映画は、いきなり監督自身の出産の場面から始まりびっくりさせられるが、傍にたたずむ「おばあちゃん」がアルゲリッチという、なんとも印象深いシーンになっている。「ピアニスト」アルゲリッチから「一人の人間(母・祖母)」アルゲリッチへと、観ている者の視点を転回させるに十分な導入である。
そこから、監督が子どものころに撮ったホームビデオの映像、デビューしたころのピアニスト・アルゲリッチの姿、シャルル・デュトワと並んでのインタビュー、現在の普段着の(パジャマ姿などの)アルゲリッチ、ステファニーの父親など、多くのシーンが展開される。
ふだん我々が決してふれることができない、まさに芸術家アルゲリッチの娘という「普通」ではない家族の一員としてのステファニー監督の視点でのドキュメンタリーである。
アルゲリッチの母親、アルゲリッチ自身、三人の娘、それぞれの生き様のようなものが感じられる映画になっている。
音楽家・ピアニストとしてのアルゲリッチの姿を見たい、音楽を追求し音楽を語る姿を見たい人には、少しもの足りないかもしれない。
私自身も、そのあたりはもう少し知りたいと思いながら観ていた。しかし、観おわったときに感じたのは、より深く彼女の演奏を理解できそうな感覚であった。あらためて、その演奏を聴いて見たいという気持ちであった。
歳をとって、髪が白くなり顔のしわがふえても、アルゲリッチはすごいピアニストであることに変わりはない。そしてそこに、すごい人(人間)でもあるという認識が追加された。
ときおり見せる、最近の笑顔はとてもいい表情をしている。機会があれば、ぜひ生の演奏を聴きに行きたいと思う。
ちなみに、ステファニーさんの相手役をつとめたのが小澤幹雄さん。小澤征爾の弟さんである。初めて実物をみたのだが、お兄さんそっくりなのに驚いた。アルゲリッチが小澤征爾と共演したときの思い出話なども面白かった。
トーク内容などは、映画.com の記事(↓)に詳しく紹介されている。
おまけ。DVD にもなっている。
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