2017年10月27日金曜日

「スタンウェイ」強さの本質は「アイコン的組織」にあった?

こんな記事(↓)を見つけて、面白そうだなと思って読んだら、実はビジネス的な話。「スタインウェイ」という会社組織の素晴らしさと、そのDNAによって160年にわたって世界一のグランドピアノを生み出し続けた、という話。


これは「読書」コーナーで、『アイコン的組織論』という本(↓)を紹介している連載記事の第2回目。現在、「マッキンゼー」「スタインウェイ」「ゴアテックス」ときている。




この本は副題が「超一流のコンサルタントたちが説く『能力の好循環』」となっていて、完全に経営書である。

…のだが、そもそものきっかけが「ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」(の経営?)で、楽団のディレクターも著書の一人になっているせいか、他にもベルリン・フィル、ウィーン・フィルという一流の管弦楽団もとり上げられている。


シェルやP&Gなどの企業や、オールブラックスという世界最強のラグビーチームや、世界一予約のとれないレストランとして有名?な「エル・ブリ」など、ぜんぶで14団体のうち3つがオーケストラ、1つが「スタインウェイ」なので、音楽に興味のある人にも面白いのかもしれない…。

「東洋経済」の連載でオーケストラも取り上げてくれると嬉しいのだが…(^^) ♪


本のタイトルの「アイコン」というのは、その分野で長年トップを占め続けて半ばその分野の代名詞のようになっているもののこと。「グランドピアノといえばスタインウェイ」みたいな感じで…。

そういう組織はひときわ優れていて、分野に関わらず共通点がある。それが、卓越した「人材」、素晴らしい働きをする「チーム」…というのだから、結論を聞いてしまえば「そりゃそうだろう!」となる。…のだが、そういう組織がどうやってできたかがミソなのだろう…たぶん。


スタインウェイ(社)の話に戻ると…。

1853年、創業時の目標は「世界最高のピアノを受け入れられやすい価格帯で製造すること」だった。「価格帯」が受け入れられやすいかどうかはさておき、最初から「世界最高」を目指したことが第一の成功要因だろう。

その成果は1867年のパリ万博(大政奉還の年なんだ…)での大成功につながる。人々がこぞってスタインウェイのピアノに殺到する様子が戯画になっている(↓)。




もちろん技術的にも優れていて、初めて「交差弦方式」を採用したのもスタインウェイだ。その結果「ベース弦が響鳴板のより中央に位置するようになり、音振動が増幅された」。

そういえば、バレンボイムが自分用に平行弦のピアノを作った(↓)ときに、そのメリットとして「すべての音が均一になる、異なる弦どうしの干渉・影響が少なくなる」と説明されていたが、音の振動(響き)という点ではどうなったのだろう?



その後「内リムと外リムを一工程で製造する方式」などが開発され、さらに「響く」ピアノになっていく。ちなみに、現在スタインウェイ社が保有している特許は125件に上る。

マーケティング(自社製品の価値を高める)という点でも、自社で2,500人以上収容できるコンサートホールを作ったりしている。響くピアノが活躍できる場所を作ったわけだ。


長い歴史の中でいくつかの試練も経験している。

「1880年の試練」では、中流家庭のアップライトピアノや自動演奏ピアノへの需要が高まったのだが、頑なに最高品質のグランドピアノにこだわった。結果的にはいい選択だった。

最近は市場の状況も変わったのか、技術的進歩によるものなのか、"SPIRIO" という自動演奏ピアノ(日本での販売は2018年春以降)を作ったりしているが…。


CBS に買収された「1972年の試練」は深刻だったようだ。CBS はビジネス(お金儲け)的観点から「コスト削減」「流通網拡大」に取り組むが、製品および販売店の品質の劣化を招き、ピアノを返品するピアニストも続出したらしい。

ただ、幸いなことに職人の中の「最高品質を目指すDNA」は残っていて、CBS の手を離れたあと、1995年頃からは元の評判を取り戻したようだ。

その後も、何度か経営者が変わっていくのだが、現在のオーナーは2013年に買収した「ポールソン&カンパニー」(↓)。その後変わってなければ…(^^;)。



…自分でスタインウェイを買うことはないだろうが、素晴らしいグランドピアノを作り続ける「アイコン的組織」は何としても残って欲しいと思う…(^^)♪



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