シューベルトの死後 11年経った1839年にシューマンにより発見された。「レリーク」(Reliquie:遺作)の愛称は 1861年の出版時点で付けられたもの。
未完成作品ではあるが、後期ソナタを思わせる転調の幅を持つ第1楽章と抒情的な第2楽章は、充実した存在感を持っており、演奏機会も多い。
また、比較的多くの作曲家やピアニストによる補筆完成版が存在する。
色んなピアニストの演奏を聴いていると、この作品の解釈や弾き方にはかなりの多様性があるようで、どれがお気に入りの演奏なのか、自分でも分からなくなってしまった…(^^;)。
元々好きな曲なので、それなりにイメージを持っていたつもりなのだが、新しい演奏を聴くたびにこれもいいなぁ♪ と思ったり…。懐の深い作品なのかも?
とくに第1楽章については、曲調としても穏やかなものと厳しさを感じるもの、音質としても柔らかいものから硬いものまで、それぞれに良さを感じるのだ。
細かいことを言うと、前打音の弾き方や強弱・アクセントの付け方、アーティキュレーション、伴奏音型のリズム感、途中に出てくる息の長いディミヌエンドの弾き方などなど…気になる点は多いのだが、どのピアニストの弾き方が自分の気持ちに一番しっくりくるのか、今は自信を持って決めることはできない…(^^;)。
…という訳で、あえて好みの順番に並べるとこうなるかな?…というやや曖昧な基準?でいくつかの演奏を並べてみたいと思う。
マルティーノ・ティリモとバート・ベルマンは自ら補筆完成させた第3・4楽章を弾いている。他のピアニストはシューベルトが完成させた第2楽章までというのが多い。
リヒテルは第4楽章まで弾いているが、第3・4楽章はシューベルトが書いた範囲で未完のままで弾いているようだ。
ポール・ルイス(Paul Lewis、英、1972 - )のシューベルトはやはり好み ♪
♪ Schubert: Piano Sonatas D.840, 850 & 894/ Paul Lewis:アルバム
(トラックNo. 13〜14)
💿シューベルト:ピアノ・ソナタ集 (Schubert : Piano Sonatas D. 840 850 & 894 / Paul Lewis)
(トラックNo. 13〜14)
舘野泉(1936 - )さんのシューベルトもいい ♪
(トラックNo. 35〜36)
セヴェリン・フォン・エッカードシュタイン(Severin von Eckardstein、独、1978 - )という名前は初めて聞いた。下記のプロフィールによると、2000年リーズ国際コンクール第3位、2003年エリザベート王妃国際コンクール優勝などの経歴の持ち主のようだ。
✏️セヴェリン・フォン・エッカードシュタイン(concert imagine)
この演奏(↓)はやや硬質な印象もあるが、くっきりした音で詩情豊かな演奏を聴かせてくれるところは好印象。
シャイ・ウォスネル(Shai Wosner、イスラエル、1976 - )という名前、聞いたことがあるなぁ?…と思ったら、以前(2019年3月)「ハンガリーのメロディー D817」を練習したときに気に入った演奏の一つがこのピアニストの演奏だった。
バート・ベルマン(Bart Berman、オランダ-イスラエル、1938 - )は、自身の補筆完成版 4楽章を弾いている。
やや速めのメリハリのある演奏がちょっと気に入ったのだが、他のピアニストの演奏をいくつか聴いたあとでもう一度聴いてみるとそうでもなかった。この感覚は何だろう?
それから、シューベルトの残した未完の楽譜のまま第4楽章まで弾いているので、スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter、ウクライナ、1915 - 1997)の音源を載せておく。
…が、テンポがあまりにも遅過ぎて、個人的には好みではない。巨匠リヒテルのことなので、考えがあってのテンポ選択(解釈)なのだと思うが…。
(トラックNo. 9〜12)
参考
✏️シューベルト :ピアノ・ソナタ 第15番「レリーク」 ハ長調 D 840(PTNAピアノ曲事典)
✏️ピアノソナタ第15番 (シューベルト)(Wikipedia)
✏️SCHUBERT online
【関連記事】
《Schubert ピアノソナタ第14番 D 784:3年ぶりのピアノソナタは後期ソナタに繋がる力作 ♪》
0 件のコメント:
コメントを投稿