2カ月近く前のニュースではあるが、バレンボイムのファンとしてはぜひ書いておきたい記事(↓)を最近見つけた。"BARENBOIM"ブランドのピアノができた、という話である。
✏️バレンボイム・メーン・スタインウェイ(PTNA)
このピアノの一番の特長は、すべての弦が同じ高さでまっすぐに平行に張られていること。
通常のグランドピアノの弦は、ご存知のように斜めに交差するように張られている。これは「交差弦」と呼ばれ、スタインウェイによって開発されたものだ。1859年に、グランドピアノでの鉄骨・交差弦の特許が成立している。
ピアノ自体の強度を上げるとともに、弦の張力をあげて、より豊かな音を出すために鉄のフレームや「交差弦」が開発され、現代のピアノに大きく近づいたわけである。
それまでのピアノの弦は、実は平行に張られていたのだ。ベートーヴェンは平行弦のピアノで作曲・演奏していたことになる。
平行弦には、すべての音が均一になる、異なる弦どうしの干渉・影響が少なくなる、などの特長があると言われている。バレンボイムのピアノでは、さらにすべての弦が独立している(下図右)。通常、弦は折り返されて往復しながら張られている(下図左)。
そのほか、響板やアクションなど、かなりの部品が新しく開発されたとのこと。また、スタインウェイ社からも最新・最高の部品が提供されたようだ。
このような造りで、どういう音になったかというと…。
記者発表で弾いている動画で聴いてもよく分からないが、バレンボイム自身は "I’ve fallen in love with it" と絶賛している。
「音がより透明に・クリアになり、楽器自体による音の混じり(blend)が少なくなって、その分ピアニストが音のブレンドをコントロールできるようになる。私は気に入っている。」
このピアノのできた経緯は次の通り。
2011年に、バレンボイムがリストのオリジナルのピアノを弾いたとき、平行弦のピアノの音の違いに驚き、インスパイアされた。それをもとに新しいピアノのコンセプトをスタインウェイ社に相談したところ、クリス・マーネ氏(Chris Maene社の社長)を紹介された。
2013年の初めに、クリス・マーネと意気投合し新ピアノの開発がスタートした。Chris Maene 社は、古楽器のレプリカなども手掛けるベルギーのピアノ・メーカーである。
その後、スタインウェイ社の支援も受けながら、18カ月と4,000人月の工数をかけて2台の "BARENBOIM" ピアノが出来上がった。バレンボイムのこだわりが詰め込まれたピアノである。
このピアノを使用したリサイタルは5月にロンドンのフェスティバル・ホールなどで開催されたようである。
この記事を読んでとても共感したのは、歴史的な古楽器のレプリカ製作に長く関わってきたクリス・マーネ氏の次の言葉。
「19世紀ピアノの、個性的な素晴らしい音色の多様性が失われてきたことに、いつも驚いていた。」
そして、バレンボイムの次の言葉にも…。
「このピアノは、音の一つの選択肢である。すべてのものには長所と欠点がある。」
なんとなく、画一化されすぎた現代ピアノが窮屈な姿に見えてきた。ピアノはこれ以上進化しないのだろうか、とぼんやりと思っていたので、この ピアノが一つのきっかけになってくれると嬉しいと思う。
ちなみに、今のところ販売の予定はなさそうだが、仮に売るとすれば、スタインウェイのコンサート・グランド Steinway D( €150,000 )の2〜3倍になるのでは?とあった。。
135¥/€ として、Steinway D が 2,025万円、とすると5,000万円くらいか? まぁ、ヴァイオリンよりは安いとも言えるかも…。
参考記事:
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