最初にトッカータについて『バッハの鍵盤音楽』から少し引用。
バッハのクラヴィーア用トッカータは 7曲あり、初期作品の中で一つの頂点をなしている。ただ、この 7曲はバッハ自身によってまとめられたという事実はない。20以上の手稿譜で伝えられているが、全曲を含むものはない。
バッハにとって「トッカータ」は、多様な部分を含む楽曲といった意味合いと思われる。その各部分(とくにフーガ)はもともと個別に作られた可能性もある。寄せ集めだとしても、それぞれが独特な構成を持つ優れた作品であることに変わりはない。
アルンシュタット時代の末期からヴァイマル初期の1706年から1709年頃の作品と考えられている。
BWV910 は、トッカータ風導入部、アリオーゾ風アダージョ、第1フーガ、そしてレチタティーヴォ風の推移部を経て第2(終結)フーガという構成になっている。
第1フーガは "Presto e Staccato"(急速に、切り離して)という指示が付いている。
第2フーガ(↓ 135小節目〜)はこの曲のクライマックス。6/8 で書かれているがシャコンヌである。半音階的な主題(ヘクサコルド= 4音音階)が使われており、とても印象的なフーガとなっている。
グールドが録音を残しているので、最初に聴いてみたが、この曲に関しては何だか物足りない印象…。曲のせいなのか演奏のせいなのか?…よく分からない。
クレア・フアンチ(Claire Huangci、米、1990 - )が 2021年に "Bach: Toccatas" というアルバムを出していているのを見つけた。7つの「トッカータ」と有名な「トッカータとフーガ」BWV565(ブゾーニ編曲)が入っている。これがなかなかいい感じだった ♪
♪ Bach: Toccatas:アルバム
(BWV910 はトラックNo.18 - 20)
元の CD はこれ(↓)。
あと、初めて聞く名前の女性ピアニスト、ナタリア・ミルスタイン(Nathalia Milstein、仏、1995 - )という人の演奏動画もあったので聴いてみた。こちらも悪くない。
調べてみると、この人は Geneva Haute Ecole de Musique(ジュネーヴ州立高等音楽院)で、ネルソン・ゲルナーに師事。アンドラーシュ・シフの指導も受けたことがあるようだ。
チェンバロは、Pieter-Jan Belder という人の演奏を聴いた。
なお、『バッハの鍵盤音楽』の第7章「トッカータ」に含まれる作品は下記。
- BWV910 トッカータ 嬰ヘ短調
- BWV911 トッカータ ハ短調
- BWV912 トッカータ ニ長調
- BWV913 トッカータ ニ短調
- BWV914 トッカータ ホ短調
- BWV915 トッカータ ト短調
- BWV916 トッカータ ト長調
📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)
✏️バッハ :トッカータ 嬰ヘ短調 BWV 910(PTNAピアノ曲事典)
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