《鍵盤音楽史:現代》 26人目の作曲家は、アレムダール・カラマーノフ(Alemdar Karamanov, 露, 1934-2007)。
《クライバーン国際コンクールで取り上げられた現代ピアノ曲》を調べたときに追加した 4人の作曲家の一人。一応「ロシアの作曲家」としたが、クリミアの生まれで、ウクライナ出身と書いてある記事もある(紛争地域の国の言い方は難しい…)。
アレムダール・カラマーノフは、クリミヤ半島のシンフェローポリ生まれ。1954年にモスクワ音楽院に入学し、ボガトゥイリョーフとナタンソンに師事。その後、フレンニコフとカバレフスキーに学んだ。在学中に交響曲を10曲作っている。
キリスト教を主題に音楽を書き続けたことでソ連当局と対立し、カラマーノフの音楽は上演禁止となっていた。西側で初めて知られたのは 1991年にテープがイギリスに持ち込まれた時で、いまだにその作品の全貌は明らかになっていないようだ。
親友のシュニトケは「彼は素晴らしく才能に恵まれていて、ソ連国内のどこかで生活しているが、実際には無名だ。彼は単なる才人ではなく、天才だ。」と、ショスタコーヴィチは「現代で最も独創的でユニークな作曲家のひとり」と語った。
1992年に、クリミア自治共和国の国歌を作曲している。
カラマーノフの作品の特徴の一つは、キリスト教を主題にした作品が多いこと。そして、傾向としては新ロマン主義と言われているようだ。たしかに「現代音楽」的な色合いは少なく、聴きやすい曲が多い。
幅広いジャンルで多くの作品を残しているが、特筆すべきは 24(25とも言われる)の交響曲であろう。キリスト教を題材にしたものも多く、「我らを愛して下さる主へ」 (18番)、「死せる人々は幸いである」 (20番)、「あるがままであれ」 (22番)、「私はイエス」(23番)などの標題が付けられている。
3曲の弦楽四重奏曲、4曲のピアノソナタ、3曲のピアノ協奏曲も残している。他に、オペラ、バレエ音楽、映画音楽、ミサ曲、合唱曲なども…。
ピアノ関連の作品は下記の通り。出典は✏️Alemdar Karamanov(公式サイト)など。
ピアノソロ曲
- Five Preludes for piano (1953)
- Piano Sonata No. 1 (1953)
- Eight Pieces (Variations) for piano (1954)
- “The Seasons of the Year (Vremena goda)”, twelve pieces for piano (1954)
- Piano Sonata No. 2 (1954-1955)
※Partly lost, except Finale movement “Rondeau” - “Five Children’s Pieces” for piano (1956)
- “Ave Maria” for piano (1950s)
- “Two Dances” for piano (1950s)
※Published in 1959 - Ballade (1950s ?)
※“Ballade” for voice and piano (1950s) のピアノソロ編曲? - Piano Sonata No. 3 (1960)
- Piano Sonata No. 4 (1961)
- Variations for piano (1961)
- Six Etudes for piano 1960-1962
- “Prologue, Thoughts and Epilogue (Prolog, Mysl’ i Epilog)” for piano (1962)
- “Music (Muzyka)” No. 1 for piano (1962)
- “Music (Muzyka)” No. 2 for piano (1962)
- “Window into Music (Okno v muzyku)”, sixteen children’s pieces for piano (1963)
- Three Preludes for piano (1963)
- Five Preludes and Nineteen Concert Fugues for piano (1964)
※New version in 1984: Fifteen Concert Fugues
ピアノ協奏曲
- Piano Concerto No. 1 (1958)
- Piano Concerto No. 2 (1961)
- Piano Concerto No. 3 “Ave Maria” (1968)
ピアノを含む器楽曲
- Four Pieces for clarinet and piano (1954)
- Variations for oboe and piano (1954)
- Five Pieces for two oboes and piano (1954)
- “Romances” for string quartet and piano (1950s)
- “Music (Muzyka)” for cello and piano (1962)
- “Music (Muzyka)”for violin and piano (1963)
- Scherzo for clarinet and piano (1963)
- Four Pieces for trombone and piano (1964)
YouTube にある音源をいろいろ聴いてみた範囲では、「変奏曲」(クライバーンコンクールで弾かれた)と「バラード」が良かった。
「バラード」は公式サイトの作品リストには載っていない。「声楽とピアノのためのバラード」という作品があるので、その編曲版なのかも知れない?
"Music No. 2 for piano"、"Prologue, Thought and Epilogue"、"Concert Fugue no.11" の 3曲はやや「現代音楽」風な印象。
その他聴いた小曲。どこかで聴いたようなメロディーも聴こえてくる…(^^;)?
ピアノ協奏曲としては、第3番「アヴェマリア」が有名なようだ。部分的にはいい感じのところもあるのだが、全体としてはどうだろう…? あと、第1番の音源もあった。
全体的な印象としては、わりといい感じがした。ただ、もっといろんな(一流の)ピアニストがとり上げて、解釈・演奏が深まらないと真価は分からないような気もする。
楽譜の入手も難しそうだ…。
ちなみに、クライバーンでの Denis Linnik の「変奏曲」は下記(2曲目)。
主な参考記事は下記。
✏️アレムダール・カラマーノフ(Wikipedia)
✏️Alemdar Karamanov(Wikipedia /英語)
✏️Alemdar Karamanov(公式サイト:文末に作品リスト)
✏️The piano work by Alemdar Karamanov: A beginning of his way(South-Russian Musical Anthology)
✏️Alemdar Karamanov ディスコグラフィ(Tower Records)
→録音されているのは、交響曲 No.3、No.20、No.22、No.23、ピアノ協奏曲第3番「アヴェマリア」、ピアノ曲「変奏曲」
✏️Alemdar Karamanov(Musicalist:作品リスト)
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