まぁ、原曲がヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲やアレッサンドロ・マルチェッロのオーボエ協奏曲なので「協奏曲」と言っているのかな?と漠然と思ってはいたのだが…。
で、軽く調べてみた…。
簡単に言ってしまうと、20代のバッハが、当時音楽の中心であったイタリアの「協奏曲」様式を学ぶために、イタリアの作曲家による「協奏曲」をチェンバロのソロ曲に編曲した…ということになる。それが、BWV972〜BWV987 の16曲(1708-17)。
「ららら♪クラシック」の記事(↓)によると、「バッハが仕えていた音楽好きのエルンスト公子が、ヴィヴァルディやコレッリなどイタリアの作曲家による協奏曲の楽譜をバッハに渡し、『チェンバロ1台で弾ける協奏曲を作って!』と依頼した」ことになっている。
✏️チェンバロで独奏する「イタリア協奏曲」
ただ、ここでいう「協奏曲」はバロック時代のもので、チャイコフスキーのピアノ協奏曲のような「独奏楽器+オーケストラ」という形とは少し異なっている。
バロック時代の協奏曲には、「独奏楽器+合奏」(ソロ・コンチェルト)、「独奏楽器群+合奏」(コンチェルト・グロッソ)という2つの形があり、「合奏」はほとんどは「弦楽合奏」であった(当時、管弦楽は未発達)。
独奏楽器群は「コンチェルティーノ」とも呼ばれ、三重奏(トリオ)が多いようである。合奏群は「リピエーノ」とも呼ばれる。
楽器の構成以外に、楽曲の構成も古典派以降の「協奏曲」とは異なる。
基本的には「急 - 緩 - 急」の3楽章構成で、同じテーマが少しずつ形を変えながら何度も現れる「リトルネッロ形式」と呼ばれる形式になっている。独奏楽器(群)と合奏が対話をするように展開していく。
また、反復部分を「リトルネッロ」、展開部分を「エピソード」と呼ぶようだ。
このバロック時代の「協奏曲」、つまり、独奏楽器(群)と合奏との対話をチェンバロの2段鍵盤の「異なる音色」を利用して表現しようとしたのが、バッハの「鍵盤楽器のための協奏曲」という訳だ。
ある意味、1つの楽器で2つの楽器(群)の対話(協奏)を表現している曲だと言っていいのかもしれない。
…で、イタリア協奏曲の楽譜には "f" "p" が書いてあるらしいのだが、これは「強く」「弱く」というより、「Tutti(合奏)」「Solo(独奏)」を意味するそうなので、ピアノで弾くときはそういうつもりで(チェンバロ風に音色を変えて?)弾くといいそうだ。
ちなみに、私が弾いてみた BWV973 の楽譜には "Tutti" "Solo" と書いてある(↓)。
以上…を書くのに参考にしたネット上の記事は下記。
✏️1人で演奏するのに「協奏曲」を名乗る バッハの作曲技法、炸裂!
✏️バッハ :イタリア協奏曲 BWV 971(PTNAピアノ曲事典)
✏️コンチェルト・グロッソ(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
おまけ。関連するトリビア知識。
バロック時代の協奏曲の代表曲にヴィヴァルディの有名な「四季」がある。
この「協奏曲」様式を用いてバッハが作ったオリジナル作品が「イタリア協奏曲」であるが、単純な「独奏楽器(群)と合奏」という形ではなく、また「リトルネッロ」と「エピソード」も明確に分かれておらず、もっと高度化されたものとなっているそうだ。
コンチェルト・グロッソの「発展の極み」にあるのが、バッハの「ブランデンブルク協奏曲」である。
参考:ベーレンライター社「 同時代の作曲家の作品に基づく協奏曲 第1巻」。
バッハ, J. S. : 同時代の作曲家の作品に基づく協奏曲 第1巻: BWV 972-977/ベーレンライター社/ピアノ・ソロ
収録曲は下記。
- BWV972 nach RV230/協奏曲ニ長調 BWV972(ヴィヴァルディ RV230)
- BWV973 nach RV299/協奏曲ト長調 BWV973(ヴィヴァルディ RV299)
- BWV974 nach Alessandro Marcello/協奏曲ニ短調 BWV974(アレッサンドロ・マルチェッロ)
- BWV975 nach RV316/協奏曲ト短調 BWV975(ヴィヴァルディ RV316)
- BWV976 nach RV265/協奏曲ハ長調 BWV976(ヴィヴァルディ RV265)
- BWV977 nach unbekannten/協奏曲ハ長調 BWV977(作曲者不明)
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