初めて聴いたが、私のバッハのイメージと少し違う。でも、名曲かも…。
この幻想曲は、両手の分散和音動機がX字型を描くきわめて魅力的な主題を持つソナタ形式の作品である。また、途中手の交差する部分が登場する(フーガにも)。
作曲の意図は不明だが、「平均律曲集第2巻」に入れるつもりだったのでは?とか、1727年出版の「パルティータ ハ短調」の冒頭楽章だったのでは?などとも推測されている。
この作品のフーガ(↓)は途中 48小節目の 1拍目で途切れている。残された筆写譜が浄書譜である可能性が高いため、バッハは何らかの形でこの作品を完成させていたのではないか…と考えられている。フーガを含めての演奏は多くない。
補筆完成させた人もいるようだ。エドワード・T・コーン(E.T.Cone 1974)、パブロ・エスカンデ(Pablo Escande、アルゼンチン、1971 - )など。また、『バッハの鍵盤音楽』の中にも筆者自身の「補筆完成の案」が 44小節ほどの楽譜として掲載されている。
意外に?多くのピアニストが取り上げている。ほとんどが「幻想曲」だけの演奏。フーガまで弾いているのは、カツァリス、コロリオフとチェンバロの鈴木優人。
主題の特徴である「下降アルペジオ」とその直後の「トリル」は、ピアニストによって弾き方にかなり違いがある。
聴き手の勝手な感想としては、こちらの期待(これ自体はっきりしている訳ではないが…)通りに弾いてくれる弾き手はあまり多くない。解釈が難しい(or 解釈の幅が広い)曲なのかも…?
10人近くの演奏を聴き比べて、どの演奏も魅力的なのだが、ニコラーエワの落ち着いた正統派とも言える演奏と、リヒテルの流れるような(ロマン派作品を弾いているような?)情感あふれる演奏と、どちらを選ぶか迷うところだ。選ぶ必要はないのだけれど…(^^;)。
グールドの、遅すぎるかも?と思うテンポの演奏も、聴いているうちに妙に納得してしまうところがあって面白い…(^^;)。
全般的に昔のピアニストの方が私の好みに合っているようだ。最近のピアニストでは、コロリオフとカツァリスが良かった。
スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter、露、1915 - 1997)
グレン・グールド(Glenn Gould、カナダ、1932 - 1982)
アリシア・デ・ラローチャ(Alicia de Larrocha、スペイン、1923 - 2009)
エフゲニー・コロリオフ(Evgeni Koroliov、露、1949 - )
シプリアン・カツァリス(Cyprien Katsaris、仏、1951 - )
(BWV906:トラックNo.1〜2)
チェンバロは、ジャン・ロンドー(Jean Rondeau、仏、1991 - )の疾走する演奏がいい。ちょっと速すぎるかもしれないが…(^^;)?
オランダ・バッハ協会の音源では鈴木優人さんが登場。使用楽器は "Willem Kroesbergen, Utrecht 1987 after J. Couchet"。フーガも弾いている。
この解説動画(↓)で、バッハがフーガの途中で筆を止めたのは「意図的なのでは?」という見解を述べておられる。
それから、パブロ・エスカンデが補筆完成させたフーガを含むものを三橋桜子さん(チェンバロ)が録音している。
- BWV904 幻想曲とフーガ イ短調
- BWV944 フーガ イ短調
- BWV894 前奏曲とフーガ イ短調
- BWV903 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
- BWV906 幻想曲とフーガ ハ短調
📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)
✏️バッハ :幻想曲とフーガ ハ短調 BWV 906(PTNAピアノ曲事典)
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