…のだが、調べて行くうちに、シチェドリンとかザデラツキーとか、さらにチェルニーとか、「24の前奏曲とフーガ」を作った作曲家の名前が次々に出てくる。そのほとんどが、初めて聞く名前だが…(^^;)。
さて、歴代の?「24の前奏曲とフーガ」、いくつあるでしょう?
以下、作曲年順に並べてみた。個人的な感想(印象)は一部を聴いてみただけのものなので、あくまでご参考までに。なにせ、24組聴くと 1〜2時間かかかってしまう…(^^;)。
- 1722, 1742 J.S.バッハ(ドイツ)
- 1857 チェルニー(オーストリア)
- 1934 ザデラツキー(ウクライナ)
- 1952 ショスタコーヴィチ(ロシア)
- 1964-70 シチェドリン(ロシア)
- 1967-71 ポルトラツキー(ジョージア)
- 1980-81 原 博(日本)
- 1994 スロニムスキー(ロシア)
- 1996 マドセン(ノルウェー)
- 1997 カプースチン(ウクライナ)
1. J.S.バッハ(ドイツ)
まずは、「24の前奏曲とフーガ」を 2セット完成させた J.S.バッハ。「平均律クラヴィーア曲集」の 第1巻(1722年)と第2巻(1742年)。
有名なピアニストがたくさん弾いているので、あえて音源は挙げないでおく。
2. カール・チェルニー(オーストリア)
ピアノ教本で有名なチェルニーも「24の前奏曲とフーガ」を作っている。ただ、タイトルは「48の前奏曲とフーガ」(内容は 24組の「前奏曲+フーガ」)となっている。
チェルニーが亡くなった年(1857)に作曲し、愛弟子リストに献呈した遺作で、練習曲として出版された。2012年に神谷郁代さんが、ウィーン楽友協会の協力のもとで世界初録音した CD(↓)が 2013年にリリースされている。
前奏曲にちょっといい感じのものもあるので、一度弾いてみてもいいかも…。
20世紀に入ると旧ソ連圏の作曲家が次々と「24の前奏曲とフーガ」を書いている。
3. フセヴォロド・ザデラツキー(ウクライナ)
ザデラツキー(Vsevolod Zaderatsky、1891-1953)は、生没年がプロコフィエフと同じ。モスクワ音楽院で作曲をタネーエフとイッポリト・イワノフに学んだが、ロシア革命とスターリンの抑圧に苛まれ、何度も投獄されるなど過酷な生涯を送った。
1926年の逮捕の際に、彼の作品は全て破棄されてしまった。しかし、獄中で紙と鉛筆を与えられ、6つのピアノソナタ、交響曲、オペラなどかなりの作品を作曲している。「24の前奏曲とフーガ」もこの時期1934年の作品。
2008年に「24の前奏曲とフーガ」の世界初録音をしたのはロシアのピアニスト&音楽学者のヤーシャ・ネムツォフ。
2017年(録音は 2016年)には、ルーカス・ゲニューシャス、アンドレイ・ググニン、ニキタ・ムウドヤンツ、クセーニヤ・バシュメット、ユーリ・ファヴォリン、アンドレイ・ヤロシンスキーという、モスクワ音楽院出身の若手ピアニスト 6人が 4曲ずつ分担して弾いた CD が出ている(↓)。この演奏はなかなか素晴らしいと思う ♪
YouTube にプレイリストがある。聴き応えのある曲が多い。
4. ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(ロシア)
「24の前奏曲とフーガ」で検索すると一番目に出てくる(バッハは「平均律」という名前なのでヒットしない…)ほど有名。…なのだが、《鍵盤音楽史:現代》の記事(↓)にも少し書いたように、個人的にはあまり好きではない…(^^;)。
初演したニコラーエワの演奏(↓)。
5. ロディオン・シチェドリン(ロシア)
ロディオン・シチェドリン(Rodion Shchedrin、1932年12月16日 - )は、旧ソ連の指導的な作曲家の一人。「24の前奏曲とフーガ」は、第1巻(1964年)と第2巻(1970年)に 12曲ずつ分けられている。
わずかに現代音楽風な印象もあるが、何となく中途半端?
