『人生が深まるクラシック音楽入門』という本を読んだ。ピアノ曲以外のクラシック音楽も、もう少し聴いてみようと思ったからである。
伊東 乾 (著)、幻冬舎新書(2011/7/28)
これ(↓)が紹介文。
いくつかのツボを押さえるだけで無限に深く味わえるクラシックの世界。「西洋音楽の歴史」「楽器とホールの響きの秘密」「名指揮者・演奏家の素顔」などをやさしく解説。どんどん聴きたくなるリストつき。
著者は、作曲家=指揮者、ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督、東京大学大学院情報学環・作曲=指揮・情報詩学研究室准教授の伊東乾氏。第一回出光音楽賞を受賞し、「さよなら、サイレント・ネイビー」で第四回開高健ノンフィクション賞を受賞するなど活躍。以前、「なぜ猫は鏡を見ないか?」という本を読んだことがある。
さて、「どんどん聴きたくなるリストつき」という文言にひかれて読んだのだが、曲目紹介以外にも、ちょっと面白いと思ったこともあったので、抜き書きでご紹介する。
■ クラシックとポップス
クラシック音楽の魅力を、カバーする「人間の精神生活(心)」という面でとらえたところが面白い。なるほどと思った。
「音楽は心を入れる器です。演奏はその心を伝えなければただの『音出し』で、人の魂に響きません。」
「ポップスがカバーする範囲はおそらく人間の心全体の一割か二割程度で、射程が意外と短いのではないか…。…たとえば、災害のさなかにある人、悲しみのどん底にいる人、大切な人を失った人、そんな人たちの力になる音楽は、大半のポップスの射程より遠くにある。」
「(ポップスの多くは恋愛に関連しているが、)10代の若者なら、精神生活の7〜8割が恋愛で占められても不思議ではない。でも40代、50代、60代…歳を重ねるごとに、喜怒哀楽のフィールドは広がり、楽しいことも悲しいことも深まっていく。それが人生です。」
「クラシック音楽には、私たちの心を未来に向かわせるパワーがあるのです。…過去につくられたクラシック音楽が未来志向になる理由の一つは、オリジナル音源にとらわれない音楽であることにあります。…現代の演奏家によって新しい意味や価値が吹き込まれるのです。…その楽曲は永遠に未来に向かって開かれているのです。」
■ 床、壁、天井の響きまで含めて楽器の音
作曲家は、特に昔の巨匠たちの時代は、音楽が生で、ある特定のシチュエーション(場所、楽器、イベント、観客など)で演奏されることを前提として曲を作って来た。
「クラシック音楽の大半は、生演奏されることを前提に書かれた音楽ですから、その本質に触れるなら、…コンサートで聴くのが一番いい。」
「ドイツの教会や、この近江楽堂で、たとえばバッハの《無伴奏ヴァイオリンソナタ》を演奏すると、当然ながら残響や反射音が残ります。そしてバッハは、この残響を前提にして、音楽を作曲しているのです。…たとえば、低いバスの音を最初に弾く。そしてその残響に乗せるようにして、より高い音域のフレーズを演奏する。そうすることで、聴衆はその両方を一緒に耳にします。」
たしかに、ピアノのリサイタル(生演奏)でも、イヤホンで聴くのとはまったく違う体験であると感じることが多い。音の響きを身体全体で感じたり、目の前の空間に音が立ち上がり響きが漂うような感じは、生の演奏でしか感じることができないだろう。
それにしても、バッハの「無伴奏」曲における「残響」の話は目からウロコである。
■ どんどん聴きたくなるリスト:ピアノ編
巻末に「50年楽しめるリスニングガイド」(曲のリスト)が付いていて、これが役に立ちそうである。139曲もあってとても紹介しきれないので、ピアノ曲だけご紹介しておく。やはり、現代に近いところはあまり聴いていないなと、あらためて思った。
・バッハ:ゴールドベルク変奏曲
・ラモー:クラヴサン組曲
・モーツァルト:ピアノソナタ11番「トルコ行進曲付」
・ベートーヴェン:ピアノソナタ32番
・ショパン:24の前奏曲
・リスト:パガニーニによる大練習曲
・ドビュッシー:二つの前奏曲集
・ラヴェル:鏡
・バルトーク:ミクロコスモス
・メシアン:鳥のカタログ
・ノーノ:…苦悩に満ちながら晴朗な波…
・ブーレーズ:ソナタ3
・シュトックハウゼン:ピアノ曲X
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