連載「大人のピアノ練習法」
(7)「脱力」奏法の練習
ピアノの弾き方(奏法)で一番大切なこと、しかし難しいことは「脱力」である、とよく言われる。そして、大人になって、筋肉や体が硬くなってからピアノを始めた者にとってはさらに難しい。
しかし、上達するにはたぶん避けて通れない。ので、大人なりの練習法を考えてみた。実践して、少しずつではあるが進歩を感じている方法を3つほど書いてみる。
①「脱力」の内容を知る
②「脱力」パターンを練習する
③「脱力」練習用の曲をもつ
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①「脱力」の内容を知る
「脱力」奏法は、本来、身体で覚えるべきことである。しかし「大人のピアノ」では、子どもの頃から長い時間をかけて体得できるわけではないので、少し知恵も使いたいと思う。
まず、「脱力」とはどういうことか、を知っておく必要がある。当然だが、すべての力を抜いてしまってはしっかりした音を出せるわけがない。本などから得た知識と、ピアノの先生からのアドバイスなどを総合してみると、私の認識は下記のようになる。
* 基本は「重力奏法」、
腕の重さを効率よく指先から鍵盤に伝える弾き方
* 指先(とそれを支える指)はしっかりしておく
* 腕の重さを支えるのは手のひらに一番近い指関節
(第3関節と言われることもある)
* とくに脱力が必要なのは手首、次に腕、肩
「脱力」の仕組みを知るには下記の本が非常に参考になった。
≫『ピアニストの脳を科学する』
・鍵盤が底に着いてからは力を最小限にする=押さえ続けない
(プロは加えている時間が短く、押さえる力も素人の1/3)
・腕の後ろ側の伸ばす筋肉を使うより、腕の前側の筋肉を緩める
(腕の重力を支える筋肉:上腕二頭筋を緩めて落下させる)
②「脱力」パターンを練習する
最終的には、「曲の中で基本練習を行う〔連載(5) 大人のピアノ練習法〕」にも書いたように、曲の中で脱力を意識して練習する箇所を見つけるほうがいいと思う。しかし、基本のパターンもいくつかはマスターした方がよいと思われる。
〔2音~4音〕
・最初は2音(例えば「ドレ」「レミ」…など)で
2音目は手全体をふわっと脱力
・慣れてきたら3音、4音で
(例えば「ドレミファ(ふわっ)ソファミレ(ふわっ)」)
〔和音〕
・和音を弾いたあとすぐに力を抜く練習
(鍵盤が上がらないギリギリの力で)
・和音を押さえたまま、どれか1音だけを繰り返し打鍵する
(押さえたままのキーは最小限の力で、
繰り返すキーは弾いてすぐ脱力の繰り返し)
③「脱力」練習用の曲をもつ
無理なく、簡単に弾ける曲を選んで、それを毎回の練習の初めに「指馴らし」兼「脱力」練習として行うとよい。「脱力」は短期間で身につくものではないので、毎日少しずつやるのがいいと思う。
ポイントは「無理なく、簡単に弾ける曲」を選ぶことである。できれば、好きな曲で表現がつけやすい曲の方がいいと思う。私の場合、バッハの平均律第1巻第1番の「プレリュード」を使っている。
そして、弾き方としては「楽に」、「伸び伸びした音を出すように」意識をする。音量は最初は気にしない。全体を mf でもいい。十分に慣れてから強弱をつけたり、タッチを変えたり、という練習に進めばよい。
ちなみに、この練習方法は下記の本を参考にしたものである。
≫『からだで変わるピアノ』
・「弾き心地」に意識を向ける→良いのは「ラクに弾ける感覚」
・弾き心地を悪くする理由:実力不足、力の入れすぎ、無駄な動き
・簡単な曲で動きの経験を実感すること
以上、3点ほどあげたが、他にも練習方法は考えられると思う。自分に合った練習方法を見つけることも楽しみながらやりたい。
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