6. ヴィクトル・ポルトラツキー(ジョージア)
ヴィクトル・ポルトラツキー(Victor Poltoratsky、1949-1985)はロシア貴族の末裔としてグルジアのトビリシに生まれた作曲家・ピアニスト。
モスクワ中央音楽学校とモスクワ音楽院で学んだ後、1968年にデビューしたが、コンサート・ツアー中、ブダペストで36歳の若さで急死した。「24の前奏曲とフーガ」は、モスクワ学院在学中の作品。
この CD(↓)は、ニキータ・ムンドヤンツとその生徒たち11人(アルセニー・タラセヴィチ=ニコラーエフなど)のピアニストが数曲ずつを担当したもの。
✏️ポルトラツキー/ピアノのための24の前奏曲とフーガ(ライモンダCD)
この CD のプレイリストは下記。各曲は短いが、ときおり光るものを感じる。
7. 原 博(日本)
日本にも「24の前奏曲とフーガ」を形にした作曲家がいた。当時の評判はあまり芳しくなかったようだが…。
北川暁子さんの録音があるようだ。下記サイトで試聴できる。
✏️原博:24の前奏曲とフーガ(OTOTOY)
なお、楽譜は全音から出版されている。→『原 博:ピアノのための24の前奏曲とフーガ』
8. セルゲイ・スロニムスキー(ロシア)
セルゲイ・スロニムスキー(Sergei Slonimsky、1932-2020)は、ロシアの作曲家・ピアニスト・音楽学者。
YouTube にある音源は、演奏のせいか?あまり面白いとは思わない。
ピアノ:Yury Popov
9. トリグヴェ・マドセン(ノルウェー)
トリグヴェ・マドセン(Trygve Madsen、1940-)はノルウェーの作曲家&ピアニスト。ホルン協奏曲とかオーボエ協奏曲、チューバ協奏曲とかがあるので、管楽器奏者には有名なのかも?
YouTube に CD のプレイリストがあったので聴いてみたが、なかなかいい ♪ 今回初めて聴いた中では一番好きな作品・演奏かも。ピアニストはノルウェーのイェンス・ハーラル・ブラトリ(Jens Harald Bratlie、1948-)という人。
♪ Trygve Madsen: 24 Preludes & Fugues(プレイリスト)
10. ニコライ・カプースチン(ウクライナ)
カプースチンは《鍵盤音楽史:現代》で聴いたばかりなので、その記事と、その中で聴いた音源をご紹介するだけにしたい(↓)。
アンソニー・バージェス(Anthony Burgess、1917-1993)というイギリスの小説家が作った "The Bad-Tempered Electronic Keyboard - 24 Preludes and Fugues" という作品。
「調律の良くないエレクトロニック・キーボードのための『24の前奏曲とフーガ』」(1985)という訳がついている。もちろん、バッハの "well-tempered" をもじったもの。
バージェスは「スタンリー・キューブリックが映画化した近未来的小説『時計仕掛けのオレンジ』の原作者」と言った方が分かる人も多いかも知れない…。
CD も出ていて、YouTube にプレイリストもあるので、興味ある方はどうぞ ♪ 弾いているのはステファヌ・ギンズブルク(Stephane Ginsburgh)という人で、楽器はアコースティックの(多分ちゃんと調律された…(^^;)…)グランドピアノだそうだ ♪
でも、今日は疲れてきたので、それについては稿を改めて…。まぁ、書く元気があれば…ということで…(^^;)。
最後に、第一印象に基づく「ベスト5」でも書いておくことにしよう ♪(聴きかじっただけの第一印象なのでかなりテキトーです…(^^;)…)
- J.S.バッハ
- ニコライ・カプースチン
- トリグヴェ・マドセン
- フセヴォロド・ザデラツキー
- ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
2 件のコメント:
ぴあのピアノ♪様
初めまして。24前奏曲とフーガを検索してましたら偶然にも辿り着きました。博識でいらっしゃるブログで尊敬申し上げます。少しずつ拝見させて頂きます。芥川也寸志さんの24前奏曲とフーガを練習しているところです。下手過ぎて、もうプロの演奏を聴く側に徹しようかと思うところです…
天才作曲家と天才ピアニストの演奏を全部聴くにも時間は有限!聴き比べると様々興味深く楽しみです。苦悩や嫌な事から逃れる佳い時間です。
ゲオルギー ムシェリ?さんの24前奏曲とフーガ 楽譜探し中…弾けないけれど。作編曲家を目指す方々は、若い頃から24全調の習作をなさるのでしょうね。優秀な頭脳と感性豊かでないと出来ない事と憧れしかないです。
コメント、ありがとうございます ♪
お褒めの言葉を戴き恐縮しております。とても「博識」などではなく、10年ほど前に定年後の趣味でピアノを始めてから、ピアノ曲や作曲家、ピアニストをあまりに知らなかったので、ネットで色々調べたことを記事にしているだけです…(^^;)。今でも現代作曲家などはまだよく分かりません…。
ゲオルギー・ムシェリという名前も初めて聞きました。ネットにはあまり情報がないようですね。「24の前奏曲とフーガ」が入ってそうな楽譜は "Piano Rare Scores" というサイトにありましたが、お探しのものかどうか分かりません。一応、URLをコピペしておきます→ https://www.pianorarescores.com/archive/georgi-alexandrowitsch-muschel-piano-sheet-music/
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