏者自身が、自分の出す音、そしてその音が消え入る様に耳を澄ますということ、その鍛錬として取り組むにふさわしい作品と言えるだろう。


閉じた眼II [1989]
Les yeux clos II
Tōru Takemitsu: Les yeux clos II (1988) Peter Serkin
7'00"


雨の樹素描II ― オリヴィエ・メシアンの追憶に ― [1992]
Rain Tree Sketch II, In Memoriam Olivier Messiaen
Takemitsu - Litany - Rain Tree Sketch II (楽譜)
5'00"


ピアニストのためのコロナ [1962]
Corona for pianist(s)
Toru Takemitsu-Corona For Pianists (Japan Live 1962) HD
Corona and crossing, live performance Roger Woodward

※図形楽譜(↓)このブログから借用




おまけ

武満徹・編 _高橋アキ・演奏「ゴールデン・スランバー」

武満徹(西村朗編曲):《さようなら》(1953/2001)
大井浩明(ピアノ)



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