(原田 英代 著、みすず書房、2014年7月)
※数字はページNo.
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第七章 響きで創造する
〔1 音楽のシンタクス〕
268
音楽家とは音楽という響きをもつ音による言語で会話する人種である。
〔2 生きている響き〕
272
(響きはロシア・ピアニズムの命)
それはたんに美しいといった表面的なものではなく、音楽が要求する内容を想像し、創造することによって生み出される、精神的な洞察の末に生まれたものであった。
273
昨今テクノロジーの発展により録音技術が高度化し、何でも同じように聴くことに慣れた私たちの耳は、音への感性が衰弱しはじめているのではないだろうか。
274
(ロシアの音楽学者)アサフィエフは、音楽とはたんなる響きではなく、「抑揚のつけられた意味による芸術」であると説いた。(イントネーション理論=言語における抑揚)
275(曲の分析前に響きを思い浮かべる)
277(倍音を響かせる)
共鳴しやすいタッチが必要である。それにはアタックをかけない打鍵がよい。…打鍵の瞬間に、手首や肘を一瞬固めることも避けなければならない。
278
(皮膚で感じる)鍵盤に触れる皮膚感覚 → 響きを身体全体の皮膚で感じる
(空間の芸術)
演奏は空間というキャンバスに描く時間芸術だ。鳴り響いた音は、空間に映像を浮かび上がらせる。響きの絵の具を使って、壁画を描くか、細密画を描くか、それは空間の大きさによって変わってくる。
279
(響きの残像)聴く人にも響きによる残像は残る
(演奏者と楽器の共振)
〔3 《無》の心から生まれでた音〕
280
エドヴィン・フィッシャー(1886-1960)
「技術と機械化が完全な発達をとげた今日の時代にあっては、ただたんに純粋にピアノ技巧的な意味で上手に演奏されたピアノ曲などというものは、もはやなんの意味も持っているものではありません。ただ、あなたの人格が、そこに創造的に参加するところの、精神的に体験された芸術のみが、ひとの心に呼びかけ、影響をあたえ、そして人格を高めるのです。あなたがたは何をおいても、自己自身へと到達せねばならないのです。」
完