「現代」とはどの年代なのだろう? あるいはどの作曲家だろう? ということ。「現代ピアノ曲のお気に入りを10曲見つける」ためには「現代ピアノ曲」の定義が必要だ。
ベルクがピアノソナタを書いたのは 1907〜08年。ドビュッシーが「映像 第2集」を書いたのは 1907年。私の中では、ベルクとドビュッシーは別ジャンル?なのだが…(^^;)。
ピアノ曲の時代区分で「4期」というのがある。「バロック・古典・ロマン・近現代」という大雑把な分類だ。近代と現代は分かれていない。
「Wikipedia:近代音楽」 などを見ると、「20世紀初頭から第二次世界大戦の終わりまで」を「近代音楽」とする考え方が示されている。1901年〜1945年あたりになる。すると、「現代音楽」は 1946年〜現在までに作られた音楽を指すことになる。
「作曲年代」を指標にするとそういう考え方になるのだろうが、何か釈然としない。
私の素直な感じ方で言うと、ドビュッシーは「近代」、ベルクは「現代」なのだが、その感じ方はどこから来るのだろう?
作曲年代ではなく「音楽様式」のようなもの、あるいは音楽の作り方やアプローチ方法、そして「音楽語法」や「音楽技法」の違いによるものなのか?
何となく乱暴に言ってしまうと…。調性音楽の延長線上にあって、聴いていて「音楽性」を感じるものとそうでないもの…(^^;)?
ネットの情報を頼ってみよう。例えば、ココ(↓)にある「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説」。
✏️コトバンク「現代音楽」
まず、「この語は『古典派音楽』『ロマン派音楽』のように音楽史上の様式概念を含まないため,明確な定義はしがたい」とした上で、広義には「20世紀音楽」、狭義には「第2次世界大戦以後に生れた種々の新しい様式、いわゆる『前衛音楽』」と書いてある。
さらに、第1次・第2次世界大戦を区切りとして3つに分けた説明(↓)が続き、最後は「さらに多くの傾向を含め、複雑な様相を呈している」と締めくくっている。
- 1901〜1918:後期ロマン主義:マーラー、R.シュトラウス、ドビュッシーなど
- 1919〜1945:新古典、新即物、12音、民族的新古典、新神秘などの主義
- 1946〜現在:12音音楽の一般化、ミュジック・セリエル、ミュジック・コンクレート、電子音楽、偶然性の音楽、コンピュータ音楽など
個人的には、「1946〜現在」を二つに分ける区分が欲しいと思う。この説明にあるのはいわゆる「現代音楽」(現代の音楽という意味ではなく固有名詞的:実験音楽?前衛音楽?)だと思われるが、それが終焉した時期が必要な気がする。
その時期は「実験音楽」的な取り組みがほとんど不毛であることが明らかになって、それぞれの作曲家がいろんな試みを開始した時期になると思われる。
まぁ、後世「混迷の時代」みたいなまとめ方をされるのかも知れないが…(^^;)?
ネットを検索していて面白い記事を見つけた(↓)。作曲家の吉松隆さんのブログ。
✏️20世紀における「現代音楽でない音楽」の系譜
長文であるし、読み物として面白いので、興味ある方はぜひ元の記事を読んで戴ければと思う。以下、気になった部分を私なりにまとめてみる。
クラシック音楽の歴史の中には、その時代時代に「新しいがゆえに難解で理解しにくい音楽」が確かに存在していた。しかし、「新しく・難解な音楽も、数十年の時を経てみれば受け入れられる」というのが常識であった。
ところが、20世紀に登場した「現代(無調)音楽」は、結果的には「50年聴いても理解不可能な」音楽と受け止められた。
そして、「通常の音楽の愛好家たち…音楽にメロディとリズムとハーモニーを期待する聴き手たち」は「現代音楽」から離反していき、新作への期待はなくなっていった。
これはとても残念なことだ。なぜなら、どんな芸術分野でも、もっとも注目される作品・作家・現象は「一番新しいもの」であるというのが普通なのだから。
それでも、20世紀初頭〜1920年代には「まだ音楽的な」作品が生まれている。シベリウス、マーラー、ラフマニノフ、エルガー、R.シュトラウス、プッチーニ、ドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキー、ガーシュウィン、ホルスト、レスピーギ等から。
「無調でない『現代音楽』の系譜」というものも存在していたわけで、それは、1894年に発表されたドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」から始まると言っていいだろう。
そして運命の1913年。ストラヴィンスキーのバレエ「春の祭典」がパリで初演されて大スキャンダルとなり、「現代音楽の時代」が幕を開ける。誰もが「新しい音楽」だと感じ、同時に「従来の音楽を破壊するもの」と受け取った。それは画期的な出来事だった。
そして、1930年代以降の「不毛の荒野」を迎える。いわゆる「クラシックの名曲」に数えられる作品はパッタリと姿を消してしまう。
かろうじてクラシカルな大衆性を備えた作品を拾い出してみると…。
- 1934年:ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」
- 1936年:プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」
- 1937年:ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
- 1939年:ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」
1920年代から70年代までの「現代音楽」全盛の時代にあって、孤軍奮闘というべき創作力を発揮し、「最後の良心的な砦」として作品を残し続けたショスタコーヴィチは、1975年に 69歳で死去する。
この「ショスタコーヴィチ以後」を境にして、1980年代から20世紀の音楽は新たな道を歩み始めることになる。
…と、いろいろ分かってきて面白かったのだが、問題が解決した訳ではない。「現代ピアノ曲のお気に入りを10曲見つける」ためには、どのあたりの(時代の?作曲家の?)曲を探索すればいいのか?…まだはっきりとはしない。
ただ「1946〜現在」を二つに分ける時期としては、「ショスタコーヴィチ以後」の1980年あたりを一つの区切りと考えられそうだ。
ピアノ曲として定番化していない曲、あるいは定番化しているのだが私があまり知らない曲、あるいは 1980年以降の作品などから探してみるとするか…(^^;)?
あまり私の好みではない「現代音楽」の中にも後世に残るような名曲があるはずだ。音楽の様式ではなく、作品を個別に見れば素晴らしいピアノ曲があるはずだ。
とりあえずは自分の感性を信じて、自分が「現代ピアノ曲」と思う曲を自由に選ぶことにしようと思う。
「お気に入り」の判断基準はあくまで私の好みになるが、言葉にすると「音楽的であること」「美しいこと」「本物であること」「瑞々しさ・新鮮さを感じること」「ピアノの音の美しい響きを引き出していること」などになるだろうか…。
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