有名な曲なので多くのピアニストが弾いている。お気に入り一つを選ぶのは無理…(^^;)。
「半音階的」というのは主に幻想曲のことだろうが、フーガ(↓)の主題も半音階の要素を含んでいる。ただ、幻想曲とフーガは元々別に存在していたという説もあるようだ。
『バッハの鍵盤音楽』の著者、シューレンバーグは、この作品は「ロマン的であってバロック的ではなく、厳格に構築されているというよりは即興的」でバッハ的でないと書いている。
当時から有名な作品で資料も多く、自筆譜も残ってないことから、色んな校訂・改訂で議論の多い作品でもある。
例えば、フリーデマン・バッハによる強弱記号、アーティキュレーション、装飾が入っているものがあったり、「ロマン化されたハンス・フォン・ビューロー編の悪名高いピアノ譜」などもあったりする。ベートーヴェンも 1810年に筆写を行なっている。
未だ「真の批判校訂譜」はなく、ダーデルセン編のヘンレ版(コレかな?)が現時点で「満足すべき原典版」である…というのがシューレンバーグ氏の見解。
有名な曲だけに古くから多くのピアニストが取り上げている。ちなみに、メンデルスゾーン、タールベルク、リスト、ブラームスなどが演奏した記録が残っているそうだ。
幻想曲後半のレチタティーヴォ(↓:バッハによる指示)やその少し前の「和音+ arpeggio 指定」をピアニストがどう弾くか(解釈するか)というのも興味深い。
10人近くのピアニストを聴いたが、それぞれに特徴があって面白い。個人的に気に入った演奏をいくつか挙げてみる。
「順不同」のつもりだが、あえて挙げるとグールドの演奏はとても惹かれるものがあった。彼の表現する音楽的内容が私の感性にピタリと当てはまる感じがした。それだけに、フーガも録音して欲しかった…。
ブレンデルのタッチの多彩さ・豊かさは素晴らしい。レオン・フライシャーは正統派。レヴィットは音が美しいが、やや淡白に聴こえるくらい簡単そうに弾いてしまう。亀井くんはややコンクール向きの演奏という感じもするが、いい感じで頑張っていると思う。
グレン・グールド(Glenn Gould、カナダ、1932 - 1982)
「BWV 903a」は 1720年頃の成立と推定される幻想曲の異稿。演奏動画(↓)もある。
アルフレート・ブレンデル(Alfred Brendel、チェコ、1931 - )
レオン・フライシャー(Leon Fleisher、米、1928 - 2020)
イゴール・レヴィット(Igor Levit、ロシア、1987 - )
♪ Fantasia:アルバム
(BWV903:トラックNo. 2〜3)
亀井 聖矢
チェンバロでは、BWV894 で見つけたマルコ・メンコボーニ(Marco Mencoboni、伊、1961 - )の演奏が良かった。
- BWV904 幻想曲とフーガ イ短調
- BWV944 フーガ イ短調
- BWV894 前奏曲とフーガ イ短調
- BWV903 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
- BWV906 幻想曲とフーガ ハ短調
📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)
✏️バッハ :半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV 903(PTNAピアノ曲事典)
✏️半音階的幻想曲とフーガ(Wikipedia)
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