連載「大人のピアノ練習法」
(3)大人のピアノは何が違うか?
大人になってからピアノを学ぶ場合、子どもがピアノを習う場合と何が違うのだろう。その違いを考えることで、大人ならではの効果的・効率的な練習方法が見えてくるのではないかと思う。
まず、子どもは、
- 身体(手や指も)が柔軟性に富んでいる
- 成長期にあるため、練習すればするほどピアノ演奏に適した身体能力を身につけることができる
- 概して大人よりは感受性が豊かである
- 単純な練習でも楽しんで繰り返すことができる
- 簡単な曲に対しても思いを込めることができる
- 大人より格段に素直である
- 「時間」という貴重なリソースを持っている
といったことがいえると思う。これらのことは大人にはあまり期待できない。
しかし、逆に大人ならではの利点もあるのではないだろうか。
- 知恵がある(自分で考えながら、工夫しながら練習できる)
- 経験がある(多くの音楽・文学・芸術に接してきた)
- 音楽などの鑑賞のレベルは子どもより高く深い
- 学校教育で一通りは音楽の知識を持っている
- 本やインターネットで知識を得る能力がある(ピアノ奏法、指の解剖学的知識など)
- 音大やピアニストを目指すなどのプレッシャーはない
- 趣味なので「自由」である(どこまで仕上げるとか、どの曲をやるとか…、教本・教程とか)
いずれも、文末に「…はずである」とつけたい気もするが、まあ一応こんな感じだろう。
そこで一つのスタイルを提案したい。大人の趣味としての自分なりの「基準」を持つこと。それに加えて、大人なりに「素直」であること。この二つを基本としたスタイルである。
1.弾きたい曲(部分)だけを弾く
- 音階のための練習曲などはやらなくてもよい
- 曲の中の1つの楽章や一部だけでもよしとする(例:ショパンのバラード第2番の冒頭 Andantino の部分)
2.教本・教程にはこだわらない
- 音階、和音、アルペジオ等々の段階にはこだわらない
- 弾きたい曲の中で練習する(例:ショパンの遺作のイ短調ワルツで左手の和音練習)
3.仕上がりレベルは自分で判断する
- 発表会などの目標がなければ基本は「自己満足」
- 自分が気持ちよく弾ければよしとする
4.好きなピアニスト、好きな曲を持つ
- 聴くことを楽しむ(練習した曲はより楽しめる)
- 好きな演奏で、理想とする弾き方やイメージを持つ
5.周辺の楽しみも持つ
- 知的楽しみ:読書、知ること(例:ピアノの歴史やブランド、調律の話、ショパンの伝記など)
- 同好の仲間との会話やピアノに関するイベント(例:ラ・フォル・ジュルネやスタインウェイの試弾会)
基本は「楽しむこと」だと思うので、このスタイルは選択肢の一つでしかない。音楽的な好みや技術レベルも人それぞれである。大人なので、最後は自分の判断で、自分なりの楽しみ方を見つけること、だと思う。
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