連載「大人のピアノ練習法」
(5)曲の中で基本練習を行う
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第3回の「大人のピアノは何が違うか?」で、「教本・教程にはこだわらない」と書いた。しかし、音階、和音、アルペジオなどの基本の練習は必要である。
その類の教本はたくさんあるので、それを使った練習をするのが王道である。それが苦にならない人には、そういう練習曲を使ったほうがいいと思われる。
しかし、なかなかうまく弾けない各種(調性・パターン)の音階を反復練習するのは、苦痛に感じる大人の方も多いのではないだろうか。(少なくとも私自身はなかなかできない…)
そこで、「曲の中で基本練習を行う」ことにした。(実は、基本練習を行わざるを得ない、というのが正直なところであるが…)
これまでの具体例をいくつかあげてみる。
・音階練習
モーツァルト:ソナタ第15番 K.545 第1楽章
・和音練習
ベートーヴェン:ソナタ第8番「悲愴」 第2楽章
ショパン:ワルツ イ短調(遺作)
ショパン:プレリュード「雨だれ」
・ポリリズム(2:3)
ベートーヴェン:ソナタ第8番「悲愴」 第2楽章、第3楽章
(※各楽章の最後の方に少しだけあるが、大事な箇所だ)
・装飾音符
ベートーヴェン:ソナタ第8番「悲愴」 第2楽章、第3楽章
ショパン:ワルツ イ短調(遺作)
ひとつには、曲を仕上げるための関門(課題)という側面もあり、そこをクリアするための部分練習でもある。しかし、それを前向きにとらえて、基本技術を獲得するための練習と位置づけるわけである。
場合によっては、関連する練習曲を引っ張り出して補助的に練習したり、自分で簡単な練習パターンを作って練習したりする。例えば、2:3のポリリズム(8分音符2つ:3連符)のときは、簡単な練習曲を勝手に作って、慣れるまでひたすら練習した。
和音の練習で非常にいいと思うのは、ショパンの「雨だれ」の中間部分である。難しい和音の練習方法に、「全部の音を押さえて脱力した状態で、いくつかの指だけ反復打鍵する」というものがある。「雨だれ」の中間部分はまさにそのパターンになっている。しかも音楽的に優れている。
ちなみに、モーツァルトやベートーヴェンのソナタはこのような練習方法に最適なのでは、と思っている。そうはいっても、なかなか弾ける曲はないのだが。
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