2022年8月28日日曜日

「24の前奏曲とフーガ」の並び順の謎&バッハは「平均律」ではなかった?

「24の前奏曲とフーガ」を書いた作曲家を調べているときに、全 24調の並び順が作曲家によって違っている…ということを知った。


何となく J.S.バッハの順番にならっているのでは?…と思っていたのでちょっと意外だった。それぞれの作曲家に何らかの意図があるのだろうか?




上の表は、バッハ、チェルニー、ハノン(参考)、ショスタコーヴィチ、カプースチンの 24曲の調を並べてみたもの。

ハノンは 39番のスケール練習で、いま親しんでいるので参考までに並べてみた。


バッハはご存知の通り、ド(C)を主音とする長調(ハ長調)と短調(ハ短調)から、主音が半音ずつ上がっていく。

これに対して、チェルニーはハ長調とその平行調であるイ短調をセットとして、♭を一つずつ増やしていき、♭6個の変ト長調 / 変ホ短調(=♯6個の嬰ヘ長調 / 嬰ニ短調)に達すると、♯を一つずつ減らしていって、ト長調 / ホ短調で終わる並びとなっている。

これはハノンのスケール練習と同じ並びである。さらには「五度圏」を左回りにたどる順番になっている。
ちなみに、個人的にはこの「五度圏」に代表される「調」が苦手なので、分かりやすい絵をお借りするついでに、この記事(↓)で勉強させて戴いた…(^^;)。

✏️五度圏の使い方【わかりやすい音楽理論】(dn-voice.info)


ハノンとチェルニーが同じ並びというのは、ピアノの基礎練習には「五度圏」の順番が合っているのかな?…と勝手に想像したりしてしまった…(^^;)。

で、ショスタコーヴィチであるが、この並びも「五度圏」である。ただし、左回りではなく右回り。つまり、C / Am から♯が一つずつ増えていって、後半で♭が一つずつ減っていく…という並びになっている。

実はこの並び順には前例があって、ショパンの「24の前奏曲 Op.28」が同じ「五度圏右回り」の順番になっている。

今回は「前奏曲とフーガ」ということで探索したのだが、「全 24調」の曲集には、「前奏曲」や「練習曲」といったものも沢山ある。


そして、カプースチンである。「C / G#m → F / C#m → B♭ / F#m → …」という並びなのだが、これは謎だ。長調と短調とそれぞれに「五度圏」を回っているような気もするが、ハ長調と嬰ト短調はどんな関係なのだろう?

ジャズに関係しているのかと思って調べていると、こんな記事(↓)を見つけた。


この記事にはこんなこと(↓)が書いてある。中身はよく分からない…(^^;)…が、ジャズではハ長調と変イ短調(嬰ト短調)とは縁が深いようだ…。

「ジャズの場合には、借用和音を頻繁に使い、ハ長調の曲に短調から借りてきた音を好んで使います」

「特に属和音のG7コードでは、変イ短調(key=A♭m)の旋律的短音階から派生したオルタードスケールが頻繁に使われるようです」


ところで、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」であるが、実はバッハが弾いていた楽器は「平均律」ではなかったそうだ。

原題も "Well-Tempered Clavier" なので「よく調律された鍵盤楽器」ほどの意味となる。「平均律」はある意味「誤訳」なのだが、いまさら変えるわけにもいかないだろう…。

さらに、バッハは自分で調律までやっていたようなのだ!その調律法は「平均律」ではなく「調整音律」と言われるものだったのではないかと推測されている。



ちなみに、平均律に調律されたピアノが市販されるようになったのは意外と遅く、1846年のブロードウッドが最初だそうだ。ただし、ピッチは "A= 455 Hz" だったと思われる。


最初に興味を持つきっかけとなった記事はこれ(↓)。

✏️作曲家はなぜ「24の前奏曲」に惹かれてきたのか 特別寄稿:野平一郎(東京・春・音楽祭)

それと『名曲ミステリーゾーン: 謎解きアナリーゼ』という本の「プロジェクト・24」という章を Google ブックスで「立ち読み」した…(^^;)。

✏️プロジェクト・24(Google ブックス)


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