『ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帳』(以下「WFB音楽帳」)は、1720年1月22日、J.S.バッハの長男、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(当時 9歳 2カ月)の教育のために書き始められたもの。
J.S.バッハが作曲した小曲やテレマンなどの作品(の一部)などが教材として書かれており、W.F.バッハが作曲の勉強のために作ったと思われる曲も含まれている。
バッハの作品としてまとまったものとしては、平均律曲集第1巻の前奏曲の初期稿 11曲、インヴェンション 15曲、シンフォニア 15曲が入っている。
「WFB音楽帳」の内容はおおよそ次の通り。
- 音名の一覧表、装飾音の記号と説明など
- 一群の単純な曲:前奏曲、コラール2曲を含む
- 前奏曲11曲(平均律第1巻に収録された)
- インヴェンション(プレアンブルム)15曲
- シンフォニア(ファンタジア)15曲
『バッハの鍵盤音楽』の第10章「『ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帳』と関連作品」に含まれる作品は多岐にわたるので、以下の順番で見ていく。なお、平均律第1巻に収録された前奏曲11曲(初期稿)については平均律の章でとり上げる。
- 一群の単純な曲から(1)
- BWV994 運指練習曲(アプリカツィオ)
- BWV691、BWV753 コラール前奏曲
- BWV841〜843 メヌエット
- BWV953, 952 フーガ ハ長調
- 一群の単純な曲から(2):小前奏曲
- 「12の小前奏曲」BWV924, 939 等
- 「6つの小前奏曲」BWV933〜938
- その他
- 関連作品(「WFB音楽帳」には含まれない)
- BWV919 前奏曲 [幻想曲] ハ短調
- BWV961 フーガ(フゲッタ)ハ短調
- BWV918 ロンドーによる幻想曲
- BWV899〜902 前奏曲とフーガ/フゲッタ
- BWV895 前奏曲とフーガ イ短調
- BWV923 前奏曲 ロ短調
- BWV590 パストレッラ
- BWV991 アリアと変奏 ハ短調
- BWV772〜786 インヴェンション
- BWV787〜801 シンフォニア
「一群の単純な曲」や「関連楽曲」については教育用の小曲がほとんどなので、音楽鑑賞として気に入った演奏を探すというよりは、どんな曲か知るための音源を聴いていく。
気に入った作品や演奏があれば、それは個別に取り上げるかも知れない。
最初に「WFB音楽帳」全体(全曲とは限らない)を対象としたアルバムと YouTube で聴ける音源を挙げておく。
(ピアノ:Wolfgang Rubsam)
(クラヴィコード:Yuan Sheng)
なお、楽譜もベーレンライター社などから出ている。
今日は「一群の単純な曲から(1)」の 8曲ほどを聴いてみる。
まずは BWV994 運指練習曲(アプリカツィオ)。バッハが指使いを記入している。「3434」「1212」など当時の指使いがちょっと面白い ♪
次はコラール前奏曲の BWV691 と BWV753(断片)。
このピアノ演奏(↓)はちょっといい ♪ 他のコラール前奏曲も 2つ弾いている。
オランダ・バッハ協会にはオルガン(Dorien Schouten)の音源がある。
BWV753 のピアノ演奏。断片なので最後は唐突に終わる。
メヌエット 3曲 BWV841〜843 は上にあげたリュプザムのアルバムに入っている。
(BWV841〜843:トラックNo. 3〜5)
ハ長調のフーガ 2つ。BWV953 は「WFB音楽帳」に入っているが、BWV952 はそれと似たフーガとして紹介されている。
BWV953 のピアノ演奏。
チェンバロでは有名なピエール・アンタイ(Pierre Hantaï、仏、1964 - )が弾いたものがオランダ・バッハ協会の音源にある。
BWV952 は何とグレン・グールドが弾いていた ♪
小前奏曲なども一緒に録音しているアルバム(↓)があるので、ちょっと楽しみ…(^^)♪
あと、Varvara Miagkova(露、1980 - )という女性ピアニストの素晴らしい演奏も見つけた。この人は、ロシアの児童合唱団の指揮者兼ピアニストらしいのだが、いくつかバッハの小曲を演奏していたりする。
…というので、気になる曲ということで楽譜(冒頭)を載せておく。
📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)
✏️《ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帖》全体構成(PTNA)
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